第二章
一つの王国といってもいいぐらいの発展規模、黄金を身にまとった人々はその王国をきれいに照らしていた。
日本が現在復旧活動を行っていて都市部が回復しつつある中、なぜこの街はこんなにも発展しているのだろうか。日本の都市、東京と同じくらいといってもいいだろう。
周りにはビルが立ち並び、スーツ姿の人や私服の人まで様々。門をくぐった近くにはこの街の一番大きいであろう駅があった。
その駅の前には昔の面影を思わせるスクランブル交差点があった。おそらくここは渋谷をモチーフとしているのだろう。
飲食店や雑貨店、学校にショッピングセンターまである。
そして何よりも金化人種の人しかいないので太陽の光が黄金で反射されて街が眩しい。
建造物は日本のものだが、日本ではないような感覚がした。
俺は旅の疲れで腹が減っていたので近くのファストフード店に入った。そう、それは誰もが見慣れた文字の店だった。
(ここにもマクドナルドってあるんだな)
「ご注文は、何にされますかぁ?」
この店員からは動揺と怒りがわいているのが見える。
注文をしている最中、人々の視線が俺を刺してくる。金化人種の街によそ者の俺が入っていたらそりゃ警戒するよな。
「チーズバーガー2つとコーラで」
俺はそんな視線の中注文を終わらせた。
どこで食べようかと悩んでいた時、近くによさげな公園があったのでそこで食べることにした。
公園には小学生ぐらいの子どもしかおらず、俺に疑いの目線を向けることはなかった。
肌触りのいい風が俺の頬を伝う。
チーズバーガーを食べていたらボールが飛んできた。
「すいませーん、取っていただいてもいいですかー」
俺は少年にボールを投げ返した。
「ありがとうございます!」
気持ちのよい謝礼が俺の疲れた心を癒した。金化人種の人たちがここで安全に暮らせるならここから出なくていいのではと思ってしまう。
だがそのままではいつまでたっても金化人種の差別は終わらない。
いろいろなことを考えていて大事なことを忘れていた。俺はこの街の一番偉い人に会いに行くんだった。なので聞き込みすることにした。
「あのー、ここの区長のことなんですが...」
「ちっ」
舌打ちされた。仕方がないであろう、よそ者がこの街の区長に会いたいなんて怪しいにもほどがある。
俺はその後も聞き込みをした。聞き込みをしている最中、「近寄らないで」や「あっちいけ」だの「死ね」とまで言われる始末。本当によそ者を憎んでいるのだと痛感した。
日が暮れそうな時間になった。次の人で最後にするか。
俺はベンチに座っていたおじいさんに話しかけてみた。
「すいません、この街の区長のことについてなんですけど...」
今回も軽くあしらわれると思っていた。だが、
「ああ、市長のことですか。それなら区役所にいたり、街の保育園にいたりしますよ」
なんと、今回は答えてくれたのだ。
「区役所に区長との面談を希望すれば、区長の時間に合わせて会えますよ」
「ありがとうございます...」
なんでこんなよそ者の俺なんかにこんな親切に答えてくれるのだろう。
「俺、よそ者ですけど、なんでこんなに親切にしてくれるんですか?」
「よそ者といっても同じ日本人です。差別をしていたら私たちも差別をしている人たちと同じになってしまいますからね」
なんと懐が深いおじいさんなのだろう。
「第一、危ない人だったらこの街には入れませんからね」
そうおじいさんは小さく笑いながら言った。
それからおじいさんに感謝の言葉を残し、俺は去った。
聞き込みをしていたらいつの間にか7時になっていた。俺は近くの宿に入った。
空いてる部屋がないか聞いた瞬間、
「すいません、お引き取りください」
「えっと、部屋がないということですか?」
「まあそういうことで」
ここまでよそ者に厳しいとは。宿なで追い返されるなんて。
俺は仕方がないので野宿用のテントを公園に敷き、夜を過ごした。
翌日
「...い、おい、起きろ、起きろっつってんだろ!」
その怒号で俺は目を覚ました。
「はいなんでしょうか」
「ここは野宿禁止ださっさと出ていけ」
本当に冷たいな、宿で追い返されたんだからここで寝てもいいだろ。
肌寒い風が吹く早朝、俺は区役所を目指した。
といっても区役所がどこにあるかなんて俺にはわからない。聞き込みをしようにも通勤の人たちばかりで話しかける余裕もない。昨日みたいな親切な人がいるとも限らないし...
