第7話 ウェディング その1
青葉君との正式な婚約成立はいいにしても、私はまだ15歳。誕生日まであと2ヶ月あるし、それまでは結婚準備というわけ。
婚約の証として、私は婚約指輪をつけられた。赤い金属の指輪。青葉君は青い金属の指輪をつける。
それから私と青葉君でプールを楽しんだ。
青葉君は泳げないようだったが、私が泳ぎ方を教える。
「こうやってバタ足をすれば進むよ」
「うん」
「こうやって手を回せば沈まないよ」
「うん、ありがとう。教えてくれて」
私は厳しい家に生まれたためか、小学生の時から勉強とスポーツは得意で当たり前というものだった。
その知識を運動が苦手な青葉君に教えることが出来て良かったと思ってる。
プールでしばらく泳いでいたら疲れてたので、私と青葉君はそれぞれのデッキチェアで寝っ転がる。
起き上がればそこは街中のビルや建物のキラキラした風景を見渡すことが出来る。
「綺麗だね」
私は町の綺麗さについこんなセリフを言ってしまう。すると青葉君がこんなセリフを返す。
「そうだね。でも、水火の方がもっと綺麗だよ」
ドラマとかでこういうセリフを返すカップルの男子は聞いたことある。でもいざ実際に言われてみれば恥ずかしいのと、冗談だって思ってしまう。
「綺麗だなんて……そんなことないって。あの街中の眩しさには私なんて大した輝きはないよ」
照れてしまう私を青葉君は見て微笑む。
「冗談だって思う?」
「それは……」
「僕は恋愛っていうのが分からないから、どうしたら水火に僕の気持ちを理解してもらえるかなんて分からない。だから、間違っていたり恥ずかしいセリフだったとしても、僕は水火を褒めることしか出来ない」
私は青葉君の気持ちを理解して右手の人差し指で青葉君の唇を当てる。
「気にしてないよ……私も青葉君という赤沢グループの御曹司と結婚なんて考えてもいなかったから、どんな恋愛をしたらいいかなんて分からないよ……でも……」
私は緊張のあまり思わず泣いてしまう。そんな私の気持ちを察してなのか青葉君が私の右手を両手でゆっくりと握る。
「気にしなくていいんだ。僕には水火しかいないんだ。水火が泣いてしまうのは僕のことを思ってくれているから。僕が御曹司だからとか、命の恩人だからとか、そんなんじゃない。僕のことを1人の男として見ているから」
「そんな……私はそんな……」
「本音を言ってほしい。僕のような小学生っぽくみえるけど、実は年長でかっこいい物静かなタイプ。それが水火の好みなんでしょ」
他の男であれば、私はそんなことを言ってきた男を殴って暴言を吐いて去っていったところ。
でも、今の私は青葉君に言われたらそんなこと出来ない。出来るはずない。青葉君はきっと私に嫌われるかもしれないと思い勇気を出してこんな失礼なことを言った。
目を見ればわかる。困った顔で私に涙目を見せている。私も泣いているけど勇気を出して青葉君の気持ちに答える。
「そう……私はそういった男性……が好みなんだ……妹は嫌いだったし、青葉君みたいな私の気持ちが分かってくれるような兄か弟が欲しかったんだ……」
これが私の気持ち。嘘かと思うかもしれないがこれは本当。中学になって妹に散々馬鹿にされ、両親からも出来損ないとして扱われた私だからこそ、現実逃避で兄か弟がほしいと思うようになり、さらにストレスを発散させるためか悪仲間Aさん達と絡んでは悪さばっかりした。その結果ヤンキーとなってしまった。
私は本音を話し終えるとこらえきれずにしゃがんで青葉君に抱き着いて号泣する。
青葉君は私の頭を撫でながら私の思いに答える。
「僕は水火が思うようなお兄ちゃんだとか弟にはなれない。僕は背が低くて水火は背が高い。だから他の夫婦やカップルと比較したらおかしな目で見られるかもしれない。だけど、何があっても水火に苦労はさせない。僕が力になれることがあれば何でも言ってほしい」
私は落ち着いて泣き止むと、涙を拭いて青葉君を見る。
「青葉君、私のお願い……聞いてくれるの……」
「もちろん、何でも出来るとは言えないけど、出来ることなら何だってやるよ」
「じゃあ……私の家族の事……結婚なんてことになったら、きっと私のお父さんとお母さんと妹が……」
泣きそうな私を泣かせないために青葉君は私の背中を左手で撫でながら、私の涙を右手で拭く。そして話始める。
「水火の家族の事だね。大丈夫、僕に任せて」
結婚となれば私の両親や妹が黙っていないと思い私は青葉君に相談した。私の両親はきっとこの結婚を許さないだろうと思う。何しろ私はヤンキーになったのだから。一度家族の期待を裏切りヤンキーになった娘が御曹司の妻など面白いはずがない。
それにヤンキーとなった私に用心棒を雇って私に危害を加えるほどのことをする両親だ。
青葉君が私と結婚すれば、青葉君やその周りの人にも危害が及ぶかもしれない。それが私にとっての一番の不安だった。
「どうして……そこまでしてくれるの……」
「決まってる。僕は水火の事が好きだから」
そういって青葉君は私の唇にキスをした。
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