第18話 私が私になったわけ
私が私になったわけ
私はもともと普通の女の子になりたかった。可愛いものが好きで、可愛いのに憧れて、みんなと可愛いって言い合う。そんな女の子になりたかった。それでも、親は違った。
「アンタは完璧でいなさい。そうすれば自然と人が寄ってくるから。」
「勉強さえ出来ればどうとでもなる。友達付き合いなんかほっとけ。」
何かある度にそう言う。私が1個でも平均点以下を取れば叱責されるし、再テストを受けた日の晩ご飯はなかった。
次第に家に籠って勉強することが多くなり、昼間の授業で寝てることが増えた。うちの学校はテストさえ良ければどうとでもなる学校だったので、テストの点だけ良かった私はそこそこの成績をキープする。が、誰からも頼られたり、話しかけられたりすることはなかった。
私がひとりぼっちだと気づいたのは体育の授業のときだった。久しぶりにペアを組むことになって、私はペアになってくれそうな子を探した。そして、私にペアは出来なかった。話しかけようとしても言葉が出てこない。喉につまって、汚物になって、胃の奥へと落ちていく。
こうして友達作りに失敗した私は、前にも増して家に籠って勉強することが多くなった。時間があれば勉強をして、風呂でも平家物語の暗唱や枕草子の暗唱。湯気で曇った鏡に数学の公式を書き連ねては、問題集の問題を頭の中で解いていく。絶対いい学校に入って見返してやろうって。そう思っていた。
現実とは残酷なものだ。第1志望の高校には落ちて、滑り止めで受けたこの高校に入学。親からは見放され、3年間暮らしていける額のお金と新しい家の鍵だけ置いて消えていった。
両親にとって私はそれくらいの存在だったのだろう。所詮、自分の言いなりになってくれる人形で、思い通りにならなかったら捨てる。それくらいの価値にしか見えていなかったのだろう。
そのときはどういう感情だったのか覚えていない。ただ泣いた。悔しくて、嬉しくて、悲しくて、楽しくて、寂しくて、虚しくて、笑いそうで泣いた。嗚咽と笑い声が混ざったあの声は今でも耳に残っている。
それからは普通の女の子に戻ろうと努力した。けど、私は変わらなかった。変えられなかった。そして、両親が私にくれたのは、『昼間起きられないこの体』だけなんだと。
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