翌日、私は美鈴を迎えに高校まで来ていた。このあとすぐに本堂夫妻の元へ行くためでもあるが、それ以上に用心のためだった。〈ハーメルンの笛吹き男〉のターゲットが幼い子どもばかりとはいえ、記者として活動している以上は危険がないとは言い切れない。突然殺人犯に襲われる可能性だってあるのだ。

 私も今の会社に入社する前、フリーの記者として活動していたとき、危ない体験をしたことは少なくない。取材対象と揉めて殴られたことも、歓楽街で十数人のヤクザに囲まれたことも、取材していた容疑者に刺されそうになったこともあった。それで命を落としてしまった同業者は過去現在に何人でもいる。いくら用心してもしすぎということもないだろう。

 だが美鈴はなかなか現れなかった。下校のチャイムが鳴り、十五分が経っても姿は見えない。見過ごしの可能性も考えた。この高校でも集団下校は実施されており、校門は学生服で溢れかえっていた。私が美鈴を見つけられなくても不思議ではない。

 だが美鈴が私を見つけられないことがあるだろうか。学生服のなかにあって、私は結構浮いている。目つきの悪い中年女が立っていれば無理もないことだが、今の私はちょっとした見世物のようだ。怪訝そうに見つめてくる者、度胸試しに話しかけてくる者、中にはカメラを向けてくる者もいた。それはさすがに断ったが。

 美鈴はそんな私に近寄りがたく、あえなく素通りしたのだろうか。彼女に限って考えにくいことだった。迎えに来ることは事前に言ってあったし、もし見世物になりたくなくて近づけなかったのなら連絡してくるはずだ。

 なにか変だ。

 私は学生服の集団の一つに話しかけ、美鈴を知らないか聞いた。あいにく学年が違うらしく芳しい反応は得られなかったが、リボンの色がどのように分かれているのかは聞けた。一年生は赤、二年生は緑、三年生は青らしい。美鈴は緑だ。

 私は赤いリボンの彼女たちに礼を言って、今度は二年生を狙って声をかけた。だがこちらも空振りに終わった。どの子も引きつったような笑顔で、「知らないです」の一点張り。それは取材をしているときよく目にする顔だった。本当は言いたくてたまらないのに、理由があって言えないときの顔。数人に試してみたが、みな同じ顔で首を振った。

 私は最後の一人に金をちらつかせた。漫画本が数冊買える程度の額だが、高校生には悪くない申し出だろう。それでもまだ迷っているようだったので、付け加えて言った。

「情報をよそに漏らすようなことしません。金銭授受のこともお互いが黙っていれば問題ないでしょう」

 ショートカットの少女はようやく頷き、「場所を変えたい」と申し出た。美鈴がその間に出てきてしまうことを危惧したが、少女には急ぎで探していることを伝えてある。その心配がないということだろう。

 にわかに緊張した。

 少女は学校の裏手の路地に私を導きながら、

「本当に、誰にも言わないでくださいね」

 と念を押した。

「もしバレたら今度はあたしがいじめられることになるので」

「いじめ?」

 聞き捨てならない言葉だった。少女は肩をすくめた。

「もうすぐですよ」

 言葉通り、少女は路地を何度か曲がると突然立ち止まった。人の声が聞こえる。私が口を開くと、少女は人差し指を唇に当て、目だけで前方を示した。声はそちらからするようだ。

「あそこです」

 少女がしゃがんだ。飛び込んできた光景に私は目を疑った。

 そこは周囲を背の高い建物に囲まれた囲繞地だった。昼間なのに薄暗く、空気が湿っぽい。周囲から断絶された異界のような空間。昔取材で行ったドヤ街の、麻薬売買グループの集会場を思い出した。

 だがそこにいたのは売人ではなく、制服を着た四人の少女だった。地面に転がされた一人を他の三人が見下ろしている。三人みな、派手な化粧で制服を着崩していた。胸元あたりまでシャツをはだけ、スカートは腰に巻いたブレザーと同じくらい短い。うずくまった一人はたびたび罵られ、蹴飛ばされ、首を絞められ、それでも抵抗することなく、好き放題されていた。いや、抵抗できないのだ。よく見れば緑色のリボンで後ろ手に縛られている。

 それが美鈴であると気づいたとき、咄嗟に悲鳴を飲み込んだ。ここまで案内してくれた少女は迷惑そうな顔で私を見上げた。

「本当にやめてくださいね。あたしまで巻き込まれるのはごめんです」

 私は小刻みに頷き、ささやき声で聞いた。

「美鈴ちゃんは、どうしてあんなことを」

「反感を買ったんですよ」

 少女は淡々としていた。

「あの人たちはもともと別の子をいじめていました。確か桐江きりえちゃんって言ったかな。親が犯罪者とかいろんな噂がありますけど詳しくは知りません。気づいたときにはいじめが始まってました。あの子はそれを助けちゃったんです。放っておけばいいのに、おかげであのざまですよ」

