第29話 まさかのお店でした…

ガチャっ


俺たちは、ドアを開けて中に入っていく。

そして、開けた先に目に入ったのは…


「…派手な部屋に…、たくさんの巻物がある」


赤を基調とした部屋に、緑色の巻物が置いてあったのだ。


ただ、赤を基調としているとは言っても、黒や茶色などの床やテーブル、一部の壁などがあるおかげで、違和感なく緑色の巻物が置いてあるように見える。

…めっちゃ派手な部屋ではあるんだけどね。


そして、もう一つ気になったのは匂いだ。

やはり、扉の外からも少ししたように、中も香水のような匂いがしていた。

外まで出るぐらいだから、結構濃い匂いなのかなと思っていたけれど、そこまでではなく、普通に過ごせるぐらいの匂いではあった。

香水の匂いが苦手な人は、きついかもしれないが…、俺は今の所大丈夫だな。


けど…


「ぷいー…」


「モイカは匂いがキツイか?」


「ぷい…」


モイカはこの匂いがダメらしい。

というよりも、スキルでもある嗅覚のせいで、鼻の効きが良すぎて、ダメになっているっぽい。


「ハクとリアは大丈夫か?」


「ピィー」「カウっ」


ハクとリアは大丈夫らしいな。

リアとかは、ワンチャンきついかもなと思っていたのだけれど、意外と大丈夫っぽいな。


「わかった。てことはモイカだけか…。モイカのためにも、早く上に戻りたいんだけど…」


…一体ここはなんなんだろう。


俺は改めて、周りを見渡してみる。


見た感じでいうと、巻物がたくさん並べられていて…、なんだか商品のように配置されているようにも見える。


隅の方には、机やテーブルもあって、そこで休めるようにもなっているらしい。


…うん、ここまでを踏まえると、俺の予想では、ここは……何かのお店。



「…珍しいのう。ここにお客さんが来るとは…」


「…!?」


俺たちが中を見渡していると、いきなり奥の方から声が聞こえてきた。


声がした方向を振り向いてみると、そこには、こちらに向かってゆっくりと歩いてきている老女の方がいた。


「ここは、そう簡単に来れるはずないんじゃが…、お主ようこれたのう」


そして、老女は俺の少し前まできて、話を聞いてくる。


「……あ、えっと…、この子のおかげですね」


いきなりの事で、少し声が詰まってしまったけれど俺はそう言って、俺の足元にいるモイカの方を見る。


多分モイカがいなければ、絶対ここには来れなかっただろうし、気づきもしなかったと思うからな。

全てモイカのおかげだ。


「…ほお…。そういうことか。…この子からしたら、ここは少々きついかもしれないのう」


「…え!?…なんで、そこまでわかるんですか」


俺はおばあちゃんのいった言葉に驚く。

…このおばあちゃんは、モイカの様子を見ただけで、全てわかったのか…?


「長く生きているからのう…。見ただけでも、大体わかるわい」


そう言って、俺の目の前からゆっくりと移動を始める老女。

そして、老女は、椅子とテーブルが置いてある、部屋の隅の方へと移動する。


…なんで、そっちに行ったんだ?


「…こっちにきてみろ。ここなら、匂いも薄くなっているから、そこの子も大丈夫なはずじゃ」


「…え…わ、わかりました!」


俺は、モイカ達に目で行く合図をして、老女のいる方へと向かう。


「…あ、ほんとだ。匂いが薄くなってる…」


「そうじゃろう。そこの子もここなら大丈夫か?」


「ぷいっ!」


「ならよかった」


そう言い、微笑む老女。


…え?なんでそこまでわかってるんだ?

