第12話 ウェディング その6
私は外を出ると、すでに青葉が白いタキシード姿で待っていた。
「待っていたよ、水火。ウェディングドレス姿、すごく可愛い」
「ありがとう……私、こんな格好をする時が来るなんてないと思っていたから、どんな気持ちになればいいか……なんて」
私は手に持っている花束のブーケで顔を隠しながら青葉と話す。
「いつも通りでいいんじゃないかな? それより、会場にはお父様達が既に席についているよ」
「そうだね……」
私は入場の合図になるまで、会場の入り口で青葉と待った。
一方で会場では、私と青葉の入場を待ってお兄義様とその奥様、私にとってはお義姉様が私と青葉君の事を話していた。
「ねえ、あんた。あんたの弟の青葉さん。小学生っぽいのによく結婚なんて出来たものね」
「そうだな~しかも恋愛結婚だからな~」
お義兄様はこの時点でワインを飲みまくり酔っていた。
「はしたないわよ。会長もいる時に」
「飲まずにいられるかよ! これは一生しか見られない弟の結婚式なんだぞ!」
「はいはい、分かったよ」
お義姉様もあきれてそれ以上は話すのをやめた。
一方で私は緊張していた。結婚式なんて想像もつかない話だし、他の人の結婚式には招待されたことなんてない。
緊張している私に青葉は私に話しかける。
「青葉?」
「もうすぐだよ」
門の先からウェディングソングが流れ、司会の言葉が始まる。
「それでは、新郎新婦のご入場です。皆様、拍手でお迎えください」
盛大な拍手と共に入り口の扉が開く。
私と青葉はゆっくりと歩いて新郎新婦の席へ向かう。
盛大な拍手と私と青葉を祝う声があちらこちらからする。
「青葉様、ご結婚おめでとうございます」
「奥さんもおめでとうございます」
「どうか末永くお幸せに」
「お幸せに」
政略結婚が当たり前の赤沢家だが、そんな中での恋愛結婚ということで多くの赤沢グループの関係者が出席していた。
その中には私の容姿を褒める人がいた。
「お嫁さん、めっちゃ美人じゃねえーか。青葉様にはもったいない」
「そうだな。ああいう女性はイケメンの実業家と結婚すると思った。恋愛結婚で青葉様を選ぶとは面白い方だ」
そんな話を聞く中で私と青葉は席に着く。
そこから、司会が結婚式を進行させお義父様の話をさせる。
お父様はワインを片手に演説をする。
「皆の者、今日は我が息子とその嫁の結婚ということでな。政略結婚ではなく、恋愛結婚だというにここまで来てくれたこと、感謝する」
ここで歓喜の声が上がる。そしてお義父様の話は続く。
「思えば、この次男には政略結婚でさえ結婚する相手などいないと思っていた。しかしまさかの恋愛結婚だ。こんな息子を好む者がいるとは考えてもいなかった。わしは驚いた。この嫁が男らしく土下座して結婚を認めてくれと言ってきおってなあ」
これには出席している人全員が爆笑する。それにより酒が進む人が次々と出てくる。
私は恥ずかしくて顔が赤面になる。
「もう酒を飲むか。まあ仕方がない。わしの一番上の最高責任者も酔いつぶれておるでの。じゃがな、今日主役の我が次男とその嫁はどちらも未成年でな。酔いはほどほどにせい」
このお義父様の言葉で出席者全員が酒を飲むのをやめる。
そしてお義父様は最後の締めの言葉を言う。
「それではの、酔っている者は酔い覚ましの水で、乾杯!」
「「「「「乾杯!」」」」」」
私と青葉も席の机に用意されたサイダーを飲む。
次に酔っていて演説出来ないお義兄様に代わってお義兄様の奥さんであるお義姉様の演説が始まる。
「それじゃあ、夫の里志が酷く酔っているから代理で私が演説をするわ」
お義姉様はスタイル抜群で背は156センチ。赤いドレスを着たセミロングの茶髪で見た目は若く女子高生に見える美人。
「義理の弟さんの嫁さんだけど、美人じゃない。背が高いから私より年上かと思ったけど未成年だったのね」
私は話に入っていいのか分からず黙り込む。
「あら? 声が出ないのかしら? まあいいわ。今日はあなた達が主役だし今日という日を楽しむ事よ」
お義姉様はそれだけを言って演説を終えた。いい人なのか悪い人なのかは分からない。でもお義兄様の奥さんということだから、赤沢グループの最高責任者の嫁という名はグループの中でも女性のトップ。
次男である青葉と結婚した私はグループの中でも暫定で女性ナンバー2だから、きっとどこかで争うかもしれない。そんな予感がした。
お義姉様の演説が終わると、青葉君の生まれた時から今に至るまでの写真紹介や出席できなかった人のおめでとうビデオなどを見て、最後はケーキカットなどを行って無事に式は終わった。
翌日、役所に私と青葉君で婚姻届けを出したことで私は赤沢水火(あかざわすいか)という名前になり、正式に赤沢家の一員となった。
赤沢家の一員になったことで、パーティー以外では青葉と私服で仕事をすることが多い。
赤沢家の一員は私服で仕事OKであるため、そこは私にとって服装のマナーで注意することもないので助かる。なぜならヤンキーになった時から私服が乱れて始めてしまい、それ以降正しく服を着るのが苦手になったから。
そんな私だけど、青葉の嫁として赤沢グループの繁栄のために出来ることをやっていく。
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