「先生はどうしてるの」

「記者のくせにそんなものに期待してるんですか」

 少女は大人びた嘲笑で口端を歪めた。

「教師だって面倒ごとは避けたいですから。匿名でいじめを告発した子がいたらしいですけど、あの三人が事実無根だと言って終わりですよ。被害者にすべてを押しつけ世は事もなし。この世の中どこでも見られる光景でしょう」

 何も言えなかった。その通りだ。誰もが足下の弱者には目もくれず、その上にふんぞり返って苦労を語る。私たちはそういう世界で生きている。

「そろそろいいですか? あたし帰りたいんですけど」

 少女が手を差し出してくる。私ははじめ提示していた金額よりも数枚だけ多く渡してやった。少女は決まり悪そうに美鈴の方に視線を流したが、その手はしっかりと金を握りしめていた。

 少女がいなくなるのを待ってから、私はデジタルカメラを取り出した。小型で持ち運びに便利だからいつも鞄に入れていた。記者の七つ道具の一つだ。頭の中で美鈴に詫び、美鈴と美鈴をいじめる三人の顔がよく見えるようレンズを向けた。

 しかし私はすぐにカメラを下ろすはめになった。彼女たちは美鈴を立たせると、あろうことか服を脱がし始めたのだ。抵抗もむなしくブレザーは脱がされ、シャツは剥ぎ取られ、スカートは足首まで一気に下ろされた。

 限界だ。私は飛び出した。

「やめなさい!」

 ほとんど絶叫に近かった。三人は一瞬目を瞠ったが、すぐ薄笑いに戻ると、

「おばさん、覗きなんて趣味悪いね」

「なに怖い顔してるの? ちょっとふざけあってただけでしょ。しらけるわー」

 口々に言っているのを無視し、私は自分のジャケットを美鈴にかけてやった。縛られた手も自由にしてやる。同じ緑色のリボンがその首元でも揺れている。

「もういいよ。いこ」

 リーダー格の少女が言って、スマートフォンをこちらに向けた。ピロンと小馬鹿にするような音が鳴った。

「ちょっと!」

「なに、うるさいな」

 少女は舌打ちすると私からリボンを取り返し、

「美鈴じゃあね。また明日」

 とスマートフォンを持った手を振ってにこやかに去って行った。追いかけるべきか迷ったが、美鈴を放置しておけない。結局、彼女たちの後ろ姿をカメラに収めることしかできなかった。

 こんなものがなんの役に立つだろう。

「烏丸さん……」

 美鈴は暗い目を上げた。私は捨てられたシャツを拾って渡した。あの三人はよほど慣れているのか、ボタンがちぎれているようなことはなく、よく見れば美鈴にも傷一つなかった。手首にすら縛られた痕は残っていない。

「学校の裏に車が停めてあるから行きましょう。警察にはそのあとで……」

「警察は、いらないです」

 制服を着終えた美鈴は小さく、だが断固として首を振った。

「それより早く取材に……」

「何言ってるの。あんな写真に怯えてちゃダメだよ。あれをネタに今度はもっとエスカレートするに決まってる。ここでちゃんとした措置を取らないと……」

 美鈴はまた首を振った。

「そうじゃないんです」

「そうじゃないって……」

「とにかくこの件に関しては放っておいてください。これは私の問題です」

 強い語気で、ジャケットを胸に突き返される。昨日の約束が頭によぎった。この子の正しさを私が決めるという約束。それを行使すれば言うことを聞いてくれるだろうか。きっと聞いてくれる。

 だが私はそうしなかった。そうして警察に相談したとして、どんな解決になるというのだろう。さっきも言われたことだ。「被害者にすべてを押しつけ世は事もなし。この世はそうして回っている」。美鈴が被害者を脱するということは、別の誰かを被害者の立場へ追い込むということだ。美鈴はそれをよしとしないだろう。彼女もそうして被害者になったのだから。

 ふと美鈴の庇った相手のことが気になって聞いた。

「桐江ちゃんっていう子とはどういう関係なの。友達?」

 美鈴は目を見開いた。いつもの強い瞳はふやけて揺らいでいた。

「どこでそれを」

「少しね。ごめん、情報提供者の身分は明かせないんだ」

「そうですか……」

 美鈴は視線を落とし、案外あっさりと明かした。

「桐江は昨日烏丸さんに送ってもらった家の子です。中学校の同級生で昔はよく家に遊びに行ったりしたんですが、今は少し疎遠になっていて」

「親が犯罪者とも聞いたけど」

「そこまで知ってるんですか」

 美鈴は苦笑した。

「その通りです。桐江の母親は夫を殺して逮捕されました。それ以外にもいくつかの事件もあって、今は親戚に引き取られています。……でもどれも私のせいなんでしょうね」

 眉根に皺が寄るのが分かった。なぜその結論に至るのか分からない。美鈴は私の表情を見ると諦めたように溜息をついて、

「桐江の母親を告発したのは私なんです。『この世には公にしない方がいいこともある』というのも彼女の言葉でしたが、全くその通りでしたね。そのせいで桐江は犯罪者の娘になってしまった。あおいさんだって、桐江のためを思ってのことだったのに……」

