第10話 友は友を呼ぶ①
遊び疲れたのか、夢乃は日陰に入ってきた。
「もういいのか?」
「ちょっときゅーけい。」
「友香は?」
「いっしょにあそんでくれるこをさがしてるって。」
「まあ、迷子にならなけりゃそれでいい。」
夢乃に水筒を渡すと、ちびちびと飲み始めた。両手で水筒を持って飲む姿がめちゃくちゃ可愛い。
「ありあと。」
「ん。これ舐めとけ。」
熱中症になったらいけないから、塩分チャージのタブレットを食べさせる。夢乃は口の中でコロコロと転がして舐める。美味しいのか、みるみるうちに笑顔になっていく。
「喉詰まらせんなよ。」
「ん。」
夢乃はいつもぽやぁっとしているが、意外に冷静で、大人っぽいところがある。俺が注意したら素直に聞いてくれるし、自由奔放な友香を見てくれている。そういう意味では、お姉ちゃんを見てお姉ちゃんをしているのか。
「お前ももうちょっと遊んできたら。」
「つかれただけだから。」
お姉ちゃんがあんな感じだと、自分がちゃんとしなくちゃって思うか。しょうがないな。
「じゃあ、俺も遊ぶとするかな。」
グググっと背伸びをして日向に出る。
「来ないのか?」
「いく。」
そう聞くと、夢乃はとてとてと走ってきて、俺の背中に飛び乗った。これくらい甘えてもらわないと、お兄ちゃんが廃るしな。
回るジャングルジム(名前はなにか知らないけど)で遊んでいると、友香が帰ってきた。
「実兄も夢乃もたのしそう!まぜて!」
「友香、おかえり。遊んでくれる人見つかった?」
「うん!あおいちゃん!」
走ってきたのか、友香は肩で息をしていて、その『あおいちゃん』はまだ来ていない感じだ。
「ちかくでおいぬさんのおさんぽしてたんだ。」
楽しそうに笑う友香。すると、入口の方から犬の鳴き声がする。
「あおいちゃんだ!」
友香はぴょんと飛び跳ねて、入口の方に向かっていく。
「気をつけろよ。」
「うん!」
その後ろ姿に声をかけると、嬉しそうな返事が返ってくる。
「夢乃も行くか?」
「いい、まっとく。」
夢乃は上で揺れているので、多分動かせってことだろう。俺は、ジャングルジムを掴んで、そして走り始めた。
「兄さん、やっぱはやすぎ!」
「文句言うなら止めるぞ!」
「たのしいからべつにいい!」
こうやって感情を見せてくれるのはなかなかないから、お兄ちゃんとしては嬉しいところである。
走っていたら、友香の姿が見え始めた。
「実兄!連れてきたよ!」
「実兄って…」
なんだか聞いた事のある声だけど。
「沖田のことやったんや。」
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