姉弟デート
咲里と2人で福岡へ行ってきた数日後、璃華と弥咲はデートに出かけて、両親が実家へ帰る(といっても冬未と隼瀬の実家はここから歩いていける距離にある)のにはついていかず、帰ってきて同じような理由で家にいる芳美と2人で過ごす千陽。
「ちーちゃん、本当にママ達ついてかんでよかったと?」
「うん、どうせどっちのじいじばあばもしょっちゅう会うし」
「まあすぐそこだけんな。えみちゃんとの予定は?」
「咲里も今は矢部の鈴さんの実家行っとるて」
「なら今から矢部まで行く?」
「いやいや流石にいきなり彼女のお母さんの実家まで押しかけるとかやばすぎたい」
「はは、まあそら冗談ばってんね。せっかく2人きりだし、お姉ちゃんとデートしてくれませんか千陽姫」
「弟ばナンパね?まあ僕もよしねえと2人きりて中々にゃあけん、一緒にお出かけでくんなら嬉しかばってん」
「お、ならOKて事?」
「うん、今だけは僕よしねえの彼氏になってやるけん」
そう言って小悪魔のように微笑んで、芳美に抱きついてキスする千陽。
「まだ小学生てから罪な男ねうちの弟は・・・」
「僕達男ん子はみんな、いでん的にそぎゃんだってパパと充希兄ちゃんが言いよったよ」
「ほぉ・・・(お父さんも充希兄ちゃんも子供に何言いよっとや)」
「で、今日はどこさん連れてってくれると芳美さん?」
「弟にそぎゃん呼ばるっとなんか恥ずかゃあね・・・んー、なら小川のダイヤモンドシティどん行こか」
「うん!」
というわけで小川町にある大型商業施設へ車で来た姉弟。芳美になんでも欲しいもの買ってやるよと言われたが、実家を出て一人暮らしをしているお姉ちゃんに気を使って、大好きなキャラクターショップのテナントに行っても安い鉛筆とかそういうものばかりを取る千陽。彼のこういうところは完全にパパの隼瀬の遺伝子である。
「ちーちゃん本当にぬいぐるみさんとかいらんかったと?」
「うん、だってお誕生日にもひまねえとにーにからもろたし、そぎゃんしょっちゅうなんでんもらうわけいかんたい」
「ちーちゃん男ん子なんだけん別にもっと甘えたっちゃよかてから・・・それにお姉ちゃんもまだ学生で一人暮らし言うたっちゃお金なかわけじゃにゃあけん何も気にせんちゃよかけん」
実際、学費や家賃や食費などは自分でバイトして賄っているものの、元来親バカ的な両親と、自分達に子供がいないのもあって昔から色々とよくしてくれる父の姉夫婦からも毎月勝手に多くの仕送りが送られてきて、返そうとしても頑なに拒否されるのでお金はかなり余っている芳美。で、せっかくだからその貰ったお金は同じ親族の可愛いくて仕方ない弟に使ってあげたいと思うのだ。
「ばってんあんまなんでん買うてもろたら、よしねえがパパに怒られん?そらかわいそうだし」
「ちーちゃんはお姉ちゃんの事も気遣えてよか子ね。ばってん大丈夫、ちーちゃんいつもあんまわがまま言わんでパパも心配しとらすけんがらね、こぎゃん時くらいお姉ちゃんの色々してやるくらいなんも言わっさんけん安心せれ」
「そっか・・・ほんならよしねえ、次はお洋服見てもええ?」
「うん、子供が遠慮せんちゃよか」
というわけでモール内のアパレルブランド店で千陽の服を見る。
「なんかこぎゃんたっか服はじめてばってん、どうかなよしねえ?」
「似合っとるよ、だっごもぞか。じゃあそれ買う?」
「うん・・・ばってんほんとにええと?」
「よかてよかて。男ん子はオシャレにお金惜しむとしゃがでけんてお姉ちゃんの今まで付き合った彼氏みんな言いよったし」
「そっかぁ」
して、何着か試着して結局自分も姉バカな芳美は全部買ってあげて、喜んでいる様子の弟に彼女も満足気だ。
「よしねえ、ほんとありがとう」
「んねんね、ちーちゃんが喜んでくれたらお姉ちゃんそんだけでよかったい」
そして、千陽の服を見ているうちにもう夕方頃となっており、彼も芳美もお腹空いたとの事で1階にあるテナントの焼肉屋に来た姉弟。葛西家は全員大食いで、千陽もまだ成長期とはいえ、何も好き嫌いもなくモリモリ食べて、こんな姿も可愛いなと思う芳美。
「ちーちゃんはいっぱい食べれてすぎゃーね」
「よしねえと璃華ねえには負けるばってんね。てかよしねえ、僕自分で焼くけん食べんね」
「なん、可愛いちーちゃんに火傷とかさせたくにゃあけんお姉ちゃんが焼かんと」
「もう、僕男ん子だけんてよしねえも璃華ねえもママもみんなかほごなんだけん」
「弟ば持つお姉ちゃんな皆そぎゃんたい。それにお姉ちゃんもちゃんと食べよるけん心配せんちゃよかばん」
「そぎゃんもんかなあ・・・」
実際、この世界の男の子は過保護に扱われる傾向にはあり、弟を持つお姉ちゃんのみならずお兄ちゃんを持つ妹も、物心つく前から女として男子である兄を守るよう教育されるのがこの2030年代に至るまで伝統となっており、恵梨もその1人だ。して、焼肉をたらふく食べてお腹いっぱいになって、帰りの車の中でもイチャイチャしながら家路につく姉弟であった。
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