 蒼というのが桐江の母親の名だろう。美鈴を苦しめる元凶を作った人間だ。知らず手に力がこもっていた。

「それで美鈴ちゃんは桐江ちゃんを……」

「中学ではいじめられていなかったんです。桐江の人柄の良さをみんな知っていたから。でも高校に入って変わりました。初めは柄の悪い何人かに目をつけられて、桐江がそれを拒否したらだんだんと空気が変わってしまって。すぐに学校中からいじめられるようになりました。教師も犯罪者の娘なんて助けてくれず、それで……」

 美鈴は涙の波をやり過ごすように大きく息を吸い込んだ。

「元はといえば私が招いたことです。私がそもそも事件を解決したりしなければ、桐江が犯罪者の娘になることはなかった。だから私が桐江の代わりになったんです。首を絞められようと、服を脱がされようと。これが、償いだから」

 美鈴は黙り込んでしまった。言いたいことはいくらでもあった。そんな重荷を高校生が背負うべきじゃない。事件を解決して悪いはずがない。誰も美鈴を責めていない。桐江もそれを望んでいない。償いなんて、必要ない。

 だがどれも求められている言葉ではないと知っていた。私が言葉に迷っていると、美鈴は不器用な笑顔を見せた。

「ごめんなさい、こんな話。困らせるつもりはなかったんです」

 身を翻し、路地へと足を向け、いたって平坦な声で続ける。

「取材に行きましょう。いよいよ本命の本堂静ですね。近隣住民から家族仲を聞いて、好印象の意見だけ抽出できれば擁護記事にも役立ちます」

 歩みを進めながら振り返ることもなかった。私は後を追いながら、その背中に昔死んだ友人を追想した。優秀な人だった。気配り上手で、世渡り上手。誰よりも善良で、そのくせ皮肉屋で、彼女を嫌っている人間なんて一人もいなかった。

 それなのに死んだ。

 彼女の発した言葉に私はずっと取り憑かれている。美鈴が蒼の言葉に取り憑かれているように、ずっと。


 本堂夫妻の住まいはタワーマンションだった。国際ホテルを彷彿とさせるエントランスには常にコンシェルジュが控えており、外には数人の警備員の姿も見えた。セキュリティには一段と気を遣っているらしい。エントランスに入るために家主だけでなく、コンシェルジュの許可まで必要だったのは初めてだった。

 内装もこの上なく豪勢で、星を砕いたようなシャンデリア、足が沈むほど上質な絨毯、壁にかけられたバスキアのオリジナル、エントランスに置かれたソファやテーブルにも意匠が凝らされているのが分かる。細部まで隙なく磨かれたエントランスは舞台セットのようだった。

「すごいですね……」

 美鈴は呆然と呟き、物珍しげに視線を動かした。緊張しているのか制服のリボンをしきりにいじっている。美鈴は制服のままだ。私もドレスコードを気にして慣れないジャケットを羽織ってきた。

「美鈴ちゃん。あまりキョロキョロしたら失礼よ」

 小声で注意すると、美鈴はハッとして俯いた。

「すみません」

「でも驚くのも無理ないわ。私もすこし緊張してるから」

 本当だった。今日ここで記事の可否が決まるといっても過言ではないのだ。もし擁護するに足る情報が得られなければ、私はきっと擁護記事を書かないだろう。美鈴に正しさを預けてもらった以上、間違ったことはできない。

 憲久には他の住民に取材をしてから行くため少し遅れることを伝えてあった。私は背後に控えているコンシェルジュの石橋いしばしに声をかけた。

「お部屋へ向かう前にほかの住人の方からお話を伺いたのですが、許していただけませんでしょうか。もちろん許可なく撮影や録音をおこなわないことはお約束します」

 五十代くらいの男性で、監視するような目つきから平行に揃えられたつま先まで一切の乱れはない。エントランスを舞台セットとするなら、彼は役者だった。

「わたくしに許可を差し上げる権限はございません。ですが、おやめになった方がよいと存じます」

 ゆるやかに首を振る動作すら洗練されている。

「ここにお住まいの方々は何より平穏を望んでおります。故に、今回の事件をあまり快く思っておりません。同じマンションの住人が事件の渦中にあるというだけで業腹ですのに、その上記者の方が尋ねていけばなんと思われますやら」

