第21話 まさかの遭遇


……


「…お、あの木って……」


俺は、南の森を歩いている最中に見たことのある木を発見する。

周りの木よりも高くなっていて、葉の量も多くなっている木。


「…うん、ハクが落ちてきた木だな」


そう、俺とモイカがブラックウルフと戦った後に、ブラックウルフがぶつかった衝撃か何かで、ハクが落ちてきた木だ。

やっぱ、見れば見るほどでかいと感じるな…。


「あ、そうだ」


俺は、頭の中で鑑定と唱える。

まだ、鑑定で、植物などの自然物を見たことがなかったからな。これで見れるのかと、どういう感じなのかを見ておきたい。


——————————————————————

古樹


昔からこの地にある歴史ある木。王家の城があった頃からこの木はあったのではと言われている。

昔からあるだけあり、大きさや、根の太さ、葉の数などが周りのものより優っている。

また、この木には、モンスターが住んでいるという噂もあるが、木のデカさや葉の数が多いせいか、モンスターを見ることは滅多にない。もしかしたら、王家の城があった頃のモンスターがいる可能性もある。

———————————————————————-


「おー!ちゃんと見れるぞ!」


見方は、モンスターの生態が書かれているのと同じ感じだな。

正直、あまりこういう植物とかには興味なかったんだけど……読んで見ると、意外と面白いもんだな。


「昔……王家の城があった頃からあった木…。そして、モンスターも住んでいて、その当時のモンスターがいるのかもしれないと……」


うん、そのモンスターってハク…シロノバードのことだな。

確か、ハクの生態説明の時にも、王家の城のことが書かれていたし。多分、そのモンスターはハクで確定だろう。


それにしても、王家の城か……

シロノバード、そして古樹と続いて聞いたものなのだけれど、何か関係があるのかな…?

ちょっと気になってくるんだけど……

…いや、今は一旦おいておこう。もしかしたら、街にある図書館とかに情報があるかもしれないから、また行ってみようかな。……覚えていたら。


「ピィー」


ハクが鳴きながら、古樹を眺める。

まあ、そうだよな。住んでいたところではあるんだから…。


「…ハクは寂しいか?」


本当は、こういう言葉ってテイムしてすぐぐらいに聞く言葉なんだけど……昨日の俺はそんなことを聞かずに街に戻ってしまったからな。

俺は一度ハクに聞いてみる。


「ピィー!!」


しかし、ハクはそんなことないらしく、俺の前に飛んでくると、頬擦りをしてくる。

…よかった。少し申し訳なさがあったから、こういうことをやってもらえると、俺としても、ありがたい。


「…ありがとう」


俺はそう言い、ハクを撫でる。

…やっぱ、撫でちゃうんだよな、俺。


「ピィー♩」


可愛い…!

もう何度も、見た光景ではあるけれど、全然飽きない。

…それにしても、飛んできて頬擦りをしてくれたけど…可愛かったし、気持ちもよかったな…。

あまり、こういうことをしていなかったから、嬉しい。


「ぷいぷい!」


「カウっ!」


「…わかったよ。二人も撫でてあげるから」


もう大体は予想していた。

俺が誰か一人を撫でると、それに嫉妬か何かをして、撫でてと要求をしてくるんだよな…。

…それがめっちゃ可愛いいんだけどね!!

それに、俺も嬉しいし。なんだか求められているような気がして。


「ぷいー♩」


「カウっ♩」


はい、可愛い。

これだけで心が満たされるね…!


「…あ、そうだ。ハクに一つ聞きたいことがあるんだけど…」


「ピィー?」


俺は、古樹の説明を読んで、少し気になっていたことを思い出し、ハクに聞いてみる。


「この木にモンスターがいるって書いてあったんだけど……ハク…シロノバード以外のモンスターもいたのか?」


古樹の説明には、モンスターが住んでいること、王家の城があった頃のモンスターがいるかもしれないということが書かれていたけれど、複数のモンスターがいたかどうかはわからなかったから、少し気になった。


「…ピィー…」


「…わからないか?」


「ピィー…」


ハクもわからないらしい。

シロノバードだけが住んでいるのか、それともハクがただ単に会っていないだけか…、はたまた木にいるモンスターが大人しくて、いるのだけれど気にならなかったのか…。

気になるけど、しょうがないな。


「そうか。ありがとな、ハク」


「ピィー…」


「別に気にしなくていいぞ。俺がただ単に気になっただけだからな。ハクは何も悪くないぞ!」


「ピィー」


俺は、ハクが少し申し訳なさそうなのを見て、すぐに慰める。言った通り、俺が気になっただけだからな。ハクに問題は何もない。


俺はまた、ハクを撫でる。

モイカとリアも撫でていたから、3人を順番に撫でた感じだな。

みんな、もふもふ&ふわふわだから、マジで気持ちいい…。


「ぷい♩」「ピィー♩」「カウ♩」


「……ちょっと休憩していくか。せっかく、この根元もあるんだし」


俺は、撫でる時間を満喫して、少し休憩をし始めた。




♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢




「よし、探すのを再開するぞ!」


俺は古樹の根元で、みんなを撫でて、休憩をした後に、また歩くのを再開する。

今の目的は、スピドラビットとユニークモンスターだから、あまり長い時間休憩をしたりはしない。

それに、そこまで疲れてもいなかったからな。


「ぷい!」


「ピィー!」


「カウ!」


3人とも、さっきよりも少しは元気になっただろう。ここにくるまでの間に戦ったのは、少しのスライムだけだったけど、少しは疲れがあったかもしれないからな。それが取れていればいいな。

