第2話 トイレの女神様①

波乱の始業式が終了し、生徒や担任、副担任たちは各クラスへと移動を開始した。

そして、朽舞達3年C組の生徒達もクラスに着いた。

それぞれのクラスには、態度が良い、頭が良い人などが均等に分けられているが、3年C組は問題児しかいない最悪のクラスだ。


「…皆んな、席に座って下さい。」


朽舞はクラスメイト全員集まってすぐにそう言った。当然そんなお願いが通る訳が無かった。


「はーいせんせー!!何で年下の命令聞かないといけないんですかぁ?」


「つーかどうやって教員免許取れたの?もしかして偽装でもした?」


「やばぁ〜犯罪者じゃんwww。てゆーか席まだ決まってないんですけど〜?」


皆んなは口々に揚げ足を取っていった。

これがこのクラスのやり方だ、教師の言葉の誤りを逃さず指摘し、発言する暇さえ与えずに罵倒の言葉を吐き続ける。

このやり方で今まであらゆる教師が折れていった。


「適当に座って下さい。それと、教員免許はこちらです。偽装だと思うなら警察に通報でもしたらどうですか?どうせ貴方達の間違いだと後で分かるでしょうけど。あと、年下のお願いも聞けないほど、器が小さいんですか?」


だが、朽舞は今までの教師とはまさに何もかもが違う。

生徒全ての文句や問いに論破してみせた。

しかも何も焦った様子もなく、とても14歳が持つような覚悟ではなかった。


「はぁ〜〜?何言っちゃってるわけ?」


「ガキが偉そうに……。」


「俺傷付いちゃったな〜…損害賠償請求しまーす。」


しかし、そんな簡単にうまくいかなかった。

むしろ生徒達の怒りに火をつけて姉妹、逆効果となってしまった、失敗のように見えたが………


「藤井晶。年齢17歳 身長174cm 体重68kg 前回のテストの順位は30000/30000位。最近風俗へと行き、暴行を働き警察に補導されたが、学校上層部によって揉み消される。」


「…はぁ?」


「赤司哲平 年齢18歳 身長172cm 多重58kg 前回のテストの順位は28900/30000位 複数の女性と交際していたことが判明し全員に慰謝料を請求され、その金額合計脅威の1500万円」


「ちょ、何でそれ!?」


「三森千秋 年齢17歳 身長165cm 体重70kg 前回のテストの順位は29999/30000位 脂肪吸引手術代をATMとかしてる男に払わせるも効果は見られず絶好。」


「んな事言わ無くて良いっつーの…。」


「……えー、今言った事は、この通り全て写真として収めました。」


すると今言ったDQN達の愚行の写真達が教卓にばら撒いた。確認してみるとバッチリ写っていた。


「………お前、これどうやって。」


「このクラスを担任するんですから、これくらいはしないと…で、どうします?聞かないなら別に良いですけど。」


流石にこんな証拠を出されたら、DQNは大人しく黙って行動に移した。これを見た副担任の宮崎は、ポカーンとしていた。


(………こいつ、本当に14歳だよな?)


「宮崎先生、三年教科書いただけませんか?」


「あ、はい。」



ー 数時間後 ー


「あ〜…まじアイツウゼェ。」


「何でアイツあんなの持ってんだよ…。」


「調子乗ってんよな?」


この1時間、正に朽舞の独壇場だった。

少しでも一般の生徒に危害を加えたり、授業を乱そうとしたら新たな弱みの写真を出して黙らせた。

今までずっと好き勝手やって来たこいつらにとって、朽舞は邪魔以外の何者でも無かったしかもそれが4時間目までずっと続いたのだから、DQN達のストレスは溜まりに溜まっていた。

逆に、一般生徒からの人気は高かった。


「今度の先生、凄いよね。」


「うん、DQN達を完全に黙らせてる。」


「正に私達の救世主だよね〜!」


今までずっと苦しめられて来た一般生徒にとって、威張り続けていた人達が突如現れた自分達より幼い先生に苦しめられている、こんな面白い状況笑わずにはいられなかった。


ドン!


しかし、DQN達はこんな事では鎮まらなかった。

赤司が机を蹴り上げて、教室の空気を一気にピリピリした空気へと一変させた。


「おい、お前らも調子乗ってんじゃねーよ。」


するとさっきまで騒がしかった一般生徒達が一気に黙ってしまった。

鬱憤が溜まったDQN達は、この怒りを無性に誰かへとぶつけたかった。

そして、ターゲットになったのは…。


「いや〜…こんな時もうちの女神様は空気が読めて良いね〜。お前らも見習ったらどうよ?」


出席番号3番の雨宮美香だった。

彼女はあまり会話には積極的に参加せず、何やっても黙ってるためDQNからしたら都合が良かった。

そんな雨宮だが、とある理由から女神と呼ばれていた。


「ちょっと〜、ただの女神じゃなくて、“トイレの女神様”だろ?ちゃんと言わないと失礼じゃない?」


彼女はよく、昼休みにトイレにこもっているからだった。そこがDQN達にとっちゃ面白い以外何でもなかった。


「……ッ!!」


すると、雨宮は教室の空気に耐えられなくなったのか、弁当を持って走って出ていってしまった。


「あ〜あ〜、女神様怒らせちゃったじゃ〜ん。赤司達さいて〜wwww。」


DQN女子達は心にもない事を言いながら、雨宮の惨めさに笑いが止まらなかった。

一方、朽舞はというと場所を探していたら、雨宮が走っていくところを目撃した。


「あ、雨宮さん、走ると危な」


雨宮は聞く事なく必死に女子トイレへと逃げていった。


「………それにしても、何で弁当持ちながらトイレに?」

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