 柔らかい言葉と声音にはむしろ敵意が感じられた。記者を好ましく思っていないのか、あるいは本堂夫妻か、その両方か。少なくともあまり歓迎されていないらしい。

 私は気にせず食い下がった。記者が忌避されるのは今さらのことだ。

「では石橋さんはいかがですか」

「わたくしでございますか」

 石橋は素直に驚いたようだ。

「フロント係なんかの意見が何の役に立ちますやら」

「ご謙遜を。コンシェルジュとして勤めて何年になりますか。結構長いでしょう。接客のプロとして、本堂静さんのお人柄についてお聞かせ願えませんか。できれば事件当日のことも」

 石橋は迷っているようだった。本当は事件について話したいことがあるのだろう。私は半歩だけ近づいた。

「お望みであればお名前は伏せさせていただきます。お話の中で不都合な点がございましたらその箇所だけ掲載しないことも可能です。それに心ばかりですが謝礼も……。いかがでしょうか」

 石橋はさらに悩み、周囲に誰もいないのを確認してから、

「かしこまりました。わたくしの答えられる範囲でしたらお答えしましょう」

「ありがとうございます。録音の許可はいただけますか」

「それはお控えください。それと名前だけでなく、コンシェルジュであることも伏せていただくようお願いします」

 私は了承しペンを構えた。私の横で美鈴もメモ帳を用意している。

「それでは本堂静さんの人柄からお伺いしてもよろしいですか」

「一言で表すなら明るい方でしょうか。このマンションには気難しい方も多いですが、静様はいつでも気さくに話しかけてくださいました。いずみ様は少々引っ込み思案なところもありましたが、おしとやかで、どんな女性になられるかと日々の成長を楽しみにしておりましたのに。今回の事件は本当に残念でなりません」

 私は聞いたままを書き取った。石橋の視線や手の位置も追記しておく。声の調子を書き取れないのがネックだ。含みのあるような言い方はしていないが、彼に思うところがないとも言い切れない。

「憲久さんはいかがですか。いくつかの雑誌では家族間の確執なども報じられていますが、あれは事実なのでしょうか」

 石橋はやや伏し目になり、

「なかったとは申しません」

 鉛のような声だった。

「憲久様が奥様以外の何人かの女性と関係があったのは事実でございます。しかしそれはもう数年前の話で、今は誰とも関係が切れていると存じますが」

「本人が言っていたのですか」

「ええ、ちょうどいずみ様がお生まれになった年でしたのでよく覚えております。憲久様は今までの不貞を悔い改め、これからは妻を大切にすると面映ゆそうに仰っていました。これは方々で言っていらしたそうですので、わたくし以外からもお話は伺えると思います」

「いずみちゃんと静さんに血のつながりはないんですよね。どういった経緯でいずみちゃんが静さんの娘になったかはご存じですか」

「それはもちろん。いずみ様の実母が出産と同時に亡くなったため、実父の憲久様が静様にすべて打ち明け、育てられるようになったのでした」

 石橋は自分の言葉に納得するように頷いてから、

「これは週刊誌が報じていましたし、静様も認めていることです。賛否はともかく皆さん知っていらっしゃるでしょう。もちろん今の憲久様が清廉であるということも」

「体裁のためということもあり得るのではないですか」

 これは美鈴が聞いた。石橋は高校生相手にも態度を崩さず、

「それは邪推ではありませんか。不特定多数の方々に宣言してしまっているのですから。もし体裁のためなら、浮気を完全に否定するのは悪手でしょう」

「そうかもしれません。では憲久さんと静さんの間で確執はなかったのでしょうか。連れ子であるいずみちゃんと生活するわけですし」

「さあ、そういったことはわたくしには分かりかねます。ただ、憲久様とお出かけになる静様を何度か見かけたことがございますが、特段変わったこともありませんでした」

「そうですか」

 美鈴は頷いた。私は質問を変えた。

「事件当日のことをお聞かせ願えますか。何かお気づきになったことなど、どんなことでも構わないのですが」

 石橋はそこで初めて言葉を詰まらせた。私は身を乗り出す。

「やはり何かあるんですね」

「ええ、あるにはあるのですが……」

「石橋さん。先ほども申しましたが、むりやり記事にするつもりはございません。掲載されたくないようでしたら遠慮なく仰ってください。私たちも聞かなかったことにして、忘れるようにいたします」