ちなみに、レベルとかは何も上がっていない。


俺たちは、周りを見渡しながら、歩くのを再開する。

昨日はこのあたりで、ブラックウルフが出てきたから、少しは警戒しておいた方がいいかもな。

ずる賢いとか言われていた気がするし。


「…ブラックウルフのユニークモンスター…」


気になるな…。色と強さが変わるって言われていたから、少し勝てるかわからないけれど、もし発見できたら絶対テイムしないと。なんなら、普通のブラックウルフもテイム失敗してるから、テイムしてみたい。


「もし、ブラックウルフが出てきたらテイムだな」


今は、ハクもリアもいるから、前よりも楽に倒せるはずだ。大体の攻撃もわかったしな。




ガサガサ… ガサガサ…



「…噂をすればって感じだな」



俺は、木の茂みがガサゴソと動いているのを見つける。この感じは昨日も経験したからな。茂みを動かして、確認させる。そして、いないと思わせて…後ろから攻撃をする。

これは……ブラックウルフ……



「キュイ」


「…じゃ、ない!」


茂みがガサゴソと動いて、そこからウサギ型のモンスターが飛び出してきた。

そう、そのモンスターは俺たちが求めていたモンスター…


————————————————————


スピドラビット ♀ Lv5


HP 18 MP 10


————————————————————


———————————————————————

スピドラビット


南の森に現れるウサギのモンスター。

ステータスは比較的低くなっているのだが、俊敏力だけが異常に高くなっているため、逃げると決めると、倒すことが困難となる。南の森に生息するモンスターの中で一番俊敏力が高くなっている。

しかし、HPや攻撃力は低くなっているため、プレイヤーが死ぬことはあまりない。


———————————————————————



「スピドラビットだ!!!」


ブラックウルフではなかったが……、一番出てきて嬉しいモンスターかもしれない。

クエスト完了のためにも、スピドラビットは倒さないといけないからな。


「ぷい!」


「ピィー!」


「カウっ!」


モイカ、ハク、リアもスピドラビットに気づいて、すぐに戦う体制をとる。

スピドラビットがどんなことをしてくるのか何も分からないから…、一旦様子を見ようかな。死ぬことはないと書かれているけれど、もしかしたらがあるかも知れないからな。

俺も剣を構えて、攻撃に備える。

こっちはもう戦う準備万端だな。


「……キュイっ」


「…え?」


しかし、スピドラビットは俺たちの方を見ると、すぐに走り出してしまった。


もしかして……スピドラビットってすぐに殺さないといけないモンスターだったりする、

俺たちの方を少しみただけで逃げ出してしまったぞ…。


…って!今はそんなこと考えている暇はない!

どうする…。まだ、そこまで遠くには行っていないから、追いつける可能性はある。特に、リアがいるから、俊足を使ってもらえば追いつくかも知れない。……ただ、俺やモイカ、ハクはそこまで早くはないから、リア一人だけ行かせて、迷子になってしまうということもあり得るかも知れない…。

どうしようか…。



「…あっ!そうだ!」


俺はモイカがとあるスキルを手に入れていたことを思い出す。


「モイカ!リアの匂いって覚えているか?」


鼻の効きが良くなるスキル…嗅覚。

それで、モイカにリアの匂いを覚えてもらって、先に追いかけていたリアのところまで案内してもらえばいいんじゃないかと考えたのだ。

もしかしたら、効きが弱くなって、見失うっていうこともあるかも知れないけど……そうならないように俺も全力で走る。

それに、見失ったとしても、見つけるまでログアウトはしないつもりだからな。


「ぷいぷい!」


「ナイスだ!」


モイカもちゃんと覚えているらしい。

確かに、一緒に戯れあっていたり、リアの上に乗っていたりもしたから、匂いは覚えるか。


「リア!瞬足を使って、スピドラビットを追ってくれ!俺たちもすぐに追いつく!」


「カウ!!」


リアはそう鳴くと、すぐにスピドラビットを追いかけていく。少し、どうしようか考えてしまったから、距離が少し離れてしまったのが悔しいな…。

前もって、もっと考えておけばよかった…。


「……俺たちも追いかけるぞ!」


「ぷい!」


「ピィー!」


考えるのは後だ…!

今は、全速力でリアとスピドラビットを追いかけるしかない。リアを見失わないためにもなっ!


