第8話 週末がすぐそこに

 土曜日の4時間目。1番眠くなるこの1週間のラストの授業に、これまた暇なコミュ英をもってくる。学校側の意図を感じるな。やけにチャレンジャーなうちの学校がやりそうなことだ。


 そして、このコミュ英の担当教師。名前は…おもんないから覚えてないけど。この人は、うちのクラスでは勇者と呼ばれている。なぜなら、


「じゃ、この列から。」


窓側の列。そう、根森さんを当てるのだ。ほかの先生は寝ているのを放ったらかしにしているが、こいつだけは根森さんを起こそうとする。だから勇者なのだ。


「根森〜!起きろ〜!」

「んあ〜?チッ。またあんたか。」

「授業中寝てる方が悪いだろ。」

「いい加減諦めてくれよな。」


そんなことを言いつつ嫌々質問に答える根森さん。言っていることは先生の方が正しいが、よくこんなに根森さんに近づけるもんだ。俺ならあんな態度されたらビビってしまう。


 そして、その根森さんだが、もう寝ている。さっきまでイライラしていたとは思えないほどにすやすやと寝ている。


「すぅ〜、すぅ〜、ふにゃふにゃ」


まったく、そのメンタルはどこから来ているんだか。


「沖田〜!ここは?」

「えっと〜…」


忘れていた。根森さんの次は俺だ。黒板を見て何となく授業の内容と質問の内容を掴み、答える。


「合ってるぞ。ちゃんと授業は聞いておこうな。」


この先生は、人の心を読めるのか。なんで俺が授業を聞いていないことを知っているのだろう。まぁ、いいけど。答えられるし。


 そんなこんなで授業も終盤。飽きてくる生徒が大半で、ほとんどが机に頭をくっつけている。抗おうとしている生徒も船を漕いでいるし、まともに授業を聞こうとしているのは、俺と学級委員長だけだ。


「じゃあ、今から自由作文な。次回発表やからちゃんとやっとけよ。」


コミュ英の授業では、授業内容に関連した作文の発表がある。グループ発表だったり、ペアワークだったりするが、どっちにしても発表することには変わりない。これが宿題になると、後々めんどくさくなるので、寝ている生徒はぞろぞろと起き始めた。


「根森さんも起きて。自由作文。」


俺も、この時だけは起こせと言われているので、肩を揺すって起こす。


「あ?沖田?もう休み時間か?」

「んーん、作文。」

「おう、そうか。じゃあ書くかな?」


ぐぐっと背伸びして、根森さんはペンを持つ。


 根森さんはノートの端っこを破ると、俺に投げてくる。開くと、


『Are you free this weekend?』

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