 しかし石橋は首を振った。

「いえ、むしろこれは明らかになるべきことだと思っています。ですがどうお伝えすれば誤解なくお伝えできるか……」

「ありのままを」

 私が頷きかけると、石橋は小さく息を吐き出して言った。

「わたくし実は、事件当日にいずみ様の姿は見ていないのです」

 額には洗濯板のような皺が刻まれている。私はしばらく石橋の言葉のどこに問題があるのか考えねばならなかった。

「それなのに、なぜかいずみちゃんの遺体は外で発見されたということですね」

 とっくに分かっていたらしい美鈴が言った。遅れて私も理解する。

 石橋は頷き、

「これは一体どういうことなのでしょう。警察の方々にもこのことはお伝えしましたが、あまり重要視されていないようでして。わたくしの見落としということなのでしょうが、どうにも納得がいかないのです」

 釈然としない顔つきでそう言った。ちらと美鈴をうかがう。彼女はメモも取らず、じっと何かを考え込んでいた。よく研がれた刀のような視線は宙空を切っている。

 その後、いくつか質問をしたが、目新しい情報は得られなかった。

 石橋は腕時計にさりげなく目を落とし、

「申し訳ありません。そろそろ時間もございますので、失礼させていただきます」

 と頭を下げた。

「少しでもお力になれていればよいのですが……」

「こちらこそお忙しいなかお時間を割いていただき、ありがとうございました」

 私は美鈴と共に低頭した。

「お礼につきましては後日献本と共にお持ちします。ご迷惑でなければどうぞお受け取りください。また何かお気づきのことがございましたら、先ほどお渡しした名刺の番号までご連絡いただければ幸いです」

「畏まりました。では本堂様のお部屋へお通しいたしますので、エレベーターの前でお待ちください」

 石橋はそう言って、フロントへ戻っていた。

 そう待たないうちにエレベーターはドアを開けた。床にも絨毯が敷かれ、壁の一面は鏡張りになっている。階数ボタンはすでに「27」の数字を光らせていた。

「さっきの話、どう思う?」

 十階を通り過ぎたところで美鈴に訊いた。

「どう、とは」

「さっき何か考え込んでいたでしょう? 面白い発見でもあったのかと思って」

「大したことではないです」

「そう」

 私は口をつぐんで階数表示板に目を戻した。美鈴はなおも思案顔を崩さなかった。

 エレベーターが緩やかに急停止する。障子と同じしめやかさでドアを開き、私たちが降りるのを見計らったように一階へ戻っていった。次の瞬間の呼吸の深ささえ見透かされているような薄気味悪さを感じた。

 二十七階に部屋は一つだけだった。「本堂」と表札がかかっている。いずみが書いたものだろう、その周囲は多様な色で塗られていた。しかしいずみ亡き今、その踊るような色彩にはわびしさが影のように染みついていた。

 インターフォンを鳴らすとすぐにドアが開き、スーツの男が出てきた。本堂憲久だ。テレビで見るよりだいぶ老けて見えた。まだ五十代ということだが、還暦も過ぎ、古希にさしかかっているのではないかと疑いたくなるほど、指先にまで疲れと諦観がささくれていた。

 私は玄関先で名刺を差し出した。

「改めまして、月刊明鏡の烏丸と申します。こちらは助手の玉野。本日はよろしくお願い致します」

 取材の旨は編集長から伝わっているはずだし、エントランスに入るためにも一度話している。元大物政治家の相手とはいえ気が楽だった。

「君らが松添くんのとこの。思ったより早かったな……」

 石橋のみで近隣への取材が終わってしまったことを話そうとすると、

「……そして思った以上に若い。君たちいくつだね。そちらのお嬢さんなんて、玉野さんと言ったか、まだ高校生だろう」

 ふん、と鼻を鳴らした。美鈴は恐縮した様子で肩を縮めた。私は半端に口を開けたまま、半端に睨むことしかできなかった。

「まあいい。上がりなさい。中で妻も待っている」

 家の中は思ったより整然としていた。物が散らかっていることはなく、空気も澄んでいる。ただ掃除は行き届いておらず、部屋のあちこちに埃が吹きだまっていた。

 静が待っていたリビングルームは、むなしさが空気を圧していた。生活の端にぶら下がった家具にはいずみの面影が傷となって、あるいはキャラクターのシールとなって生々しく残されている。中心に置かれたガラスのテーブルには、その洒脱さを窒息させるように薄埃が積もっている。暖色照明がついているのに、それが一層部屋を寒々しく見せていた。

 いずみが死んで以来、夫婦がどのような暮らしを送っていたのかは想像に難くない。沈黙に看取られた幸福は、二人の頭上で喪服のように揺れていた。

「静。こちら松添くんのとこの記者で、烏丸さんと玉野さんだ。取材に来てくれたんだよ。前にも言っていただろう?」

 憲久の紹介で私たちは頭を下げた。しかし静は淀んで乾ききった瞳を少し動かしただけで、こちらに興味を示すことはなかった。髪は白くうねり、腕は枯れ枝のように細くなっていた。筋張った手には変色した吐きだこが目立ち、全身の皮膚を湿疹が覆っていた。

