第13話 金の使い道
青葉と結婚したことで、私は本格的に赤沢グループの仕事をやるようになった。
交通会社を見て回ったところ、その中の1つである電鉄関連の電車を運転している人達は皆疲れている。
こういう人達には安らかな時をあげたいもの。ちなみに朝のグループと夜のグループで電鉄関連の会社は成り立っている。そうでもしなければスムーズに電車は動かない。
電鉄関連は必ず一般の客が利用するため潰れることはない、というのは間違い。人身事故に交通トラブル。こういった事が繰り返されれば信用問題にかかわる。
つまり電鉄関連の電車は信頼が第一というものだ。
どの仕事でも一番大事なのはお金を貯めることではなく信頼。人との信用がお金を稼ぐ方法なのだ。
私の家族は嘘の信頼で全てを失った。だから私は真実の信頼で活躍しようと思う。
私は、電車の運転手さんが健康的に安全に運転するにはどうしたらいいかを青葉と相談する。
「この電車って?」
「金川(きんかわ)線だよ。グループで一番の赤字を出していて廃線になるんだけどそれがどうしたの?」
「金川線は電車の本数が多いのに駅数は少ないように思えるよ」
「そう? 5分に1本はいいと思う」
「良くない。そのために多くの人が必要だし、電気代とか電車代もかかっているはず。無駄に労働もある」
これだけの電車が走っているのにそのうちの何本かは終点から終点までお客さんが乗っていないというもの。これでは電車を運行している意味がないというもの。私はそのことを青葉に指摘する。
「無駄な電車は減らして、余った人は人員不足の路線に異動させるべき。あとお昼は1時間に1本でいいよ。お客さんが来るのは朝か夜だけだから」
朝と夜は1時間に4本。昼は1時間に1本として、人数や電車の数、電気代を節約できた。そのおかげで金川線は廃線寸前だったが、何とか黒字になった。
「すごいね水火は。こういう経営はやっていたの?」
「厳しい両親から経営学は学んでいたから」
「でもそれは」
「分かっているよ。表向きの理由で本来は……」
「ごめん、こんな話はするんじゃなかった」
気分は悪くなったが、あえてここは明るく振舞う私。
「なんて……今はこの知識を良いように生かせているからね」
「よかった。ところで、金川線が黒字になった事で、僕も給料が増えたんだ。何か美味しいものでも食べに行く?」
余裕が出来たお金ではあるが、様々な使い道がある。資産家の食事やショッピングは結婚前から楽しめたし、どうせなら、結婚したからこそできる楽しみがいいと私は考える。
「食事は結婚する前でも出来ることじゃん。結婚したんだし、体の……」
「体? どういうこと?」
「あれ? 違うのかな? 結婚したら誰だって赤ちゃんが欲しいじゃん。だからさ……その……」
「う……うん」
青葉は私が何を言っているのか察したみたいだ。要するに体でやりあって子作りしようというわけ。
私はそれを態度で示す。ジャケットを脱いだり自分の胸を揉んだりなど。しかし青葉には刺激的だった。
そのため顔が真っ赤になって倒れそうになる。
「大丈夫? 青葉?」
「うん……大丈夫……それより水火は赤ちゃんが欲しいんだね」
「それは……」
「恥ずかしがらなくてもいいよ。理由は分かってる」
私が赤ちゃんを欲しがる理由は血のつながった家族がほしいから。私の家族は結局愛がなくて最終的には私以外は逮捕で崩壊した。
今は青葉と結婚して赤沢家の家族になれたのがいいところでも血のつながった家族はいない。だから、血のつながった家族が欲しいと思い青葉にこんなお願いをした。
「青葉……私……血のつながった家族が欲しい」
「うん……結婚したならそうだよ。誰だって最初に願うのは赤ちゃんだよね」
「それは分からないよ……でも私は欲しいの。新しい家族が!」
しかし、青葉の言葉は私が期待する言葉ではなかった。
「僕も同じ気持ちだよ。でも今じゃないと思うんだ」
「今じゃないって?」
「僕たちはまだ結婚したばかり。それにまだ僕は触れ合うことになれていない。だから今すぐに水火を妊娠させるなんて出来ない……」
しょんぼりした私。それを見て青葉君が私をデートに誘う。
「そうだ、すっきりすためにデートしよう」
「デート? でも私達結婚してるし」
「結婚したからって出来ないわけないよ。いい場所があるんだ」
青葉は私をそのデートスポットへ連れていく。とはいえ、運転は例の執事で護衛付きなのは変わらない。それどころか増えていた。
「青葉……なんか護衛の人数増えてない?」
「結婚して夫婦になった事が影響しているね」
「お義父様の命令?」
「かもね。お父様は心配性だから」
心配性なお義父様にはあきれるが、感謝はしている。私と青葉の結婚を妬む者が私達を襲う可能性はあるのだから。
話を戻して、青葉と私が向かったデートスポットは花が多い庭園。そこは入場料が有料でその額も1人10万円と高額。贅沢な庭園だった。
それでも青葉は私をここへ連れて行きたかったのには理由があるようだ。
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