現在午前8時、昼ぐらいになるまでこの街を散歩するか。今後の目標のためにもこの街を見て勉強しないと。
まずは街のショッピングセンターに入った。どこから仕入れてるのか、どこで育ててるのかわからないものばかりだ。
そして一つ気づいたことがある。それは物価がめちゃくちゃ安いことだ。
そして消費税がない。この街はどうやって動いているのだろう。俺は情報を集めるために本屋に寄ってみた。
いろいろな本があるなー。そこでひと際異彩を放つ本があった。
「Re・ゼロから始める金化人種の世界?」
何か聞いたことのあるタイトルだがそこは触れないでおこう。この本にはこの街がどうやってできたのか、どう運営してきたのかというメソッドが書いてあった。
そこで一番驚いたのがこの街はまだ5年しかたっておらず、区長がまだ25歳だということだ。25歳ということは俺と7歳しか年が離れていない。
区長の名前は如月一。趣味はこの街を散歩だという。いかにも区長という感じがする。
ほかにも本があるので見てみることにした。
「平均年収700万!?」
人口が国よりも少ないということを考慮してもかなり高い。仕事の分布は、建設業の割合が一番多く、次にIT関連の仕事だそう。
(そりゃ5年でこんな大きな街が出来上がるんだから建設業の仕事が多いんだな)
しかもこの街はまだ拡大しているという。そのうちに本を飲み込んでしまうのではないかと思うくらい、インパクトがすごかった。
本屋での情報収集も終わったことだし次は区長が回っている保育園でも行ってみるか。
保育園といってもただの保育園ではない。この街で一番でかい保育園だ。区長はここをよく見に来るらしい。あわよくば区長にも会えたらなと思いながら足を運んだ。
ここの保育園はこの街の中心街のすぐ近くにあり、大通りにそいって静かにたたずんでいた。
(なんかやたらとでかいなこの保育園)
そう、とにかくでかい。園児に配慮し2階建てになっているのはもちろん、円形になっていて遊具がたくさんある。門もでかい。
本に書いてあったが子どもを大切にという区長のスタンスで保育業界や育児世帯にはものすごく力を入れているという。
金化人種の大人から生まれた子どもはいつ金化人種の症例が現れるかどうかすらわからないので、厳重に守っているのだそう。
そして一番の要因は子どもの金は大人の3から4倍ぐらいの高値で取引されるほど純度の高い金なのだ。
狙われないために保育園の設備は完ぺきで、ここ5年犯罪が0だそう。
と、ここまで保育園の設備について語っていたがここの保育園少し門が開いているな...
園児が出てきでもしたらどうするんだ。なんて思っていたら園児がひょっこり顔を出していた。
今は11時50分、ちょうどお昼時間なので遊んでいる最中に出てきてしまったのだろう。
かわいいなあと思ったその瞬間、園児が道路に出ようとしている!しかも奥から車が走ってきているのが見える!
俺は条件反射で反対の歩道のほうに向かって走り出した。子どもを突き飛ばしてでもはねられるのを阻止しなければ。
俺は全速力で走った。
(やばい、間に合わないっ...)
車が迫ってきている。俺は反対側の歩道に飛び込みながら手を伸ばし園児を歩道に倒した。
その瞬間急ブレーキとともに俺は車にはねられた。
子どもが大泣きしているのが見える。幸いかすり傷だけでそれ以外は無事だ。
子どもの泣き声につられて先生たちが飛び出してきた。子どもの安否を確認した後俺に近寄ってくる。
そこからの記憶は全くない。
(知らない天井だ...)
目が覚めると病室にいた。体中が痛い。そうだ俺この前はねられたんだった。
幸いなことに生きている。横を振り向くと知らない男が椅子に座って寝ていた。
「ん...あ!目が覚めたんですね!よかったぁ...」
「あの、あなたは?」
小さな声で俺は言った。
「申し遅れました、区長の如月澄香と申します。この度は我が園の園児を助けてくださり誠にありがとうございます」
深々と頭を下げた。
「え?区長?なんで?」
「私直々にお礼を申し上げたいと思いまして」
なんとこんなところで区長に会えたのだ。命をはった甲斐があったってもんだ。
「近くの防犯カメラで見させてもらったところ、子どもを助けていただいたのが確認できて、最初は不審者だと思ってしまって申し訳ありません」
不審者と思われるのも仕方がない。なにせ子どもの金化人種は貴重で高値で取引されるのだから。
「目が覚めたばかりで申し訳ないんですけれど、あそこで何をされていたのですか?」
俺はただ保育園を見に行くついでに区長に合えれば、なんてことが通じるのか不安になってきた。
「この街の一番でかい保育園が気になりまして...ついでに区長にもお会いしたく...」
「そのようなご用事で」
よかった、通じたみたいだ
「私、よそ者ですけど大丈夫ですか?」
「大丈夫も何も、我が街の宝を助けてくださったんですから!」
これで堂々と区長とお話ができる。
「それで私に用事とはどのようなご用件で」
「ああ、そのことなんですがまた後日改めてうかがってもよろしいですか?」
「もちろんです!いつでもお越しください!」
今は少し一人になりたかった。そして区長が部屋から出ていった。
今ものすごく複雑な心境だ。だってここまでしないとよそ者の俺は信用得られていなかったからだ。金化人種と普通の一般人が普通に暮らすためにはどうすればいいのか...
俺が命を張って手に入れた信用を生かさなければ。俺は体を動かそうとした。だが
「いでででで!」
体に激痛が走る。
「だめですよまだ動いてはいけません!」
そのあと看護師にきつく叱られた。
この街に2日いて気づいたことがある。それは子ども以外本当に金化人種の人しかいないのだ。一人ぐらいはいてもおかしくないだろうと思っていたが、本当に一人もいないのだ。
それにこの街の莫大な資金はどこから集めているのだろう。
俺は一つの答えにたどり着いた。この街の運営費を金化人種の死人の黄金を取引して賄っているのではないのかと。
だが、国に同じようなことをされて怒っていたのに同じ手法を使うとは到底思えない。やはり区長と話し合ってみるしかない。
それから3日後、俺は区役所に足を運んだ。
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