第28話 …ここは…なんだ…?
「…うわぁ…、また薄暗い道に出たな…」
「ぷい…」「ピィー…」「カウ…」
ピコと別れて、数十分が経った頃。
俺はまた、さっきと同じ……いや、さっきよりも薄暗くて、人気のない道へと出た。
ピコと別れてすぐは、まだ明るくて、人もぼちぼちと歩いているような道だったのけれど、あっちこっちと歩いているうちに、またこのような道に出てきてしまった。
モイカ達も、ずっと歩いていた疲れのせいかもしれないけど、この道を見てから、明らかにテンションが少し下がっている。
…モイカは、ずっとリアの上にいるから、疲れとかは関係ないと思うけど…。なんなら、ハクも俺の頭の上にいたから、疲れてないと思うけど…。
あれ?
歩き疲れてるとしたら、リアだけじゃないか…?
リアは、大体モイカを上に乗せながら、俺の横を歩いている感じだし…。
…リアには、いいご飯をあげないと。
「…この道を歩いたら、一旦帰るか」
「ぷいっ!」「ピィー!」「カウっ!」
ピコと話した時間を含めると、地図を埋めていた時間は一時間ぐらいだ。本当は、もうちょっと埋めたかった気持ちもあるけれど、あまりモイカ達(リア)に無理はさせたくないしな。
それに、期限までにはまだまだ時間はあるし、ゆっくりとこのクエストはやっていこう。
…ちなみに、今の地図の埋め具合で言うと、約10%ぐらい。
まだまだ先は長そうです。
「さてと…、歩きますか」
俺たちはまた、薄暗い道を歩いていく。
道幅は狭くないのだが、周りの建物のせいで日光が届いていなく、ゴミのようなものもちらほらと落ちているからか、薄気味悪く見える。
多分、霊とかはいないと思うけど…、なんだか、ここにはあまり長い時間いたくない。
…うん、やっぱりできるだけ早く、この道は抜けよう。
俺たちは、少し速めにこの道を歩いていく。
……
……
……
「……スンスン…。ぷい?」
「ん?どうかしたか、モイカ」
誰も話さずに、道を歩いていると、モイカが何かを感じ取ったような反応をする。
「…ぷいっ」
すると、モイカはリアの上から降りて、俺たちの右隣にある…、何もない壁の方をじっと見つめ始めた。
「…モイカ?そこに…何かあるのか?」
…なんか、ちょっと怖いんですけど…。
モイカが、いきなりこんなことをするなんて、初めてのことだから、ちょっとだけ怖さがある。
…
…もしかして…、おばけとかじゃないよな?
その壁の前に、透明な何かがいて、それに反応しているとか…。
いや、待てよ…?
確か、明日のイベントが、霊に関するものだったから、その伏線として、今日から色々と撒き散らしているんじゃ…!
それだったら、この辺りにも何か霊的なものがいてもおかしくはないと思う。
「ぷいっ!」
いきなり、モイカが俺に向かって鳴く。
「…!やっぱり、何かいるのか!」
この反応…
やっぱり、俺の予想通り、その壁の前に何かがいるんじゃ…!
「…?ぷいぷい」
「…あ…。…違う?」
何を言っているんだ?みたいな様子で、首を振るモイカ。
「ぷい」
「…じゃあ、一体何が…?」
「ぷいぷい」
モイカが、右の前足で、壁をトントンと触る。
「…壁に何かあるのか?」
「ぷいぷい!」
思いっきり頷くモイカ。
壁に…?俺が見るからに、ただの薄汚れた白い壁にしか見えないのだが…。
…てか、さっきの、おばけがいるんじゃ!みたいな反応をしたのが、結構恥ずかしいんですけど…。
意外といい考察だと思ったんだけどな…。明日のイベントの伏線…。
俺は、気を取り直して、モイカが触っている壁を触ってみる。
「…何ともないような気がするけど…」
右の手のひらで、触っているのだが、何も起こらない。
けど、モイカはこの壁に違和感か何かを感じ取っているんだよな…。
「ぷい!ぷい!」
「……押すのか?」
俺のスキルである、以心伝心のおかげか、何となくそう言っているように聞こえる。
「ぷいぷい!」
「なるほど。そういうことか」
モイカ曰く、この壁を押せば何かあるとのこと。
…そうと決まれば…
思いっ切り押すのみ…!
「うおおお…!!!」
俺は力いっぱいに、何もない壁を押す。
「うおお…!」
始めは、何も起こらなかったのだが、そのまま押し続けてみる。
すると…
ガラガラ…ガラガラ…
ゆっくりと、壁が動き始めた。
いや…、動いたというよりも……
回り出したと言った方がいいかもしれない。
「そういうことか…。回る隠し扉形式っていうことね!」
俺はそれを見た瞬間、また力を入れて、回って動き始めている壁を押す。
なんか…ワクワクしてくるな!
さっき地図を見ていたけれど、ここには何もないように書かれていたから、何があるのか気になってくる。
「ぷいー!ぷいー!」
「ピィー!ピィー!」
「カウ!カウ!」
俺のことを応援してくれる3人。
「…うおおおおお!!!」
やっぱ応援の力ってすげーなー…!
モイカ達だったからかもしれないけど、めっちゃ力が湧いてくる。
そのおかげか、壁はどんどんと動いていき…
やっと少しだけ中の様子が見えるようになってきた。
けれど、まだ何があるのかはわからない。
「もう少しっぽいな…!うおお!」
「ぷいー!」「ピィー!」「カウ!」
「うおおお…!」
あとちょっと…。
あとちょっとで、中も見えそうだし、俺たちも中に入ることができそうなんだ…!
