解き放たれた2人



 前回、千陽の違和感に気付き、話しにくい内容ではあったが、夜に母親に話があると言って、ありのままを伝えた璃華。そして、それを聞いた母、冬未は璃華に今まで伝えてこなかった陽葵の願いの力(うちんと第二章「真夏の夢」前後編及びうちんと続第二章「陽葵の力」参照)のことを話す。



「まあばってんほんなこて千陽が璃華ば心配して思い詰めただけかんしれんし、分からんばってんね」



 実際、冬未の言う通り陽葵の力は今回の件には関係なかったが、璃華としたらこの前に弥咲から聞いた話もあって疑心暗鬼な様子で、冬未は大丈夫、お母さん達に任せろと安心させる。



「隼瀬が、お父さんが自分の力の事忘れとったっちゃ、お母さんが介入して使えるけん。1993年3月に出会って39年と4ヶ月、ずっと恋愛しよる絆は陽葵と陽斗ちゃんのそれに絶対負けんし」



「はは、娘に対してノロケ?」



「そうたい。あんたと弥咲ちゃんもどっちか男の子だったら悩まんでよかったてね。まあ今はお母さん達の時代とちごて、女の子同士でん結婚できるばってん」



「悩まんでとかなんいいよっとや、別に私も弥咲もそぎゃんとじゃにゃあし」



「自分達で気付いとらんだけだろ?(それとも押し殺しとるか)まあお母さん達もあんた達が結婚した時の悩みは苗字は葛西と三森どっちにするんだろかてくらいだし」



「そこまで考えて・・・ばってん弥咲も私と本気でそぎゃんこつなんか・・・・・・」



 考えてないこともないんだろうなと、幼なじみの勘でなんとなく分かる璃華。そして翌日、璃華と弥咲は交通費の節約の為といつも健軍で電車を降りてから歩いて帰っているのだが、今回は少し遠回りして人通りの少ない道を選んで、弥咲に切り込む璃華。



「弥咲、もし私がお前と付き合いたい、結婚したいて言うたらどうする?」



「・・・多分、私はたいぎゃな喜ぶ。そっか、璃華もだったつかって」



「弥咲・・・ならちーちゃんの事好きかもしれんてのは私に引かれんためのカムフラージュ?まあ元々にーににベッタリで年下に興味無さそうなお前がそぎゃん言うのおかしいとは思ったばってん」



「そぎゃんたい・・・小学校からずっと、私が友達としてじゃない、家族としてじゃない、恋愛的な意味で好きな人は葛西璃華、お前たい」



 そう言って、自分の反応を見るのが怖いのか弥咲が顔を逸らすのをじっと見つめながらしばし逡巡して、自らの心と対話しふっと息を吐いて自身の弥咲に対する本当の、今までさんざん隠し続けてきたその思いを大声でぶちまける璃華。



「三森弥咲ー!私もお前が好きやー!今までずっとおかしいんかと思って隠しよったばってん、そぎゃん顔して言われたら我慢できんどが!女同士とかどぎゃんでんよか、愛し合うとに性別は関係にゃあ!」



「ば、ばか璃華!分かったけんそぎゃんふとか声で叫ぶな!」



「今まで私も我慢しとったけんな・・・私達ば応援してくれる言うてくれた男子達にもわざわざ否定して・・・お互い辛かったな今まで」



「ほんなこったい・・・お父さんにもちーちゃんの事好きかもしれんて嘘ついてしもたし」



「はは、私なんか漫画のキャラの少年の名前出して好きな子って嘘つきよったばい・・・ばってんどっちん親も私達のそぎゃん嘘な分かっとったごたばってん」



「うちん親達ってなんかすぎゃーよな・・・はぁ、ならこれからは私達もちーちゃんとえみちゃんのごつ恋人同士ね、璃華」



「うん、弥咲」



 お互い思いの丈を告白して、もう何も心配はないと言わんばかりに、堂々と手を繋ぎながら帰る2人。



「弥咲って男ん子っぽくてかわいかよな」



「まあ兄ちゃんに似とるてよく言わるっし」



「そら兄妹だけんな。充希兄ちゃんも美人さんだし。てか私もまだにーにて呼びよっとにいつから兄ちゃん呼びになった?」



「兄ちゃん子だったけんあんた達と一緒なんが嫌で・・・」



「はは、かわいすぎだろお前」



「お前もこまか時はねーねねーね言うてひま姉から離れんで可愛かったばいた」



「過去形?」



「だって今はかわいか言うより女らしなってむしゃんよかて感じだし。てかたい璃華、私達男ん子とやった事もにゃあてから、する時どうする?」



「あー、よし姉が大学の男子から貰ったて言いよった本見せてもろたばってんマニアックすぎて参考ならんかったしなあ」



「なんやそれ、てかよし姉の大学での交友関係どぎゃんなっとっとや」



「帰ってくる時以外いっちょん電話とかもしてこんけん謎よな・・・まあ一回なんとなくしてみよ」



 というわけでも帰ってすぐ、庭の小屋の中でなんとなく想像で色々してみる思春期の2人。この世界の女子高校生というのは基本的に性欲旺盛で、特にこの2人は今までずっと1人で互いを想像しながらしていたりしたので、目の前に想像ではない本人がいて、もう気持ちを押し殺さなくていいという今の状況では歯止めが効かなくなる。そして、お互いにさんざん貪りあった後、肩で息をしながら2人とも満足そうに笑いキスをしてそのまま今夜は小屋の中で眠るのであった。








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