確かに、モイカは匂いがきついとは言っていたけど、そこまで顔や態度には出ていなかったとは思う。それなのに、この老女はそれをわかっていて、匂いが薄くなっているところまで案内してくれた。


「…えっと、なんでわかったんですか?モイカが匂いをキツそうにしてることが」


「この子はモイカというんじゃな。なに、長年生きていれば、ちょっとした動作でわかるものじゃよ。この子はさっきから鼻をぴくぴく動かしていたからのう」


「え…!そうだったんですか…」


全然気づかなかった…。

まだ3日しか一緒に入れてはいないが、それでも結構モイカのことをわかってきたつもりだったんだけどな…。少し悲しい。


「と言っても、ほんの少しだけだったけどな」


「…いや、それでもすごいですよ」


「ホホホっ。そう言ってもらえると、嬉しいものじゃのう」


笑いながら、そう言う老女。


さっき声に出しても言ったが、本当にすごいと思う。長年生きているからわかったと言っていたけど、多分昔からさまざまな人たちを見てきていて、細かいところまで気づいていていたんだと思う。


俺も、こういうところは見習わないとな。



「…あの、すいません…」


「うん?どうした?」


「その…ずっと気になってたんですけど…、ここはどこなんですかね…?」


「…お主、よくここがどこかもわからずに、入ってくることができたものじゃな…」


「それは本当にすいません…。隠し扉的なものがあったので、つい好奇心で…」


「ぷい…」「ピィー…」「カウ…」


3人も俺と同じ気持ちだったらしく、少し申し訳なさそうな反応をする。


「よいよい。なら改めて…ここを紹介しようかのう」


そういうと、老女は店に並ばれている緑色の巻物を一つ持ってきて、俺たちの前へとおく。


「ここはスクロール屋じゃ。いわゆる…スキルというものを買うような所じゃな」


老女はそのまま、持ってきた巻物を開いて、俺たちに見せてくれる。


—————————————————————

大剣術のスクロール


スキル 大剣術を獲得することができるスクロール。

※すでに持っている場合は、大剣術のレベルが一つ上がります。


ゴールド 2000G

—————————————————————


「スキルを…獲得できる!?」


「そうじゃ。ただし、その分ゴールドも高くなっておって、一回の来店で一個しか買えないものじゃがな」


……それでも十分すごくないか…?

もちろん今の俺からしたら、買えるゴールドはあるけれど、大半のゴールドを使ってしまうことになるけど…。しかも、何がいいってすでに持っていてもレベルが上がる所。結構レベルが上がらないスキルとかもあるからな。


「あ…言い忘れていたが、ここは毎週水曜しかやっておらんぞ」


「…え、そうなんですか?」


「ああ。それと、今見せたスクロールはこの店で一番安いものじゃな。他のものは、スキルによっては、5000G、10000Gとするものもある」


「…マジですか」


まさかの水曜日しかやっていないかつ、このスクロールは一番安いものだった…。

まあ…そうだよな。

さっきまでの老女の言い方だと、毎日くることができて、スキルも2000Gで毎日買うことができることになってしまうからな。


「…あとは…人数制限もあるのう。あまりにも人が来すぎると、ワシが疲れてしまうからのう。なんなら、めんどくさくて店を開かない日もあるのう…」


「…そ、そうなんですか…」


…あれ?もしかして、俺が今日入ることができたのって、意外と奇跡だったりする?

ちょうど今日が水曜日で、老女が疲れてしまう前に入ることもできて、老女のやる気もある今日という日…。


もしかしたら、今日が最初で最後ということになる可能性もありそうだな…!

