第26話 初めてのプレイヤーとの邂逅


「さてと、まずはー…、土地エリアがある、北西のあたりを探索して、地図を埋めるか」


「ぷいっ」「ピィー」「カウっ」


俺たちは、今の場所から近い、始まりの街の北西を探索することに決める。

土地エリアの周りは、まだ人が少なく、そこまで目立ちもしないから、歩くには最前の場所だ。

今日で、北西全部を見回ることは不可能だと思うけど、少しずつでいいから、埋めていきたいと思う。


「初めは、ここから東に歩いて行こうかな」


土地エリアは、始まりの街の一番北西にある。

今俺たちは、そのあたりにいるということだから、ここからまずは、東の方に歩いていこう。

できるだけ、正確に地図も埋めたいから、通れそうなら、路地裏だったり、細い小道も歩いてみたいな…。その時は、モイカ達も通れる様に、モイカを肩、ハクを頭、リアを腕に抱いて、歩こうかな。


ちなみに今は、人通りも少ない場所だということもあって、ハクはいつも通り頭にいるけど、モイカはリアの上に乗って、休んでいる。


マジでこの状態可愛いすぎるんだよな…。


「…よしっ、探索していきますか!」


「ぷいっ!」


「ピィー!」


「カウっ!」


3人とも、やる気満々の様子で返事をしてくれる。


ただ歩くだけだから、そこまで意気揚々としなくてもいんだけど…、やる気があるのはいいことだからな…!


「3人とも頼むぞ…!」


俺たちは、土地エリア前から東に向かって、歩き始めた。



♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢



「ここの道は本当に人がいないな」


歩き始めて、約10分。

俺たちは、ちょっとした小道を歩いていた。


マップと地図、両方を開きながら歩いていて、歩けそうな道があったら、できるだけ全て歩こうと考えていたら、今いる小道まできた感じだ。


さっきまで歩いていた道には、人は全然いたのだが、この小道にはNPCのような人も、プレイヤーも見当たらない。

初日に歩いた、路地裏よりかは全然広く、日光もあたっている方だと思うんだけど…、なんでだろう。


まあ、人がいないことは、俺からしたらいいことなんだけどね。


「ぷいぷい?」


「カウっ!」


「ぷい!」


「カウっ!」


モイカとリアは、歩きながら何かを話していて、楽しそうにしている。

モイカもリアもメスだったはずだから、もしかしたら、何かしら話しが合うのかもしれないな。


ちなみにハクは、俺の頭の上で、ずっと周りを見ている感じだ。

そこまで変なことよ、ものはないと思うけれど、何か見つけたら教えてくれると思うから、見ていてくれるのは助かる。



ただ、やっぱ歩くだけだと少し暇だな…。

俺は、少し考えて…


歩きながら、頭の上にいるハクを、少しだけ撫でてみる。


「……ピィー♩」


はい、可愛い。


ハクは目を細めて、少し微笑みながら、小さな声で鳴く。


小声で鳴いているのは、多分……モイカやリアにバレない様にするため。

今も、モイカとリアは話に夢中になっていて、こちらに気づいている様子はない。


「…よしよし…」


「ピィー♩」


俺も、ふわふわを味わうために、ハクを撫で続ける。

ハクのふわふわ感は、至高だからな…。いつまでも撫で続けれるぞ。


あ…、そうだ。


「…ハク、俺の手に乗ってくれ」


「ピィー?」


俺はハクに小声でそう言って、モイカを手に乗せる。

ハクの方も、少し戸惑っていたけれど、大人しく乗ってくれた。

…初めて、ハクを手に乗せたけど…、こんな感触なんだな…。少し気持ちいい。


俺はそのまま、胸の前まで、ハクが乗った手を持ってきて……


「よしよし」


「ピィー♩」


また撫でる。

今まで、ハクをこんなふうに撫でたことがなかったから、少しやってみたかったんだよなー。

ハクの可愛い顔も目の前で見れるから、余計に撫でたくなる。


…少しの間、このまま歩いて探索しようかな。

モイカ達も話しているみたいだし、バレなければ大丈夫だろう。

…ちょっと、バレたらどうなるんだろうと気になるけど…、多分、撫でるように言ってくるだろうな。

それも俺からしたら、幸せ空間だけどね…!


俺はハクを撫でながら、モイカとリアは、何かを話しながら、小道を歩き続ける。

みた感じ、もう少し歩けば、また違う道がありそうだから、次はそっちに行ってみようかな。



………



「……あ、あの!すいません!」


「…うん?なんだ?」


俺たちがゆったり歩いていると、後ろから男の人の声が聞こえる。

この小道には、他にも人が見当たらないから…、用があるのは俺か…?


