第12話 友は友を呼ぶ③

 俺と根森さんが日陰で休んでいる間も、2人は元気に遊んでいた。


「沖田ってお兄ちゃんだったんだな。」

「驚いた?」

「いや、何となくそんな気がしてたから。」


どことなく気まずい空気が流れている。折角の誘いを断ったのに、こんな感じで一緒にいるから。


「私ね、一人っ子なんだ。お父さんは年中ほぼ休みなし。お母さんは単身赴任中。だから、私はこの餅太と2人。寂しかったんだと思うんだ。だから、少し仲良くなれそうだった沖田に週末空いてるかって聞いたの。」


根森さんは遊んでいる2人を見ながら続ける。


「けど結局、学校だけの関係なのかなって思ってた。沖田の理由も知らずにね。」


ニシシと笑うその顔をどこかぎこちない。完全に無理している。


「ごめんね。」

「…………」


俺には返す言葉が見つからなかった。


 結局、根森さんも交えて夕方まで遊んだ。餅太も一緒に楽しんでくれて、2人とも楽しそうだった。友香と根森さんはすっかり仲良くなっていたが、少し人見知りの夢乃はまだあんまり馴染めてない感じだ。


「あーあ、もう帰らなくちゃいけないのか。」

「実兄!もうちょっと遊んでいい?」

「根森さんがいいならいいけど。」

「あおいちゃん!」


友香が根森さんに抱きつく。そんな友香の可愛さにやられかけている根森さんは、俺の目を見て訊いてくる。


「(いい?)」

「(そっちがいいなら)」


そう目で伝えると、根森さんは笑って、


「じゃあもうちょっと遊ぼうか。」


と2人に言う。すると2人は喜んで、「やったー!」と叫んだ。


 すっかりと日も落ちて、街灯がつき始めた頃、お開きになった。けど、2人とも遊び疲れて眠ってしまったので、根森さんが友香を、俺が夢乃を抱きかかえた状態だ。


「ごめん、こんなのまで付き合わせて。」

「いいっていいって。困ったときはお互い様やろ?」


餅太は基本、大人しいみたいで、今だってリードを話しているが、根森さんの足元を歩いている。


「沖田。今日言ったこと気にしなくていいから。私たちは学校の友達。プライベートにまで干渉するべきじゃ「あのさ!」」


少し食い入ったように俺が言うと、根森さんは驚いた顔で俺を見た。


「よかったら、週末さ、暇なときでいいから、友香たちの面倒一緒に見ない?俺もさ、2人を1人で見るのはしんどいから。」

「……いいのかな?」

「少なくとも俺は嬉しい。」

「そう……」


断られる前提の提案だ。だが、


「じゃあお願いしていいかな?私も楽しかったし。」


根森さんはそう言う。気づけばもう俺の家の前だった。


「お願いしたいのはこっちの方。じゃあ、お願いします。」

「ふふっ」

「ははっ」


なんだかおかしくなって、お互いに笑う。


「友香、もらうわ。」

「ありがとう。あっ、私たちRINE交換してなかったね。」

「そうやな。すっかり忘れてたわ。」


俺の友達のところに『aoi』の文字が追加される。


「じゃあまた明日ね。」

「うん。また明日。」


俺たちは手を振りあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る