ヤオイカン仮面ごっこ
2032年 7月下旬
夏休みに入り、恵梨に邪魔されながらもタブレットでやるような勉強系の宿題はあらかた片付けた千陽。ちなみにこの早めにやる性格は両親から受け継いだもので、お姉ちゃん達、陽葵も芳美も璃華も小学校からずっとそうであった。で、今日は彼は元々咲里とデート(といっても前回のようなデートではなく公園に行く予定だっただけだが)の予定だったものの、彼女が急に家族で出かける予定ができたとの事で暇になり、久しぶりにゆっくり璃華と恵梨の相手をする。今は恵梨のやりたいと言い出したヤオイカン仮面ごっこの最中だ。恵梨はまあもちろんヤオイカン仮面役、璃華はその敵の怪人ダゴエスカン役、となるとテンプレ的に千陽はその怪人の人質役だ。
「ダゴエスカン!ちあきひめばはなせ!」
「エースエスエス、そぎゃん言われて素直に離してやんなら怪人なんかやっとらんわ」
なんか怪人の笑い方もノリノリな璃華(現在16歳、高校2年生)に人質の千陽が思わず吹き出しそうになるが、恵梨は誰に似たのかごっこ遊びがリアル思考で笑ったら怒られるので必死でこらえる。ちなみにヤオイカン仮面(になりきる恵梨)もダゴエスカン(になりきる璃華)の方も方言で会話しているがこれ、元ネタ通りである。しかも普通に全国放送なので、地元熊本と言葉が比較的近い福岡、佐賀、長崎以外の地域では字幕放送となっている。と、そんなヤオイカン仮面の設定をわざわざ書いたところで場面を戻そう。ヤオイカン仮面は人質を盾にされてしばらく睨み合いが続いたが、一瞬の隙をついて千陽がダゴエスカンの手から逃げ出し、その刹那にヤオイカン仮面の必殺コラドーシパンチが炸裂。ダゴエスカンは倒され、無事に世界の平和は守られたのであった。
「あー楽しかった。璃華ねえもちゃんと怪人やってくれてありがとう」
「まあ可愛い妹の頼みだけん」
璃華は歳の離れた弟と妹が可愛くて仕方なく、この2人の言う事はなんでも聞いてあげたくなるのだ。で、恵梨が遊び疲れてお昼寝に入り、彼女は千陽と2人きりで話す。
「ちーちゃん、えみちゃんと一緒おって楽しい?」
「うん、咲里はいつも僕ん事守ってくれるし」
「ならよかった。そんでセクハラになるかんしれんばってんお姉ちゃんとして気になるけん聞くばってん、その・・・」
「触りっこしかしとらんよ。咲里もまだよっと分かっとらんごたっし」
「そっか・・・ごめんね、男ん子にこぎゃんこつ聞いて・・・・・・」
「お姉ちゃんだけん別にええよ。てか思ったけど、璃華ねえが彼氏作らんとは僕とか恵梨がおるけん?」
「んねんね、どっちかちゅうと弥咲・・・いや、お姉ちゃん自身のせい」
「あ、あーたしかに璃華ねえとみさねえいつも一緒だんね。勘違いされてもおかしくにゃあね」
「ちーちゃんもそぎゃん思うど?だけん学校の男ん子達にもお姉ちゃん達「そっち」だって思われてしもて、まあ弥咲が「誤解されんごついつもベタベタするのやめよっか」て言うてきて、お姉ちゃんも別に親友なんだけん普通たいて言うてそんままにしとっともあれなんかもしれんばってん」
「そっか・・・璃華ねえもみさねえも男ん子には興味あっとにね、僕前にお姉ちゃんのお部屋でそういう検索履歴見つけたし」
「ちーちゃんあんたお姉ちゃんの検索履歴なんか見て・・・」
「だってゲームしようと思って付けたら開きっぱなしのタブで見えたっだもん。パパには言うとらんけん大丈夫よ」
「ごめん・・・それ見て親に言わんとか優しかね千陽は」
「まあ僕も色々分かっとるし。お姉ちゃんが色々溜まっとんならちょっとお手伝いしてもええよ?」
「なっ、あんた意味分かって・・・本気や?」
無言で頷いて服を脱ぎかける千陽に一瞬、理性が飛びそうになるが、彼女もいる実の弟にそんな事させちゃいかんと自制し、止める璃華。
「なん、僕はよかて言いよって」
「いや、お姉ちゃんの心配してくれとっとは分かるばってん、流石に大事なちーちゃんばお姉ちゃん自身で汚したくはにゃあ・・・」
「璃華ねえはマジメね」
「マジメて、普通のお姉ちゃんなら当たり前ん事たい!弥咲だっちゃあんたの事思て身引いたっだけん!」
「?みさねえがなんて?」
「あ、んね、なんでんにゃあ・・・とにかく、ちーちゃんは今えみちゃんの彼氏なんだけん、たとえお姉ちゃん相手でんそぎゃんこつ軽く口にすっとでけん(ダメ)たい」
「はーい」
「分かったならよか」
しかしいくら自分が心配とはいえ、千陽はこんな事言う子だったかな?と疑問に思う璃華は夜、冬未にその事を相談する。
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