俺たちは、南の森の中を全力で走りはじめた。



♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢



……



「…はぁ…はぁ…。モイカ。リアの場所はわかるか?」


「ぷいぷい」


「そうか…。よかった」


俺は息を切らしながら、答える。


追いかけはじめてすぐは、ちゃんとリアも見えていたのだけれど、途中からはもう見えなくなってしまっていた。

理由としては、リアが速かったのもあるが、こっちの疲れもある。全速力で走っていたからな…。なんなら、途中から疲れていたモイカを手に抱えて、ハクを頭に乗せて走り続けたからな。今も、モイカを手で抱えたままだし、ハクも頭の上で休んでいる。


「モイカ。ハクの場所まで案内してくれるか?」


「ぷい!」


そう鳴くと、モイカは俺の腕の中から地面に降りて、俺たちを案内してくれる。

途中から、モイカを抱えながら走っただけあって、今はもうモイカも元気そうに見える。

…こっちはまだまだ疲れているけど…、そんなことを気にしている暇はない。リアが一人だし、スピドラビットがどうなったのかもわからないからな。


俺はモイカが進んでいく方について行った。




………………

…………

………

……




「……あ!いたぞ!」


俺たちがモイカの嗅覚を頼りに、リアを探していると、花がたくさん咲いている場所にリアがいるのが見えた。

ただ、そこにはスピドラビットらしきモンスターはいない。


「リアー!」


「ぷいー!」


「ピィー!」


「……!カウっ!」


俺たちが叫びながら、歩いていくと、リアもこちらに気づいたらしく、走ってかけよってきた。

…可愛い。


「リア!よかったぞ…無事で…」


俺はそういいながら、リアを撫でる。

たった少しの時間だったけれど、やっぱ心配にはなったよな。もし、ダメージを喰らっていたら…とかね。


「カウ…」


リアも気持ちよさそうだ。


「…リア、スピドラビットはどうなった?」


俺は気になっていた、スピドラビットについて聞いてみる。


「……カウ……」


「…そうか…。見失ったか…」


確かに、スピドラビットの速さは瞬足を使ったリアと同じぐらいだったからな。

それに……


「リア、多分MP切れしてるだろ」


「カウ…」


MP切れ。瞬足を使って、追いかけるのはいいが、それをずっと使っていれば、MPはいつか切れてしまう。俺も走っている時に、そうなることを思い出したから、このミスは全て俺のせいだ。


「ごめんな、リア。リアは何も悪くないからな。悪いのは全て俺だ」


「…カウ…!」


リアはそんなことないと、首を振る。

多分、リアもスピドラビットを見失ってしまったことが悔しいんだと思う。俺も少し悔しいからな。


「……わかった。じゃあ、一緒に強くなろう、リア。次会った時に、絶対倒すためにも!」


「カウっ!」


そう言うと、リアもやる気を出したらしく、元気になる。

俺も強くはならないといけないからな。スピドラビットだけじゃなくて、他の強いモンスターにも勝てるようにね

………ボーンナイトみたいに、あまりにもレベルの差があるモンスターは無理だと思うけど…。


「ぷい!」


「ピィー!」


「もちろん、モイカとハクも一緒にな!」


俺とリアのやりとりを見ていた二人も、一緒になってやる気を出す。

やはり、二人も強くなりたいらしい。

俺たちはまだまだ、レベルも低くて、スキルを使いなれてもいないけれど……、もっとレベルを上げて、強くなっていかないと。



「……それにしても、綺麗な場所だなー……」


俺は、周りを見渡しながらいう。


リアがいた場所には、たくさんの花が咲いており、色鮮やかになっていたのだ。

しかも、それが結構奥の方まで続いている。

ここは南の森で、木がたくさんあるはずなんだけど……、ここはなんなんだろう。


「…もう少し奥へ行ってみるか」


俺はもう少し、奥の方へと行ってみたいと思い、足を一歩前へと踏み出した。



その時……




「……誰ですか。私のお花畑へと足を踏み入れるものは」


「……え?」


俺が足を踏み出すと、女性らしき声が聞こえてきた。そして、声がした方を見てみると……


緑色の長い髪をして、頭に花の飾りを身につけている女性がいた。



———————————————————


花の妖精 ♀ Lv20


———————————————————



「レ、レベル20…!」


ボーンナイトと同じレベルじゃないか…!

なんで…こんなところに…。

それに……、HPやMPも見れなくなっている。

レベルが高いからか……。




ビィー!!ビィー!!ビィー!!


「え…!?なんだ…!?」


女性……花の妖精をみると、いきなり頭の中で警報音が鳴る。


『南の森の裏ボス 花の妖精に遭遇しました。これにより、エリア お花畑から出ることができなくなります』


「……う、裏ボス!?しかも、このエリアから出られないって……」


周りを見渡すと、確かに、お花畑を囲んで、少し透明なガードが出ているように見える。それは、空高くまで伸びていて、上からも出られないようになっている。

……閉じ込められたな…。

多分もう、逃げようと思っても逃げることはできないと思う。


俺は、もう一度、花の妖精の方を見る。


「…私のお花畑を荒らすものは……一人残らず排除します」


向こうもやる気みたいだな…。


これは……



まずいのでは…!?



——————————————————————


やっと人型モンスターを出すことができました…!


そして、文字数が10万字を超えました。

これからも、ゆっくりですが書いていこうと思いますので、引き続き星評価(レビュー)等よろしくお願いします!

もし誤字脱字等があれば、報告お願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る