第13話 変わったこと
そんな週末が過ぎた週明け、いつも通りの学校だ。
「おはよう」も言う相手がいない俺は静かに席につく。今日の授業の用意をして、読み進めているラノベを読み始めた。
「昨日は楽しかったね。」
「いやぁ〜、あれはおもろすぎたわ。」
クラスの陽キャ共はどこかに行ったんだろうか?昨日のことが随分と楽しかったらしく、朝っぱらから元気に騒いでいる。まぁ俺には関係ないことだ。そんな話をしているよりはこのラノベの方が10倍は面白いし。
「ギャハハハ」
「アハハハハ」
だから五月蝿いっつうの。その声を聞いてるとこっちの気分が悪くなる。俺の時間に侵食してこないでくれ。
そんな光景が始業ギリギリまで続きチャイムが鳴る。さっきまで騒がしかった陽キャも静かに自分の席についた。授業を受ける体制ができたところでやってくるのが、俺の隣の根森さんだ。
「おはよ。」
「おはよ。」
自分の机にカバンを置くなり、気だるそうに準備をするのはいつも通り。その割にはきちんと準備しているのもいつも通り。ただ、一つだけ違うところがあった。
「今日は予習してきてないん?」
「そそ。たまにはちゃんと授業受けようと思って。」
「どういう風の吹き回し?槍でも降るん?」
「冗談も度が過ぎると相手を傷つけるだけになるからな。」
「珍しく真面目だ。」
「卸すぞ。」
根森さんは筆箱からハサミを取り出すと、ニヤリと笑って俺の方を見る。「まあ、嘘だけど」ってセリフもちゃんとセットだ。
「もしかして、友香たちと遊んだから、予習する暇なかったん?」
少し心配になって聞いてみる。もしそうなら、お願いしていたこともやめないとな。
「んーん、違う違う。ただ単にもうそろそろ内申稼いどかないとって思っただけ。ほら私、ずっと寝てるし。」
根森さんはメガネをかけながらノートを開く。そこは真っ白なまんまで、いつもと違う光景だった。筆箱から取り出した薄い水色のシャーペンをくるっと回して、今日の日付だけを先に書き込んでいる。
「そんなに私を見て、どうした?」
「ほんとに予習してきてないんだなって思って。」
「まあ、いつも沖田に頼りっぱなしだったしね。たまには自分のことは自分でしないと。」
メガネをくいっと上げて答える。こんなラフな感じの雰囲気でも様になるのが根森さんだ。
「寝てても起こさないから。」
「寝ないよ。誰かさんと違って。」
皮肉交じりに言ってみるが、自覚があるからか特に響いている感じはない。むしろ、喜んでいた。
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