第8話 海の町に行く
「そろそろホーンラビットの毛皮とか魔石を
売りにいきたいなあ」
おとみがいった。
甚兵衛さんに、毛皮のなめし方を教わって、
「うん。これなら売りもんになるぞ」とお墨付きを貰った。
その位の出来の毛皮が100枚出来た。
この世界の貨幣価値も知りたくて、甚兵衛さんに町へ
連れて行ってとおねだりしている。
「儂は暫く家を留守にできないから佐助か才蔵に連れて行って
貰いなさい」
「はい」
おとみは庭に出て赤い
『用事が有るから来て欲しい』の意味の狼煙だ。
「おとみちゃん、何か用?」
「なんだ?腹減ったか?」
恐ろしく早く佐助と才蔵がやって来た。
ストーカーでもしてないと来れなそうな早さだ。
「毛皮を売りたいので町に一緒に言って欲しいの」
「いいよ」「いいぞ」
間髪入れずに返事が返ってきた。
(2人ともすっかりおとみちゃんの虜だな)
甚兵衛は思う。
「道中気をつけてな。落ちてるものを拾い食いするんじゃないよ
。知らない男にホイホイ付いて行くんじゃないよ」
「嫌だなあ、そんな事しないよフフッ」
((どっちもしそうだから心配なんだよなあ))
おとみは信用されていなかった。
近くの町は東の海のある町か南の山に囲まれた盆地の町か、
だけだった。
盆地の町だと毛皮なんて二束三文な気がして海の町に行くことにした。
そこなら
その町まで通常歩いて5時間掛かるところだがおとみ一行は
3時間で着いた。本来なら2時間で着きそうなのだが、途中
「おとみ、お地蔵さんのおにぎりを盗んじゃ駄目だよ」
などということが有ったので少し時間がかかったのだ。
「お魚焼く匂いだ~」
「待て待て食堂は用事を済ませてからだ」
「ええ~仕方ないなあ」
天真爛漫というか、自由奔放なおとみの行動に悩まされながらも
才蔵は目的の店に連れ行くことに成功した。
「ほほうこの毛皮はあんたがなめしたのかい?
「ええ」
「うん、いい出来だ。丁寧な仕事をしているね。毛の艶も良い。
1枚千円で買おう」
おとみは才蔵たちの顔を見る。才蔵も佐助もうんうん頷いている。
「100枚有るけど大丈夫?」
「お、それは貯めたものだな。見てみよう。で、どこに置いてるのかな?
「ここよ」おとみは収納空間から取り出した。
「わ!どこから出てきた?」
しかしどれもこれも良い出来だ。あんた
これ程のものをほかの店に売られても困る。100枚全部で11万円
で買うよ」
「え、いいの?110枚分の値段だよね。損しない?」
「計算も早いなあ。いいよその代わりまた貯まったらうちの店に
売っておくれ」
「うん,分った」あとこれも見て欲しいんだけど……
おとみは月の輪熊(つきのわひぐま)の毛皮を取り出した。
「わああ!これまた凄いのを出してきたなあれ?頭が無いな」
「えっとね甚兵衛さんが頭の剝製を欲しがる人もいるだろうからって
そのまま持ってきたの。私も甚兵衛さんも剝製は作れないから
専門家に買って貰った方が良いだろうってね」
おとみは、新鮮な【月の輪羆】の生首を取り出した。
「ぎゃっ、これは凄い。まるでついさっき倒したばかりのような
新鮮さだ」
「うん、収納空間に入れとくといつまでも新鮮なままなんだよね」
「あんたうちで働かないかい。給料弾むよ」
「うーん、まだこの町の事知らないし……別のお店にも
行ってみたいし……」
「もしその気になったら是非とも来ておくれ待ってるよ」
「うん。その気になったらねで、この熊はどうかしら?」
「買わせてもらうよ毛皮が150万円、首が20万円でどうかな?」
才蔵達はうんうん首を縦に振っている。」
「じゃあそれでお願いします」
「あいよ。はい、181万円ね。またどうぞ」
毛皮屋の店主はホクホクしていた。売りようによっては
600万から800万円で売れる代物を仕入れることが出来たのだ。
「おーい卯之吉、ちょっくら剝製師の為蔵さんを呼んできておくれ
一世一代の仕事をうけて欲しいって言ってね」
「へーい」
おとみたちは
こっちもホクホク顔である。
(これだけあればどれだけの料理、食べれるかなあ)
ぶれないおとみだった。
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