第6話 ゆるくゆるく
―キーンコーンカーンコーン
「すぅ〜、すぅ〜…」
さすがに今のはヤバかった。木曜日の3時間目。教室の中は、すぐそこに迫ってくる昼休憩が楽しみで仕方ないやつと、その前に1時間あることに絶望するやつ。そして、俺の隣には寝てるやつ。まぁ、3パターン目はいつも通りなんだが。
このまんま寝かしておくのもいいけど、なんか、ね。
「んがっ!」
鼻をつまんでみたら、案の定面白い声を上げる根森さん。いつも予想通りの反応ありがとうございます。
「おはよ。もう休み時間やで。」
「おう、そうか。じゃあノート見せてくれ。」
根森さんは当たり前のように頭を掻きむしりながら起きると、そう頼んでくる。頼みながら笑っているから、俺が断れないってことを見透かしているようで…
なんかムカついた。
「今日の帰り、ちょっと付き合って。」
「はぁ?前回のはなんかなし崩しやったけど、今回は流石に断らせてくれ。」
「やだね。お駄賃だと思って。」
「ぐぬぬぬぬ。背に腹はかえられないか。分かったよ。んで、どこ行くんだ?」
「内緒だよん!」
ケラケラと笑いながらそう答える。これで安心してあそこに行けるな。
―キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴って、先生が入ってくる。昼飯まであと1時間。耐えるだけだ。
「すぅ〜、すぅ〜…」
開始5秒。隣の席から気持ちよさそうな寝息が聞こえ始める。いくらなんでも早すぎだろ。聞く気一切ねぇじゃねぇか。まぁ、分かりきったことか。
「じゃ、ここの問題を根森!…は寝てるか。じゃあ隣の沖田!」
こういう被弾はいつも通り。流れ弾は何発食らってもヒーラーがいたらダメージ0だもんな。うん。きっと。
「(x-2)²+(x-6)²=36です。」
「はい、正解。隣の根森も見習って欲しいものだな。地頭がいいのは認めるが。」
そうそう、この子、頭だけはいいのよ。授業態度はミジンコ以下やけど。あぁ〜、こんな奴に成績負けてるなんて…泣きそう。
そして12時を過ぎると、俺の隣に限らず、そこら中に机に突っ伏している奴らが出てきた。
「昼休み前やから気抜けてんのかぁ。俺も学生時代はそんなんやったから分かるけどもよ。後々しんどなるからな。」
そんな先生のアドバイスも虚しく。
「もうちょっと…もうちょっとだけこのまんまがいい。そうそう、そんなかんじそんなかんじ。あぁ〜!」
根森さんは寝言を呟いている。どんな夢なんだろう。内容的にはマッサージしてもらっている夢か。そんな夢ならいいな。
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