第3話 お仕事で大出世
ドレスの格好となり髪を整えた私は、青葉君と一緒にお兄さんの部屋へ向かう。
そこはお屋敷の領主の部屋。青葉君のお父さんである赤沢グループの会長は別荘で満喫しているようで主なグループの長としての仕事は全てお兄さんが行っているようだ。
そのおかげでグループの経営は順調だと思われていたが、部屋に入って見ればそんな感じには見えなかった。
お兄さんは会社のお偉いさんを部屋に呼んでは昼間だというのに宴会をやっているようだった。
お偉いさんと言ってもお兄さんと同年代の若者ばかりだった。
部屋に入った青葉君がお兄さんを説教する。
「お兄様、部屋に入って見れば宴会ですか?」
「おお、青葉か~。お前も飲め!」
「僕は未成年です。それよりお酒はお控えください。それに昼からお酒など仕事に影響します」
「これが飲まずにいられるか。偉い立場っていうのは、お前が思っている以上に大変なんだぞ。下の者の機嫌とか、グループの見回りとかな」
「だからといってこんな宴会をやってまでお酒を飲むものではありません。それに今日は大事な話があるのです」
「なんだそれ?」
青葉君は私を紹介すると、メイドとして私を雇っていいかをお兄さんにお願いする。
「お兄様、いかがですか?」
「いいんじゃねえの。それにしてもお前が女引っ張ってくるなんて、幼児が気の強そうな女子高生誘拐ってか。信じられねえわあ」
お兄さんはそう言って会社のお偉いさんたちとゲラゲラ笑っていた。お兄さんたちはお酒が回っているせいで思うように青葉君と話が出来ない。
青葉君と私は「失礼いたします」と言ってお辞儀をして部屋を後にする。
「ねえ、青葉君……本当にあの方がお兄さん?」
「そうなんだ。赤沢里志(さとし)。会長であるお父様からグループを託されたばかりにプレッシャーで……だから休日とか仕事がない時はああやって仲の良い会社の若いお偉いさんを呼んでは夜まで宴会しているんだ」
「うわあ……マジ……」
私はついドン引きして本音が出てしまった。そんな悪い顔は青葉君をがっかりさせる。
「そうなんだよ。お兄様の体調も心配だし。お子さんで僕から見て甥っ子も幼いから、後を継いでいいものかと」
そんなことを聞いた私は青葉君を慰めるために謝る。
「ごめん……そんなこと知らなくてドン引きしちゃって。お兄様はこれからご主人様になるお人なのに」
「大丈夫だよ、あと水火さんのご主人様はお兄様じゃなくて僕」
「あのさ、私をメイドにするなら私の事は呼び捨てがいいんじゃない?」
「すっ水火?」
「うん……」
「じゃあ、僕のメイドさん達や執事達に会いに行こうか、水火」
私は青葉君のメイドさん達や執事さん達に自己紹介され、メイドの1人から仕事を教わった。そのメイドさんは私にドレスを貸してくれた人。
最初は何をしていいのか分からない私だったけど、お茶入れに掃除。青葉君のお世話に宅配の荷物運びといった雑用を行っていた。
もちろん、接客業もあって客間に通す仕事もあった。
こういった雑用は私に向いている仕事ばかりだった。かつて私は実家でこのような雑用を幼い時からやらされていた。
そのためメイドの仕事は慣れていた。
テストで満点を取ることや雑用、完璧主義の両親に育てられた私にとってはメイドの仕事は簡単なものだった。
接客の時は敬語が使えずコミュニケーションをとるというので不慣れだったが、そこは青葉君がフォローしたし、こういった慣れない事でも繰り返すたびに少しずつ慣れていった。
また、私は屋敷に住み込みで働いていたため青葉君と一緒にいる時間が多かった。
そのためか私はわずか1ヶ月でメイド長となった。
私に積極的に仕事を教えてくれたメイドさんも私を敬っている。
だが、それでは心もとないということで基本的なメイドの指導などはそのメイドさんに任せ、基本的に私は青葉君のお世話係となった。
それから私と青葉君は常に行動を共にするようになり、青葉君は私に重要なことを相談するようになった。
例えば、赤沢グループの交通会社の社長の話だ。
「水火、この前の交通会社の社長の提案なんだけど、どうすればいいかな?」
「私は交通とか電車関連には詳しくない。でも赤の島線の路線拡張は私も賛成かな」
「どうして?」
「今後の事を考えると、拡張範囲内の町の人達って通勤や通学で行動することも多いじゃん。それを短時間で削減することは大事だって思う」
「そうなんだね。分かったよ。それじゃあ交通会社の社長にはそんな風に言っておくよ」
このような感じで仕事面でも私は青葉君から頼りにされていた。
メイド長というよりは秘書だった。
しかも、私は仕事でもメイド服ではなく私服を許された。
とはいえ、お金はメイドとしての仕事で結構ため込んでいるが私服がない。
そこで私は休日に、私の私服を見てもらうため青葉君を買い物に誘うことにした。
青葉君に助けられてからは、基本休みの日でも青葉君と行動していた私でも、プライベートでお出かけするとなっても青葉君と一緒がいい。つまり青葉君とデートがしたい。そんな風に思っていた。
この時の私は青葉君を完全に恋愛対象として見ていた。
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