三森家父娘回
前回、咲里に何かを見透かされているような気がして、1人で物思いに耽っていた弥咲。と、そんな娘の考え事を見透かすように父の充希が彼女の部屋に入ってくる。
「また考え事?どうせちーちゃんの事だろ」
「お父さんはやっぱお見通しか・・・そうたい。私はほんとのお姉ちゃんじゃなかばってん、あん子の事ずっと弟と思ってきたし、弟が好きな子と幸せんなるなら嬉しいて思いも勿論ある。ばってん・・・・・・」
「そっか、やっぱ「お姉ちゃん」じゃない、あんたの女としての部分も出てきとったか・・・それで陽葵ちゃんもこん前帰ってきた時あぎゃんこつ・・・・・・」
「え?ひま姉まさか・・・」
「うん、ちーちゃんに彼女おるとは分かっとってそっでもあんたの婿にやりたいて」
「私なただちーちゃんの事好きになってしもたかもしれんて言うただけてひま姉なそぎゃん・・・・・・」
「まああん子も陽斗もあんた達下の子皆がかわいしてしょんなかって感じだしね。そっで璃華ちゃんにはあんたがちーちゃんが成人するまで待つって言いよるて話したてたい」
「は?それ嘘ついとるたいひま姉・・・で、璃華な私にそん事言わんばってん、ちーちゃんには?」
「伝えんだったて。璃華ちゃんとしてもあくまで今はちーちゃんとえみちゃんば応援したいけんて」
「まあ普通の姉ならそうよね・・・よし姉もこん前話したらそう言いよったし、あの目は本気でそう思っとるごた感じだったばってん、ひま姉は・・・いや、多分兄ちゃんも同じ事・・・・・・」
元々自分も歳が離れた兄夫婦が大好きでその思惑を察するのは容易く、だからこそ自分も芳美も璃華も、千陽に一番ベッタリな恵梨ですら彼と咲里を応援しようと決めたのに、なんで陽葵はそんな余計な事を親に言うんだ、姉として千陽の気持ちを本当に考えているのかと不安になる弥咲。
「そうよね、だけんパパもママも冗談のごつ流したばってんね、陽斗と陽葵ちゃんが本気であん子達の邪魔すんならちゃんと止めるごつ隼瀬達とも芳美ちゃんとも話しよるけん」
「そんならちっと安心か・・・私もちーちゃん好きばってん奪い取るとかやだし、あん子が自分で私に振り向いてくれんと」
「あんたも今どきの高校生にしては純ね。ばってんそんなら一旦ちーちゃんの事はお姉ちゃんとして応援するわけね」
「うん、えみちゃんもよか子はよか子だし。ありがとうお父さん、話聞いてくれて」
「んねんね、親なんだけん当たり前たい。まあその問題は解決したとして、まちっとパパと話そうよ。高校入ってからあんたいっちょん構ってくれんかったし今日はお話したいと思って部屋来たっだけん」
「そら男ん子ならまだしも、高校生にもなって父親とベタベタする娘なんかおかしかろ」
「えー、たまにゃよかたい。ね、ね?」
娘の自分から見ても相当美人な父に甘えるようにそう言われ、優しい弥咲は断れずに話し相手になってあげる。
「なんだかんだ弥咲も璃華ちゃんも幼稚園から高校までずっと一緒ね、誕生日も近いしやっぱ双子んごた感覚?」
「それに近いかな、親友でもあるけど家族でもあるし。まあ私達仲良すぎてお互い今まで周りの男子達に誤解されたりしよるけど」
「あーそれで今まで2人とも彼氏とかの気配ないわけね」
「そう・・・璃華は上2人がお姉ちゃんで育っとるけんあんまばってん、私兄ちゃんしかおらんかったけん距離感が普通の女同士じゃないってよう言わるっとよね」
「ばってん璃華ちゃんも何言われたっちゃ嫌がらんとだろ?」
「うん、親友なら別に普通の事だけん何言われたっちゃ気にすんなって」
「そっか、やっぱ璃華ちゃんパパ似ね」
「確かに、冬未姉ちゃんと隼瀬兄ちゃんなら隼瀬兄ちゃんの方がなんか色々強いしね、冬未姉ちゃんはどっちかちゅうと心配性だし、5人の中なら璃華とひま姉とちーちゃんの3人は隼瀬兄ちゃん似でよし姉と恵梨は冬未姉ちゃん似よね」
「ね、あんたも葛西家のきょうだい達よう見とんね」
「ずっと一緒なんだけんそら嫌でん分かるたい。ほんで私と璃華もお父さん達んごつずっとこれから先も一緒におるんかな」
「多分なんだかんだこれから10年20年経っても近くにはおりそうね。変な意味じゃなしに弥咲も普通に璃華ちゃんずっと好きだろ?」
「うん、璃華も友達ん中で私が一番好きて言うてくるし」
「そんはっきり言うところなんかまんま隼瀬ね・・・まあほんと、2人が友達じゃなくなる事なんか絶対ないどけんね」
その絶対という言葉に、確かに璃華とは一生縁が切れたりする予感はないなと何の疑問も持たない弥咲。そしてこの後もしばらく親子の話は絶え間なく続いていくのであった。
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