野球盤て結構楽しいんだぞ
2032年 7月初頭
今日は学校から帰って荷物を置いてそのまま咲里の家へ遊びに来た千陽。
「あらちーちゃんいらっしゃい」
千陽を満面の笑みで出迎えるこの人、咲里の父、望と母の鈴も咲里に彼氏ができたと紹介されて以来、娘が連れてきたかなり可愛い千陽の事を気に入ってくれて、彼の親や姉達のようにちーちゃんと呼んで気にかけてよくしてくれている。
「急にお邪魔する事になってすみません。咲里がどうしてもて言うけん」
「んねんね、ちーちゃんかわいかし、パパにも世話んなっとるけん大歓迎よ。それにちーちゃんのごたかわいか子が咲里の彼氏になってくれて親としたらたいぎゃな嬉しかし」
「お父さん、その辺にして」
千陽が来ると聞くと自分より喜んで彼に構おうとする父を制止して、千陽の手を引っ張ってそそくさと部屋に連れていく咲里。
「あらあら、咲里もいつの間にか女らしなって・・・」
咲里の部屋
望がジュースとお菓子を持ってきてすぐに出ていき、イチャイチャする咲里と千陽。
「咲里のお父さんいつも僕にようしてくれて申し訳にゃあね」
「まあ千陽な私ら4年生の男子ん中でもダントツ美人さんだし、そぎゃん子と私が付き合っとるて言うて舞い上がっとっとだろ」
「なんか恥ずかしいな・・・てか咲里も普通に周りの女子達に比べたらかっこよかたい」
「真顔でそぎゃん言われるとこっちが恥ずかしいわ・・・てか今日も暑か中体育あったし、私汗くさくにゃあ?」
「いっちょんくさくにゃあよ。それに僕咲里ん匂い好きだし」
「っ・・・なんで千陽はいつも顔ひとつ変えんでそぎゃんこつ言うてくるかな・・・・・・」
「咲里はすぐ顔赤くなってかわいいもん」
「ばっ、私は女ぞ。かわいいとか言われたっちゃうれしくにゃあし・・・」
「だってかわいかっだけんしょんなかたん。それにうちのパパもママの事かわいいかわいいていつも言いよるよ?」
「いでんってやつか・・・ばってん千陽のがひゃくおくまん倍かわいかし」
「えへへ、咲里大好き」
「私も大好き、千陽」
と、仕事から帰ってきた鈴が千陽に挨拶に来る。
「鈴さんおかえりなさい、お邪魔してます」
「ゆっくりしてってね、ちーちゃん。それにいくらママよりわっかけんて名前じゃなくておばちゃんでよかて、あ、なんならお義母さんて呼んでくれてもよかつばい?」
「はぁ・・・?」
「ちょ、お母さんそら気が早すぎたい!はよ出てけ!」
「はいはい。ほんとちーちゃん何も気使わんでくつろいでね」
「はい、ありがとうございます」
鈴が行ってからまた小学生らしいイチャイチャをしながら遊ぶ2人。ちなみにこの時代になるとゴーグル無しで仮想現実に入ってゲームを遊んだりできるのだが、この子達はそういうゲームというより、レトロ的なものが好きで、千陽の両親が昔やってたような野球盤で対決する。
「あー、消える魔球が打たれた!」
「だってこれ古いけん消えるとこ壊れとるけん意味にゃあもん。これで僕3点目で勝ち越しね」
「くそー、ばってんまだ1点差だけんな。次は村上投手のスライダーで・・・よし、三振3アウト!」
「あぁ、当てるの上手い晴美姉ちゃんが三振しちゃった」
ちなみに咲里が盤面にイメージしている村上投手というのは村上千咲投手、千陽の晴美姉ちゃんと呼ぶのは前田晴美選手、どちらも陽葵と県立第四高校の同級生で2025、2026年にその四高が2年連続甲子園春夏連覇の快挙を成した時のメンバーで、子供達の憧れの若手プロ野球選手である。その2026年秋のドラフトでは彼女達四高メンバーも多数指名され、この年の高校生指名選手はそのほとんどがプロでも活躍しているわけだが、世代の中でも特にルーキーから投手と野手のガチ二刀流で活躍している体力オバケな陽葵(特にこの人は野手の時はショートで出ており、お産の時以外全然休まず普通に投打規定乗せてくるのでガチでバケモンだとファンから言われている)と千咲2人の人気は半端ないものがあって、より人気な陽葵から葛西世代と呼ばれている。で、そんな話をしているうちに盤の試合はいい感じに進み、最終回の裏、千陽側の攻撃、打席に立つ選手のイメージはやはり大好きなかっこいいお姉ちゃんの陽葵だ。
「ひまねえ打て〜!」
と言ってバットを振らせると陽葵(イメージ)の打ったボールはホームランゾーンに一直線に向かっていく。千陽の勝ちだ。
「あー負けたー!やっぱ陽葵お姉さんスターや」
「へへん、いつも僕が試合見に行って打て〜って言ったらホームラン打ってくれるもん」
「すぎゃーねそれ・・・今度私も千陽と試合見に行きたいなあ」
せっかくなら2人で行きたいけど、親は自分達子供だけで福岡とか行くのは許してくれんかなと考える咲里である。
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