 返事がないことに苛立った憲久は、ねじれた唇から溜息交じりの声を落とした。

「静、せっかく呼んだのになんだその態度は。挨拶くらいしないか」

 だが静はやはり何も言わなかった。憲久は聞こえよがしにまた溜息をついて、

「すまない。いずみが死んだことは当然だが、それ以上に世間の反応に堪えているようでね。最近、家にいるときはずっとこうなんだ。わたしの声すら聞いちゃいない」

「そんな。無理からぬ事だと思います。このたびは本当にご愁傷様でございました。いずみさんのこと、心中お察しいたします」

「いずみ?」

 娘の名前に、静の眉がピクリと動いた。

「わたしはいずみを愛していました、いずみに愛されていました、いずみが成仏できません、それだけは絶対です……」

 うわごとを呟きながら、弾かれたように立ち上がる。娘の名前はだんだんと大きくなっていき、やがて涙に攫われた。喉の奥を詰まらせ痙攣させ、ただのうめき声で娘の名前を連呼している。やがて絶叫と共に膝から崩れ、屠殺を待つヒツジのようにうずくまった。

 静の狂態に美鈴は苦しそうに顔を歪め、憲久は目をつむり黙り込んでいた。

 不意にわたしは、亡くなった友人の顔を思い出した。このことはどんな形であれ、記事にしなくてはならないと思った。本堂静がどのように責められどのように傷ついているのか、彼女を取り巻く疑惑はどこまで正しいのか、どうしていずみは殺されたのか。

 それを記すことこそ私の使命ではないのか。


「擁護記事は書かない方がいいかもしれません」

 取材を終え、マンションを出たところで美鈴が言った。彼女の頬に西日が照りつけている。怒っているように見えた。カラスの鳴き声が通り過ぎていく。

「どうして?」

 私は訊いた。意見に反対だったわけではない。美鈴がどのように考えているのか、それを知りたかった。

「〝擁護記事は〟ってことは、擁護しない記事なら書いてもいいのかな。ゴシップ誌みたいな批判するような記事だったらいいの?」

 美鈴はすっと目をそらした。少し嫌みな言い方になってしまっただろうか。私は美鈴に少し近づいて、

「美鈴ちゃん。あなたの正しさは私が決めてあげるって言ったでしょう? 本堂静についてなにを考えたか訊かせてくれないかな」

 美鈴は少しだけ迷い、小さく頷いた。目を上げた。

「本堂静は娘のいずみちゃんを――」

「そこの二人、ちょっといいか」

 だがその前に警備員に声をかけられた。青い制服を着たがっちりとした体格の男だ。三十過ぎくらいだろうか。

「あんたら記者の人だろう。さっき石橋さんと話してた」

「え、ええ、そうですが。どういったご用件でしょう」

 私は美鈴を背において前に進み出た。

「いや、なに。あんたらが本堂静のことを聞いてるって小耳に挟んでな。なら少し言っときたいことがあるんだ」

「言っておきたいことですか」

「ああ、本堂静についてなんだがな……あいつは大嘘つきだよ。テレビに出ては白々しく泣いちゃいるが、あいつは娘のことをなんとも思ってない。あんたら記者さんにはその辺を弁えておいてもらいたいんだ。嘘を書かれちゃ死んだいずみちゃんも浮かばれんだろう」

「根拠はあるんですか」

 私は情報の押し売りを警戒していた。取材中、虚実の入り交じったことをあれこれ話して、金だけを得ようとする人間が近づいてくることは少なくない。中には情報を小出しにしていって、徐々に金額をつり上げていくような手合いもいる。ところどころに嘘を混ぜることで通常よりも高い金を手に入れようとしているのだ。だから記者は裏取りのできない情報は信じないようにしている。

 少なくとも私は。

 疑惑の視線に気づいた警備員は心外そうに唇を曲げた。

「俺は林田はやしだという。警備員になって十年だ。誓って嘘を言うことはない。このことで金をもらう気だってないんだ」

 林田は不機嫌そうに腕を組んで胸を反らした。私は胸元の名札で彼の会社名とフルネームを確認してから、

「お気を悪くされたのならお詫びいたします。職業柄、人を疑って見てしまうものでして、ご理解ください。それとご挨拶が遅れました。私、月刊明鏡の烏丸と申します」

 名刺を差し出すと、林田はぶっきらぼうに受け取った。

「それで、本堂静さんについてなのですが」

「ああ、あいつは大嘘つきだよ」

 確認するように繰り返した。私はペンを構える。

「石橋さんはあの夫婦に同情的らしいが、それはあの女を何も知らないからだ。さすが元政治家の先生一家、外面だけはいいもんな。でも中身は真っ黒だ。いいか、本堂静は血のつながっていない、てめえの夫の連れ子を虐待していたんだ」

