第25話 お義姉様、私の過去を受け入れる。
まりちゃんはお義姉様にサービスでいちごクレープをサービスであげた。
「水火さんのお姉さんなら、これ、サービスします」
「いいの? 初めて会ったばかりで」
「これからお付き合いすることになるのです。店長ならそうします」
これに私はお義姉様を説得する。
「まりちゃんがこう言ってるのです。ここはありがたく」
「そう……」
お義姉様はこれが信頼というものだと理解した。そしていちごクレープを食べる。
私は感想を聞く。
「どう?」
「おいしいわ」
私もいちごクレープを頼んでお金を払う。まりちゃんの腕は前よりも上達しており、いちごクレープも美味しくなっていた。
「おいしいよ……」
「そんな、まだまだ店長には遠く及びませんし、店長の味にはなりません」
そんな話をまりちゃんから聞いた私は店主がどうしているかを聞く。
「そういえばだけど、店主はどうしているの? 今日はいないの?」
「実は店長は、持病で入院中です」
「そうだったんだ……ごめん……悪い事聞いた」
「大丈夫です。水火さんも気にして当たり前です。もしお時間があったらお見舞いにでもと思います。店長が入院している病院なら教えられます」
「ごめんね。ここまで気を使わせちゃって」
「でも大丈夫なの? 店主もいないのに営業していて」
「はい、店長の代行で娘さんがいます」
「ええっ? 娘さん。店主、結婚していたんだ」
「はい」
すると小学生くらいの少女が奥の部屋から出てきた。
「私を呼んだ?」
まりちゃんが答える。
「いえ?」
「お客さん? 何か用?」
私は少女に話しかける。
「ええと、店主の娘?」
「そうだけど何か?」
「私、ここの常連で来ていた水火」
「ああ、そう。まり、あんたが相手して」
「はい……」
そういって少女は部屋に戻る。私は少女について聞く。
「何なのあの子?」
「店長の娘さんです。お手伝い改め店主代行でして」
「あんな店主で大丈夫?」
「なんか、店長が私の事を正社員として扱うからとか言っていたのですが」
おそらく店主の娘は形式上店主代行で本当の店主代行はまりちゃんだと私は思った。
それでもお店がまともに運営出来ているのはまりちゃんがしっかりしているからだろう。
そんなまりちゃんに見送られ、私とお義姉様は駅ビルへ向かう。
駅ビルへ向かう最中でお義姉様はまりちゃんの事について話す。
「あの子、まともでしっかりしているわね。あんな店をバイトの身分で任されるなんて」
「正社員として扱われているとか聞きましたね。きっと仕事が出来るのですよ」
「ああいう子はうちに必要ね」
「ロープウェイ会社で彼女をスカウトするならダメだと思います。あの子はクレープを作ることで実力を発揮できる子ですから」
「でも、店主代行を任されるということは経営能力があるという事よ。きっと赤沢グループで役に立つと思うわ」
「うーん」
色々と悩む私だが、考えてはおくことにした。確かにまりちゃんのような経営能力を持っている子は赤沢グループには欠かせない。しかし赤沢グループは交通会社や旅行会社がメイン。クレープの腕を磨かせるならそういった子会社の傘下になるだろう。
どうするか、悩むところだ。
そういった考えもある中、私とお義姉様は駅ビルの衣服エリアの階へ行った。
私はお義姉様に感想を聞く。
「どうでしょうか? こういった衣服なんかも悪くはないと思います」
「赤沢グループが経営している交通会社付属の衣服メインの店と比べたら良くないわ」
「そう……ですよね」
無理もない。このエリアにある衣服は若者メインの衣服ばかり。それもストリートにいるギャルに悪そうな男、そしてチャラいカップルといった人専門。
そんな衣服をお義姉様が好むはずがない。それでも私がここを好んでいることは嫌っていなかった。
「でも、あなたが好みそうなものって感じ。かつてヤンキーだったらならこういうお店に行くって容易だったんでしょ?」
「昔はメインの衣服をここで買ってました」
「ここの衣服は安くて学生でも買いやすく、駅ビルにあることからも、あんたがヤンキーだった時に来るのは当然だったのかもね」
お義姉様は私の気持ちを理解してくれて、思わず私は泣いてしまう。
「ありがとうございます……お義姉様……」
「何で泣いてるのよ?」
「それは……お義姉様が優しいから……」
「馬鹿じゃないの? 私はあんたの趣味は嫌いよ。でも、あんたのヤンキー時代のことを考えると否定できなというか」
「素直じゃないですね」
私は泣きながらも笑顔でお義姉様の手をつなぐ。
「ちょっと、そういうのは青葉にやりなさいよ」
「青葉はお義兄様と出張中ですよ、今は私とお義姉様で楽しみましょう」
「これは不倫?」
「女性同士のお付き合いなら問題ないと思います。それに青葉とお義兄様も2人で楽しくやってると思います」
「むむむ~」
お義姉様は悔しい気持ちでこれ以上は何も言えなかった。
私はお義姉様にどんな種類の衣服を買うか相談する。
「せっかく来たのです。何か買っていきましょう。お代は私が出します」
「いや、私はもういいわよ。こういうのは似合うわけないわよ」
強引にお義姉様の衣服を選ぶのも良くないと感じた私は自分だけで衣服を選ぶ。
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