第四章 とある詩人の答え 4



ナムラの家を後にした彼女は、その足で目的地のお墓に向かった。

そこには、既に一人の赤髪の青年が待っていた。


「やっぱり、帰って来てすぐに来るんだな」

先ほどの門番をしていた、赤髪の青年が笑いながら声を掛ける。


「……!ライ君も来てたんだね」

その声に笑顔で答えるロキ(女性)。


辺りを見回して。

「リーネちゃんと来なかったの?」


「あぁ、俺も仕事の帰りで立ち寄ったからな。

リーネは、もうすぐ出産だから、その前に『ロキ兄』に話にきたんだ!」

照れながら、一人で来たことを告げる。


「そっか、ライ君がパパになるのか……」

十年……言葉にすればあっけない、されど、少年を喪い生きてきた、自分には『永久』に等しい地獄。

そんな思いを感じながら、ライ達の成長に嬉しいと思う反面、寂しいとも感じていた。


「そうだった、サキも明日の朝には着くと思うよ」

ニヤリとライは笑いながら話す。


「うん、サキちゃんに会うのも楽しみ!」

彼に伝えれなかった……伝えたかった言葉……あの時の感情……彼に対しての仄かな思い。


「私も、ロキ君に帰ってきた挨拶するね……」

私の停まった時間……残酷に過ぎていく時間は、見えない傷跡になって、苦しめる。


「ただいま、ロキ君……私は、あの時の約束が叶うのをずっと待ってるよ……それまでは、名前をまだ借りてくね」

(サキちゃんと別れる前に私達が交わした約束、貴方が死の間際に伝えた言葉)



あの日、ロキが皆に伝えた、たった一つの言葉。


私達からの最後の言葉。


貴方からの呪縛。


私達からの呪縛。


『俺は…もう…助…か…ら…ない…け…ど…み…は…さ…ご……イ…て…ま…あ…う』

『『『みんなで……会う約束を!』』』


(サキちゃんには、手紙で伝えたけどあの約束は、私達への呪い。そして、貴方への呪い。

世界が滅んでも叶って欲しい、私達の願い……)


いろいろな思いを持ちながら、残酷な世界に生きる彼女達…

されど、約束を糧に前に進もうとしている者と過去に囚われた者。

二つの思いに縛られながら動けずに、約束と誓いをその魂に刻み込もうとしている。


(これは、私達への罰……


貴方があの時否定していた意味……


今なら、理解わかる気がする……)


ゆっくりと目を開ける。


「……やっぱり、また泣くんだな……

ロキ兄は、笑顔の方が嬉しいと思うよ」

悲しそうにライが語り掛ける。


「ロキ君は、そうかもしれないね……それでも……」

言葉を紡ぎかけ、クビを振り別の言葉を紡ぎだす。

「明日、四人でまた来ましょう!」

「……あぁ、そうだね!」


そして、何処に集まるかを話し合い。それぞれの帰路につく。



                続く

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