 私はペンを止めた。後ろで美鈴の息を呑む音が聞こえた。

「録音しても構いませんか」

「ああ、録音でも何でもしてくれ。俺は本当のことしか言わない。もう一度言おうか。本堂静は自分の娘を虐待していた」

「林田さんはなぜそれを知っているのですか」

「さっきも言ったが、俺が警備員になってもう十年だ。十年もありゃあ仕事の中に仕事以外の楽しみを見つけるもんだ。俺の場合は人の観察だった。観察っていっても、占い師みたいに何かを当てられるわけでもない。ただそいつがどんなやつで、どのくらい金を持ってて、どんな生活サイクルを回しているのか、そんなことが分かる程度だ。でもそれが役に立つときがある。なんだと思う」

 美鈴がきっぱりと答えた。

「空き巣ですね」

「その通りだ。若いのによく分かったな。ぶっちゃけるが、俺は数年前まで警備の仕事の知識を活かして空き巣をしていた。ちょっとしたきっかけでやめたんだが、今でもたまに考えちまってな。こいつの家に忍び込めばいくら儲かるかって。別にこんなセキュリティの完備されたマンションで空き巣を企てるわけじゃない。ただの職業病さ」

 林田はずいぶんと身を切った話をする。私は一度録音を止めて聞いた。

「こんな話、あなたの信用に関わるのではないですか」

「じゃあ匿名報道でもしてくれ。別に今さらどうなろうが構いやしないんだ。こっちは贖罪のためだけに生きてるんだからな」

「贖罪ですか?」

 聞き返すと、林田はしまったという顔で口早に話を続けた。録音を再開した。

「要は、だからこそ俺は本堂静の虐待に気づいたってことだ。俺はここの住人がどんな生活をしているのか観察していた。誠実さを売りにしていた弁護士先生が、裏では女衒の真似事をしていることもあった。無愛想でろくに挨拶もしない根暗が、子どもから人気者の芸能人だったこともあった。礼儀正しく寡黙なコンシェルジュが実は昔、俺と手を組んでいた空き巣だってこともある」

 驚いた私の顔を見て、林田はニヤリと笑った。

「人はみんな役者だよ。誰にどう見られるか無意識に意識して生活している。本堂静もその例に漏れなかった。あいつは孤児への慈善活動をする傍らで、夫の連れ子を虐待していたんだ」

「どこでそれを見たんですか」

「一番多かったのは駐車場だな。本堂家の駐車スペースは奥まったところにあったから最適だと思ったんだろ。分かりやすい暴力は無かったけど、つねったり小突いたりっていうのはよく見かけた。怒鳴ってるのなんてしょっちゅうだったよ」

 林田の声によどみはなかった。

「他の住人は気づいていなかったのでしょうか」

「ほとんどの奴が気づいていただろうな。たださっきも言ったように人は役者だ。奴らはタワーマンションに住んでいる人間という役を忠実に守っているのさ。せっかくタワーマンションに住んでいるのだから、出歯亀根性はしまわなくてはならない。せっかくタワーマンションに住んでいるのだから、相互不干渉でなくてはならない。せっかくタワーマンションに住んでいるのだから、弱者は見捨てなければならない。せっかくタワーマンションに住んでいるのだから……。多少俺の偏見も混じっているがね、そう大きくは外れていないと思うよ。あいつらは大人数に属しながら孤独な人間こそタワーマンションに住むにふさわしいと思っている。だから他者を切り捨てるのにも容赦がない。記者はお断りだと言われなかったか? それも肥大化させた自意識のせいだろうよ」

「では石橋さんも嘘を? 彼は静さんは娘を愛している人だと仰っていましたが」

「繰り返すぞ、俺は嘘は言わない。石橋さんは何も知らないと言ったはずだ。あの人は悪意にとことん疎い。だから本当に知らなかったんだろう」

 林田はそれ以上、石橋について言及はしなかった。

「事件当日、いずみちゃんが出て行くのを見ませんでしたか」

「ああ石橋さんに聞いたんだろう? 実は俺も見かけてないんだ。出て行く憲久は見かけたんだけどな」

「憲久さんはどんな様子でしたか」

「相当慌ててたよ。夜の九時過ぎくらいだったか。仕事から戻ってきたと思ったら、またすぐに出て行って。仕事用のでかいバッグも持ったままだったし、運転も荒っぽくてな。轢かれかけたんでよく覚えてる。まあ死んだ愛人の忘れ形見がいなくなったんだ。無理もない。でもそれで愛娘の死体を見つけることになっちまったんだから災難だよな」