俺がゆっくりと後ろを振り向いてみると…、俺と同じぐらいの背で、フード付きのローブのようなものを身に纏っている、茶髪の青年がいた。

この感じは…、多分プレイヤーだと思う。


「えっと…、俺ですか?」


「そうです…!」


やはり俺だったらしい。


…なんだろう…。


初めて外で話しかけられたから、少しだけ不安な気持ちが湧く。

俺は手の上に乗っているハクを、頭の上に戻して、茶髪の青年の方を再び見る。


「その…一つお願いがありまして…」


「お願い?」


「ぷい?」「ピィー?」「カウ?」


俺が少し顔を傾かせながら言うと、3人も俺のマネをしながら鳴く。


可愛い…めちゃめちゃ可愛いんだけど……今はちょっとその事は置いておく。


俺にお願い?

今目の前にいる茶髪の青年とは、今日初めてあったし、何かお願いされるような事もないと思うんだけど…。

なんなんだろう。


「えっと…、その…」


「…うん?」


茶髪の青年が、少し言いずらそうにしながら、俺の足元のあたりを見ている。


…なんでそんな言いずらそうなんだ?

ちょっと怖いんだが…


「…ブツブツ…ブツブツ…」


茶髪の青年はいきなり真下を向いて小さな声で何かを言い出し始める。


え…、もっと怖くなったんだが…?

大丈夫か?


……


「……よしっ…」


青年は小さな声でそういうと、一気に顔を上げて、俺の方を見てくる。


…俺も緊張してくるから、お願いがあるなら早く言ってほしいな…。


「その……お願いなんですけど……」


さあ…どんなお願いなんだ…。


俺は、緊張している気持ちを抑えながら、青年の言葉に耳を傾ける。


「…そこにいる……モルモットをもっと近くで見てもいいでしょうか!!」


「………」



……


……



「…へ…モルモット?」


俺はいきなりのことで、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてしまう。


モルモット?

モルモットって…、モルモートのモイカのことか?



「そ、そうです!今あなたの足元にいる……ライオンの子ども?の上に乗っている子です…」


「ぷい?」


うん、やっぱりモイカのことだな。

今モイカは、俺の足元のすぐそばにいるし、リアの上にも乗っているしな。


「その…無理なら大丈夫なんです!俺の勝手なお願いですし… 、ダメならすぐに諦めるので」


真面目な顔をしてこちらに話す。


なるほど…。


…正直なところ、俺としては別にいいかなとは思っている。茶髪の青年も、真面目そうに見えて、変な事はやらなそうだしな。

それに…、このゲームをやり始めて3日目だが、まだこの世界で、プレイヤーと話したことがないから、少しでもいいから話して見たい。


けれど…、俺がいいとしても、モイカが嫌な可能性がある。

モイカが嫌だということは絶対にやらせたくないからな。


「…少しだけ待ってもらってもいいですか」


「大丈夫です」


俺はそう言って、茶髪の青年に少しだけ待っていてもらう。


モイカと話さないと決めようがないからな。


「…モイカを近くで見たいらしいんだけど…、モイカは大丈夫か?」


俺は小さな声で、モイカに聞いてみる。


「ぷい?…ぷいぷいっ」


モイカは一瞬だけ、首を傾けたが、すぐに頭を縦に振る。


これは、いいよってことかな。


「大丈夫そうだな」


もう少し考えるかなと思っていたが、案外すぐに了承をくれた。


あ、そうだ…。


「ハクとリアも大丈夫か?多分、二人のことも近くで見ると思うんだけど…」


俺はリアとハクの二人にも聞いておく。


モイカを近くで見るという事は、二人のことも見るという事だと思うんだよな。もしかしたら、モルモットが大好きなだけで、他は興味がないという可能性もあるけれど……、うちの子はみんな可愛いからな!多分、見てはくると思うんだ。


二人にも、嫌な思いはさせたくないからな、念の為に聞いておきたい。


「ピィー」


「カウっ」


ハクとリアも、すぐに頭を縦に振る。


「そうか。ありがとう」


もしかすると、モイカもハクもリアも、こういうことに軽いのかもしれないな。

俺としても、少し話して見たかったから、ありがたい。


「なら、大丈夫って伝えちゃうな」


「ぷいっ」「ピィー」「カウっ」


モイカ達にそう伝えて、俺は再び、茶髪の青年の方を向く。


茶髪の青年は、緊張しているような表情で、こちらの様子を伺って、俺たちのことを待っていた。


「…待たせちゃってすいません」


「…あっ、全然大丈夫です!」


「えっと……近くで見ていっても大丈夫ですよ。ちゃんと了承ももらったので」


「……え!?本当ですか!」


茶髪の青年が目を輝かせて、聞いてくる。


…そんなに見たかったのか。


「…はい、大丈夫です」


「…あ、ありがとうございます…!!!」


そう言うと、恐る恐るゆっくりと俺たちの方へと歩いてきて……俺の少し前でとまる。


「…俺の名前は、ピコって言います。えっと…、よろしくお願いします!」


そう言った茶髪の青年……ピコは、手を前に出す。


確かに、名前を名乗っていなかったな。


「…俺はシドです。よろしくお願いします」


俺は、その手を握って、お互いに握手をする。


こうして、この世界で初めてのプレイヤーと出会った。



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