第14話 花の庭園
私は青葉にどうして花の庭園に私を連れてきたのかを聞く。
「青葉、この庭園は?」
「綺麗な花が多いでしょ」
「うん……私もこういうところに来るのは初めて」
「たまにはこういう場所に行かないの?」
「私っていつも勉強や習い事ばかりでこういう趣味とは無縁だったから」
「そうなんだ。厳しい理由も分かるよ。でもお金持ちはこうした楽しみも必要なんだ」
赤沢グループは趣味のない努力を重ねた勝ち組だと思っていた。でも青葉には花を見る趣味があったようだ。
青葉は私をここへ連れて行きたかった理由を伝える。
「水火は僕に結婚をしたなら赤ちゃんを作りたいと言ったけど、それをやってしまうと今度は赤ちゃんのことに専念しないといけなくなる」
「うん……でも子育ては私達だけじゃなくて教育係に任せればいいんじゃ?」
「それは良くない。資産家であっても生まれてくる子供には愛を持って接していかないと。水火のような家庭を作らない為にも」
「それって……」
私は青葉の気持ちが分かった。結婚したとはいえ、今は子供の事ではなく自分達の趣味に専念するべきだという事。それに出会ってまだ1年もたっておらずお互いの事はまだ知りえていない。
だからお互いのことを知りつつ、家族との絆を深めていきたい。子供をつくることはその後、考えればいいという事。
「青葉の言いたいことは分かった。でもこの花の庭園に来た意味は?」
「資産家の人間が子供を作れば、教育に専念しないといけなくなる。仕事のことも考えるとここにはあんまり来れない。僕はここで水火と飽きるくらいに来たい。それに女性のほとんどは花が好きってお兄様やその部下達が言ってた」
青葉は私に花が好きかと言っているみたいだ。そんな風に解釈されても困る。嫌いってわけではないが私は今の気持ちを伝える。
「そうなんだ。でも私は花とは触れ合ったことないしそんなに好きってわけでも……興味がなくて」
「分かった。じゃあ、今日は水火が少しでもこの花の庭園を好んでもらえるようにしよう」
花に興味がない私だけど、青葉と一緒に庭園を周っていろんな種類の花を見た。
3時間青葉とデート気分で花の庭園で楽しんだ私は花に興味を持つようになった。
「楽しかったよ、青葉」
「それは良かった。今日の水火を見ていると女の子らしいところが出てきた感じだよ」
「それどういう意味? これまでの私が女の子らしくないとでも?」
「ごっごめん! そんなつもりで言ったんじゃ」
「いいよ、今日は久々に楽しめたんだもん。また明日も仕事だって考えると……やる気が出てくるよ」
「すっかりいい気持ちだね。赤ちゃんはいいの?」
「ああ、そうだったね。確かに赤ちゃんはまだ考えなくていいね。だって妊娠したらあまり外を歩けなくなるし、こういった場所も来れないもんね」
私と青葉は花の庭園を出て執事の待つ車に乗って屋敷に帰った。
庭園のお土産で花を買った。これも3万円くらいする高級な青い花。
ダークな感じが好きな私にとって青い花を部屋に飾ると落ち着く。
ダークだったのは家庭環境とヤンキーだったのが影響しているがそれもまたいいものだ。
私は、夕食の前に屋敷の大浴場へ向かう。メインの広い浴槽の色が紫色だった。
これについて私は大浴場の入り口にいるメイドに聞く。
「ちょっと、大きな浴槽の色が紫なんだけど?」
「はい、こちら青葉様がご提供してくださいましたラベンダー湯でございます」
「ラベンダー? 聞いたことはあるよ。花の基本のやつらしいね」
「花言葉はあなたを待っています。それと沈黙だそうです」
「どういう事?」
「そこから先は分かりません」
「あとで青葉に聞く」
「ちなみに青葉様はプールにおります」
「そう……でも私、今はプールの気分じゃ……」
そっからはメイドも話さなかったがラベンダー湯の浴槽に入り沈黙していると、私はメイドから聞いた花言葉を思い出す。
もしかしてと思い浴槽を出て体を拭いて自室に戻りそこで例の上が黒で下がジーンズの短パン水着に着替えると、私はプールへ向かう。
プールの周りにラベンダーを飾っていたり、プールの水面にラベンダーが浮いていたりしていた。
プールの中で水着姿の青葉は黙って待っていた。
「もしかして……これが」
「そう……メイドから花言葉と僕がここにいることを聞いたんだね。僕は黙ってここで待っていたよ」
私は何が何だか分からないサプライズに困惑する。
「ええと……何が何だかよく分からないよ」
「そうだね、これは水火のために用意した花言葉のプレゼントだよ。周りに飾ってあるのはイングリッシュラベンダー、花言葉は幸福。プールの水面にあるのはフレンチラベンダー、花言葉は期待」
困惑していた私だが、青葉の説明で理解した。青葉は花言葉で私に幸せになってほしいのと、これからの仕事で期待しているというもの。
「嬉しい……青葉は私のためにここまでしてくれるなんて」
「結婚はゴールじゃないよ。妻を幸せにするのは夫の役目だからね」
「うん……でも夫を幸せにするのも妻の役目だから」
「えっ?」
私は思わずプールに入っている青葉に飛び込んで抱き着いた。
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