第11話 おとみ武蔵と戦う
その付近で醬油とワサビを入手出来て野営の時
イカ刺身を作った。適度な大きさに胴を切り分けて
皮を剝く、実が厚いので細く薄く切っていく。
厚さにムラが有るのはご愛嬌。わさび醬油で頂く。
「美味いな甘みが有ってのどごしも
「こりゃ、食いごたえがあるぜ」
3人の前には清酒が用意されてある。
おとみは氷魔法と風魔法と結界魔法を組み合わせて作っておいた
イカの一夜干しを、故郷の村を出るときに爺ちゃんから貰った
七輪に炭火を起して金網の上で炙っていた。
「う~ん、これこれこの匂い」
一夜干しは予想以上に味が濃く、分厚いクラーケンの嚙み応えが
凄く楽しい。
「これも炙ってみよう」
おとみの中の登美枝が記憶の中にあったイカのポッポ焼きの
甘じょっぱいタレを生のイカに塗って焼いてみる。
「おおー、これまたうまい!」
『俺はポッポ焼きの方が好きだなこの焼けた匂いが食欲を増進
させるぜ」
「しかし、おとみちゃんよくこんな料理を知っていたな」
「う~ん、良く解らないんだけど、食べたいと思ったら
自然に作ってしまっていたの。えへへ」
お酒の美味さを知ってしまったおとみは、ぐびぐび、パクパク
飲み食いしていく。気が付いたら男二人はいびきをかいて爆睡
していた。
一応断っておくがニッパン国の成人は15歳で有る。
この夜の後おとみは
【蟒蛇(うわばみ)おとみ】の二つ名を頂くことになった。
次の日の朝、二日酔いの男どもと引き換え、けろっとした顔で
後片付けをしているおとみがいた。
「お早う、才蔵、佐助。今日もいい天気だよ。」
「うう、お早よう元気だなあ」
「おはよう悪いな後片付けひとりでさせちゃって……」
「なあに、いいってことよ」
おっさんが言いそうな台詞を可愛らしい声で言われると
ほっこりしてしまうのだ。
尾阪の町を目指して旅を続ける。
途中で道が途切れて砂浜を歩くようになった。
砂に足を取られながら進む。
「キャー!」
女性の叫び声が聞こえる。
おとみはすぐさま駆けだした。
一人のうら若い女性を、むくつけき男共が取り囲んでいる。
「へへへ、観念しな!お前はもう越後屋さんの妾になるしか
無いんだよ!」
「嫌、絶対に嫌ー!」
「ケケケ、ジタバタするねえ!」
と、女性の身体を抱きすくめようとするでっぷり腹男の手が
おとみの手によって搾り上げられた。
「いててて、
「野郎どもやってしまえ!」
ヤクザらしい男どもがおとみに殴りかかるが、
ちぎっては投げちぎっては投げ。全く間に海に
放り投げられていた。
「せ、先生、おねげえいたしやす。
このアマ、痛い目に遭わせてやって下せえ」
「なんだ?情けない野郎たちだな。こんな華奢な小娘1人に
いいようにあしらわれやがって恥を知れ」
「面目ねえ。けれどこいつとんでもねえアマでっせ、先生の
ヤットウで懲らしめてやって下せえ」
「任せな」
用心棒らしい男はギラリと普通より長い刀身の刀を抜いた。
「ありゃ随分抜きにくそうな刀だね」
おとみは吞気に言った。
「でも腕の方はそこそこ有りそうだから、油断できないね」
短刀を左右の手に持ち、構える。
用心棒が上段から刀を振り落とす。そのまま
左から右に横なぎしょうとするので
上に飛んで脳天に右手の短刀を振ると避けられた。
そのせいで髷の元結いが切れて、用心棒の頭が
落ち武者のようになった。
「ぷっ。ごめんねあんたが避けるからだよ」
「避けなきゃ頭を切られてていただろうが!許さん!」
長い刀を振り回してもおとみの身に掠りさえしない。
「うむむ、ちょこまかと動きおってじっとしてろ」
「やなこっった」
才蔵が女性の護衛に着いたのを確認したおとみは
今迄の倍以上の速さで用心棒に攻撃する。
みるみるうちに男の着物の腕や胴が切られていく。
「もはやこれまでか。かくなる上は……
参りました。命ばかりはお助け下さい」
用心棒は秘技【命乞い土下座】を繰り出してきたのだった。
「いやー、あんたは本当に強い!お名前を訊かせてもらっても
宜しいだろうか。」
「私はおとみだよ。あんたは?」
「佐々木武蔵と申す」
「あんた、そこそこ強いんだから用心棒なんかやめて
どっかの家臣にでもなったら?」
「うむ。真剣に考えてみるよ。世話になったな、さらばでござる」
念の為に言っておこう。この佐々木武蔵という男は、
決して宮本武蔵とも、佐々木小次郎とも、一切の関係が無い
事を。
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