 私たちが書き留めるのを待ってから、

「さあ、これで俺の言いたいことは全部だ。裏が取れないって言うなら、この話は記事にしなくてもいい。金もいらない。ただ本堂静を庇うような記事を書いてくれるな」

「それは、構いませんが……」

 もともと私も美鈴と同意見だった。本堂夫妻は取材中ずっと自分たちのことばかりで、娘のことにはあまり触れなかった。私のメモ帳には本堂静がどのように素晴らしい人間であるかを語った憲久の言葉と、自分がどのような慈しみの心を持った人間であるかを語った静の言葉が並んでいる。経験則だが、取材対象が自分のことばかり語るのは、何かを誤魔化そうとしているときだ。

 しかし――

「なぜそこまで本堂静を嫌っているのですか。それになぜ私たちにこのような話を。贖罪とうちと何か関係あるんですか?」

 林田はふっと鼻を鳴らした。

「自惚れるな。お前らにこの話をしたのは偶然だ。本堂静に私怨があるわけでもない。ただ、あいつがいつまでも被害を訴えているせいで、本当の被害者が報われないのが許せないんだ」

「本当の被害者……いずみちゃんのことですか」

「ああ、確かにその子も被害者だな。でも俺が言っているのは違う。子どもを失って本当に心から悲しんでいるのに、それが認知すらされていない親のことだよ」

 婉曲な言い回しだ。これまでの被害者のことではないだろう。

 すぐに思い当たった。

「もしかして、〈ハーメルンの笛吹き男〉の被害者が他にもいるんですか」

「なんだ、知らなかったのか」

 林田は眉を寄せた。

「娘が失踪したという母親がいるんだよ。母親は文香ふみか、娘はしおりという。父親はいない。被害届は受理されたが、成果は芳しくはないらしい」

「いつ頃のことですか」

「本堂いずみが殺された同日だ。いくら〈ハーメルンの笛吹き男〉の仕業だと主張しても警察が真面目に取り合ってくれないと、文香は嘆いていた。何せその日、〈ハーメルンの笛吹き男〉は本堂いずみを殺しているはずだからな。一時は文香が嘘をついているって疑惑まで持ち上がったらしい」

 林田は心底不機嫌そうに足を踏み鳴らした。私は気になって聞いた。

「失礼ですが、文香さんとはどういった関係ですか」

「元妻だよ」

 投げやりな声だった。わたしは平静を装いながら、

「それが贖罪につながるわけですね」

 林田は目を伏せ黙っていたが、やがて、

「空き巣で人を殺すことになるなんて想像したこともなかったんだ」

 と小さく溜息をついた。

「平凡で幸福な一家だった。稼ぎはちょっと多いくらいで、子どもがまだ小さくて、両親も共働きだったから狙いやすかった。平日は家から人がいなくなると知ってすぐ盗みに入った。案の定誰とも鉢合わせることなく成功した。まめに貯金をするタイプだったらしくて、結構な金額を手に入れられた。当時はもう一人で活動していたから、取り分のことも考えなくてよかった。でも、当時付き合っていた文香と籍を入れてすぐ、あるニュースを聞いた。その家の子どもが、交通事故で死んだんだ」

 私たちの反応を見るように間を置いた。

「幼稚園の帰りだったらしい。母親が居眠り運転をして赤信号に突っ込み、ダンプカーに潰されて死亡。母親の方は幸か不幸か生き残ったが、危険運転致死で実刑判決が出た。半身麻痺の障害も残ったらしい。母親が聴取で語ったという内容はこうだった。『日中働きづめで疲れていた、金が必要だった』」

 私は知らず息を詰めていた。反して林田の口は滑らかだ。

「もし俺が捕まったとしても、殺人で裁かれることは絶対にない。住居侵入罪と窃盗で数年服役すれば、それで帳消しになるだろう。上手くいけば執行猶予がつくかもしれない。でも俺は人を殺したんだ。たった百万ぽっちの金で一つの家庭を崩壊させた罪が俺にはある。だから足を洗った。文香とも別れた。栞はその後に生まれた子どもだ。良い出会いがあったんだろ。栞は何度か見かけたが、活発で笑顔のかわいい女の子だった。他はなにも知らない」

 林田は、深く息を吐き出した。建物の谷間から覗く西日が林田の頬を真っ赤に焼いている。

「……もう帰れ。今の話は全部俺のエゴだけど、全部真実だ。でもこんな人間の言うこと信じられないだろ」

 沈んだ声だった。

「虐待のこと、記事にしなくていい。擁護記事でも何でも好きに書けよ。なんだったら俺の話を記事にしてもいいんだぞ」

 そう自嘲して歩き去ろうとする。私はしなびて見えるその背に声をかけた。

「文香さんの連絡先を教えていただけませんか」

 林田は首だけで振り返った。

「知ってどうするんだ」

「お話を伺いに行き、もし許可がいただければ記事にするつもりです。……本堂静の話も合わせて」

 林田は喉の奥を震わせて笑った。

「そうか、頼んだぞ」

 その声は泣いているようにも聞こえた。

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