第8話 ウェディング その2
私と青葉君の結婚までにしなければいけない事、それは身内に私達のことを紹介すること。
おそらく私と青葉君の関係は赤沢グループでは広まっている話なので大して結婚の報告をすることもないだろうが、青葉君のお父様、つまり会長と青葉君のお兄様、里志さんに許しをもらわなければいけない。
結婚式の会場は私と青葉君が正式に婚約をしたホテルにすると決めた。
青葉君は私を連れて里志さんに挨拶と結婚の許可をもらう。
私はホテルの帰りで再び赤沢グループが経営している衣服屋によって、黒いドレスと黒い網タイツ、赤いハイヒールを買った。私は今そのドレスなどを身に着けている。理由はちゃんとした格好で里志さんに結婚を認めてもらうため。
「お兄様、青葉です」
「青葉か? どうしたんだ?」
「お兄様にお願いがあってきました」
「どうした? 今日は婚約者筆頭も一緒か?」
「お兄様? 僕と水火の関係を知っておられたのですか?」
「俺は赤沢グループのナンバー2だぞ。グループの噂は何でも分かっている。特に身内においてはな」
「恐れ入りました、お兄様」
「気にするな。それで、用件は何だ?」
「はい、僕と水火の結婚を認めてほしいのです」
「そんなことか。青葉の婚約者筆頭なんだろ。俺は構わないと思うぞ。ただ、お父様がどう思うか?」
「お父様のご許可は必要ですか?」
「ああ、俺はグループの最高責任者の地位でグループの全ての権利を持っているが、結婚の許可を認める権利はない。それに赤沢家の結婚は政略結婚だ。俺らの母も俺の妻も赤沢グループ傘下の会社の社長令嬢だし、俺の長男にもすでに結婚相手が決まっている始末だ」
政略結婚は古いと思っているかもいれないが、会社相続のために傘下に加わることを条件に社長令嬢と赤沢家の息子達は政略結婚をしているようだ。
つまり、本来私と青葉君のような恋愛結婚は赤沢家では認められないもの。
里志さんは会長にweb会議で会長と相談出来ないか電話で相談する。
そして、里志さんは会長の許可をもらったようで自分のパソコンでweb会議を開く。パソコン画面には会長の姿が映っていた。髪の毛は白髪で短髪。黒くて長い口髭と顎髭を生やした60歳くらいの和服を着た人だった。
面影が青葉君に似ていることから、この人が里志さんと青葉君のお父様であると痛感した。
「聞こえておるかの?」
この言葉に里志さんが答える。
「はい、聞こえております。お父様も聞こえておりますか?」
「ああ、聞こえる。それで里志、お前……酔ってないか?」
「酔っているなど……」
「わしにはしゃべり方がおかしく思える。ごまかしても無駄だ」
「すいません。ビールをグラス1杯分飲みました」
「馬鹿者! 仕事中に酒を飲む奴があるか! 貴様はグループを仕切る者ぞ! 酒を続けるならその座は青葉に譲る」
「ご容赦くださいませ。以後酒は控えます」
「そうか? それで……大事な話と聞いたが、青葉もいるということは跡継ぎを青葉にするとでも」
「ご容赦ください! ここからは青葉がお父様にご相談したきことがあるので、青葉に変わります」
「なんだ? 青葉か? 珍しいのう」
ここで青葉君が会長に話し始める。
「お父様、お久しぶりでございます」
「久しいの、それで相談とは何だ? 赤沢グループの最高責任者ならばいつでもやらせてあげるぞ」
「それはご勘弁ください。私は18歳です。最高責任者など務まりません」
「後見役をつけるが」
「そういう問題ではありません。それに僕がお父様にご相談したいのは結婚のことです」
「結婚?」
青葉君のことで調子に乗ってはしゃいでいた会長の顔色が変わった。ここからが真剣な話だ。
「お父様……僕と、こちらにおります成川水火さんの結婚を認めてください」
しばらく目をつぶって黙る会長。再び目を開いて口を開く。
「成川水火とな。どこの会社の者だ?」
「どこの会社のものでもありません。私が公園で拾い、メイドからはじめ、後に僕の秘書となりまして、その後周りからは婚約者筆頭と呼ばれた者です」
「婚約者筆頭とな? その話はわしも耳にしておる。だが、その筆頭がまさか本気で青葉を
好んでおるのか?」
黙り込む青葉君だが、ここで私が話さないとだめだと思って会長に土下座してお願いをする。
「会長! いえ……お義父様! どうか青葉君、いえ……青葉様を私にください」
どう考えても婿になる男が言うような言葉だが、それを私はやってのける。
「何と……わしのかわいい青葉をもらおうとは。小娘にしては男らしい婚約者であるの。その態度は本気なのかの?」
「はい! 私は青葉様のためなら命を捧げようと、こき使われようとかまいません。お義父様からの過酷な仕事もこなしてみせます。どうかお願いです。青葉様を私にください」
男がやるような私の姿を見て会長、いやお義父様は10秒真顔になると、爆笑する。
「ガッハハハハハ……‼ 面白い! 面白いぞ。そなた、水火といったか。青葉の花嫁としてこのグループで貢献する自信はあるか?」
「どんな仕事もこなします」
「そうか、女でありながら男らしいことをの。よかろう。青葉との結婚、認めてやる」
それを聞いた青葉君はお義父様にお礼を言う。
「お父様、ありがとうござます」
青葉君は疲れてその場で座り込んだ。
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