俺はまた、力いっぱいに壁を押し続ける。
「……!なんか、押しが弱くても動くようになったか?」
もう少しで、中に入れそうという時に、いきなり壁が軽くなったのだ。
何でかはわからないけど…これならもう力を入れないでよさそうだな。
俺はゆっくりと、壁を押していき…
ついに、俺たちが中に入れるぐらいまで開くことができた。
そこにあったのは…
「…階段…?」
「ぷい?」「ピィー?」「カウ?」
地下に続いていくような、下りの階段がそこにはあり、どこに続いているのかもわからなく、ほぼ真っ暗な状態になっていた。
…何でこんなところに階段があるんだ?
しかも、こんな隠し扉のようなものの後ろに…。
「…中に行ってみるか」
本当は、もう少し色々と用意してから、行くべきなのかもしれないけど…、何があるのかという好奇心が勝ってしまった。
「ぷいっ」
「ピィー」
「カウっ」
ただ、モイカ達も何があるのか気になっているらしく、すんなりと中に入っていく。ハクも、俺の頭から飛んで、中に入っていくぐらいだからな。
相当気になるんだと思う。
…俺も入りますか。
モイカ達が入ってから、俺も中に入っていく。
少し怖さもあるけど…、モイカ達もいるんだし、大丈夫だろう。
ドンっ!
「…!?扉が勝手にしまったぞ!」
俺たち全員が中に入ると、扉が勝ってに閉まる。
閉まったことで、外の灯りが中に入らなくなり、中は真っ暗になってしまった。
元々薄暗くはあったけれど、外の灯りがあるとないとでは雲泥の差がある。
「モイカ!ハク!リア!大丈夫か!」
俺はそう言いながら、扉を開けようと、色々な場所を力強く押すが、どこも開くことはない。
さっきは少しずつ動いたのに…!
「ぷい!」
「ピィー!」
「カウっ!」
「よかった…。無事そうだな」
ひとまず、モイカ達は大丈夫そうだ。
あとは、ここからの出方をどうするかだけ…
ボっ
「…あ、灯りが」
俺が、扉を押して、開けようとしていると、階段のの横の壁についていた、謎のお皿のようなものの上から火がついたのだ。
周りを見ると、モイカ達もちゃんといるのもわかる。
ボっ ボっ ボっ……
その一箇所がつくと、どんどんと階段の横のところに火がついていき…、階段の下の方まで明るく見えるようになった。
「……」
これは…もう降りるしかないか。
閉じ込められたことで、ちょっと怖いというという気持ちも湧いてきてるけど、いけるところがもう、一つしかないからな。
「…降りてみるか」
「ぷいっ」「ピィー」「カウ」
3人は、何にも怖くないのか、意外と乗り気なように見える。
頼もしいかぎりだな…!
俺たちは、ゆっくりと、明るく見えるようになった階段を降りて行った。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
「…あ、もう階段が終わるぞ」
俺たちが階段を降り始めてから1、2分が経った頃、やっと下まで見えるようになってきた。
もしかしたら、何十分も階段を降りる羽目になるのでは…と少し考えていたから、すぐに下まで見えるようになったのは、良かったと思う。
俺たちは、階段を最後まで降りて、下の場所へと着く。
そこにあったのは……
「…扉…?」
「ぷい?」「ピィー?」「カウ?」
その扉は、こんな地下にあるのにも関わらず、綺麗に保たれていて、サビついていたりもしていない。
しかも、その扉の上には、小さな看板のようなものが設置されており、そこには巻物のような絵まで描かれている。
……なんでこんなところに扉があるんだ…?
こんな誰も来なさそうな場所なのに…。
この巻物のような絵も気になるし、本当に、ここはなんなんだろう。
「…それと、階段降りてる時から気になってたけど、少し変な匂いがするんだよな」
そう、階段を降りている途中から気になり始めたのだが、地上にいる時の匂いとここの匂いが、少し違うように感じる。
なんて言えばいいんだろう…。匂いが薄くて、あまりキツくない香水?みたいな匂いがするのだ。
「ぷいっ」
「…あ、そういうことか。モイカはスキルの嗅覚で、ここに何かあることがわかったのか」
「ぷいぷい!」
これなら納得ができる。
モイカの持っているスキルである嗅覚は、鼻の効きが良くなるというものだから、地上にいる時にうっすらとこの匂いを感じとることができたのだろう。
だから、地上で、さっきの壁の先に何かあるのではと思って、俺に教えてくれたんだろう。
結果、この通り…何かはあったからな。
「…中に入ってみるか」
と言うか、もう開けるという選択肢しかないんだよな。再び階段を上がったところで、どこも開かなかったんだし、この扉を開くということしかできない。
「…開けるぞ」
「ぷい…」「ピィー…」「カウ…」
3人が少し警戒をしながらも、頷く。
俺達は、目の前にある扉を開けて、中へと入っていった。
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少し短めになってしまいましたが、読んでくれてありがとうございます。
少し報告ですが、春休みが終わり、色々とやらないといけないことが増えるので、投稿頻度が落ちてしまうかもしれません。
それでも、書いていこうと思っていますので、よろしくお願いします。
引き続き、誤字脱字報告等もよろしくお願いします。
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