毎回訪ねるとは思うけど。


「っていう感じじゃな。多分…もう伝え忘れたことはないと思うのじゃが……あ、そうじゃそうじゃ。ワシの名前をまだ伝えてなかったのう」


…そういえば、ずっと心の中では老女って言っていたな…。

なんか、心の中とはいえずっと老女って呼ぶのも嫌だから、教えてくれるのは嬉しい。


「ワシの名前は、スイというのじゃ。スイ婆とでも呼んでおくれ」


「えっと、俺の名前はシドって言います。そして、この子がモイカで、頭にいるのがハク、足元にいる子がリアって言います。よろしくお願いします、…スイ婆さん」


「うむ、よろしくのう。シドにモイカ、ハクにリアよ」


「ぷい!」「ピィー!」「カウ!」


…少しスイ婆さんと呼ぶのには勇気が必要だったけど…向こうもちゃんと許してくれているみたいだな。呼んでもいいとは言っていたけど、やっぱり少し緊張した。


「それで…シドよ。ここがスクロール屋とわかったところで、お主はどうする?何か買うか?」


「…それが、そうしたいところなんですけど…」


「うん?どうかしたのか?」


「……ゴールドがあまりないんです…!」


一番の大問題。ゴールド不足。

せっかく運がいいことに、ここを見つけることができたというのに、なにも買えずにここを出ることになるなんて…!…もっとゴールドを貯めておけばよかったな…とは思うけど、色々なことが今までにあったからな。…ゴールド集めをしたあと、マップ埋めをやっていれば、一つは買えたかもしれないな。


「なるほどのう。そういうことか…。………少しそこで待っておれ」


「……え?」


スイ婆さんは俺の言葉を聞かずに、また店の奥へと行ってしまう。

待っておれって言われても…、なにをするんだ…?


すると、スイ婆さんが、少し埃のかぶっている巻物が数個入っている段ボールを持ってくる。


「おいしょっと。…ほれ、ここから好きなものを一つ持っていくがいい」


「……え!?そんな…そんなこと流石にできないですよ!」


最低でも、2000Gがするものだぞ?それを好きに持って行ってもいいなんて…、流石の俺でもできない。


「大丈夫じゃ。これは、古くなってしまって売りに出せなくなったものだからのう。それに、そこまでいいスキルというわけでもないしのう。それでも、ちゃんとスクロールとしては使えるようになっているから、持っていくがよい」


「でも……」


「いいから持っていけ。…ワシの目からだと、お前がいいやつというのはわかっているからのう。…もしかしたら…近いうちに何かやるかものう…。まあ、次来た時に買ってくれればワシとしても十分だから、持って行け」


スイ婆さん…。途中小声になっていて、聞き取ることができなかったけど…、ここはスイ婆さんのいう通りに、一つもらっておこう…!!


「スイ婆さん…ありがとうございます!このご恩は忘れません!」


「うむ!次来た時は、よろしく頼むのう」


「はい!」


俺はそう言って、スイ婆さんが持ってきた段ボールの中から、一つだけ選ぶ。


「…うーん…これだ!」


なにも理由はないが、直感で一つのスクロールをとる。

これがどんなスクロールなのかは、俺も…多分スイ婆さんもわからないと思う。

…ちょっとガチャっぽくて面白い。

でも、せっかくタダでもらうことができたんだし…、いいものを引きたい…!


「それでいいか?」


「はい。なんとなくですけど…これがいいです」


「わかった。なら……中を見てみるかのう」


「…はい」


「ぷい…」


「ピィー…」


「カウっ…」


モイカ達も、どんなスキルが出てくるのか楽しみらしく、スクロールにしか目がいっていないように見える。

今から、見せてやるからな…!


…俺はゆっくりと、スクロールの巻物を、紐を解いて開いていく。


やばい…なんかめちゃ緊張してくるぞ…!

この感じは、スキルをランダムで決めることができるあの機能に似ている。


そして…スクロールが開き終わる。


「こ、これはー…」


「このスキルはー…」


—————————————————————

光魔法 浄化のスクロール


光魔法 浄化を取得することができるスクロール。

しかし、光魔法を取得しているものにのみ、使用することができる。

——————————————————————


——————————————————————


見てくださりありがとうございます!


スクロールとスクロースでどっちが正しいのかわかりませんでしたが…、スクロールで書かせてもらいました。もし、違ったら教えてください!


なんと…星評価(レビュー)が400を突破していました!皆さん本当にありがとうございます!

これからも、ゆっくりですが書いていくのでよろしくお願いします。


そして、誤字脱字の方もよろしくお願いしたら。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る