第2話 週明け
今日も今日とて学校。月曜日の1時間目は休み明けの空気が抜けないままで、教室はドヨンとした空気に包まれている。それでも、俺の隣は
「すぅ〜すぅ〜…むにゃむにゃ」
気持ちよさそうに寝ている。
「ほんとすごいよな。」
思わずそんな感想を吐いてしまうほどだ。
「いの一番に重力を描きます。次に物体が触れられているところ、今回は床に触れられているから…」
前で授業しているのは物理の近藤先生、通称『いの一番』。この学校の先生の中では面白い方に入る人だが、たまに起こる笑い声の中でも、やはり一つだけ寝息が混じっている。
その隣でノートを書き進めていく俺は、
(この図はややこしいから…)
根森さんがノートを見て、授業内容が分からないことがないように、図は大きめに描くように気をつけている。あと、矢印は3種類を使い分けたり。俺が第2色覚異常なので、色分けをあまりしない。そのことについては根森さんに了承を得ている。なんせ、
「ノート色分けして綺麗でしょアピールしてる奴やったら、今ぶん殴っとったわ。」
とのこと。影で天使と呼ばれている人とは思われないセリフに思わずフリーズしてしまった。俺が勝手にイメージを描いていたからかもしれない。ただ、そんな理想を押し付けていた自分に腹が立った。
「ごめん、じゃあそうするわ。」
「?よろしく。」
そんな感じで許可されたので、俺は今、机の上に色ペンが1本も置かれていない。俺としては変に「色どうしようかな?」とか考えなくて良くなったので助かっている。その分、ノートのまとめ方をきちんとしないといけないんだが、それは別に苦ではないし、元々やっていたことだ。
それにしても、一向に起きる気配がない。たまにむにゃむにゃ言ったりしてるが、特に動かないし、いや、なんなら寝返りをうっている。頭だけ。
「どんなけ熟睡してるんだか。」
「Zzz…」
先生が出した例題を解きながらそう思う。いや、さっきからずっと横しか見てねぇじゃねぇかって思うけど、そんな感じで見てるんじゃなく、ただ、見てて面白い。それだけだ。やましい気持ちなんかないからな…たぶん。
「沖田。ここは?」
「9.8m/sです。」
「正解。だから…」
絶対に先生の視界にも入っているだろう。彼女の舐めふてくさっている授業態度は。教師の中でも問題になっていないのか?
そんな彼女は俺が当たったこともつゆ知らず、ただ欲望のままに眠り続けるだけ。そんな彼女が少し羨ましくなった。
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