第四章 とある詩人の答え 3


『彼…ロキ君のお墓に手を合わせたい』


細身な男性の唐突の申し出。けれど、彼女はその申し出に軽い怒気を含ませクビを振り、


「知らない方をあの人のお墓に連れて行きたくありません!」

笑顔の拒絶。


「……突然の申し出、申し訳ありませんでした」

女性の強い拒絶感に冷や汗を流しながら、謝罪する。


「こちらこそ、怒ってしまい。申し訳ありません。

村長の家までもうすぐです」

彼女も謝罪して、村長の家に向かって行く。


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沈黙が続くなか、しばらく村を歩くこと数分、村長の家にたどり着く。


「ナムラさん、ただいま戻りました」

呼び鈴を鳴らし挨拶した。


「おぉ、戻ってきたか。おかえりなさい、無事に帰ってくれて嬉しいぞ!」

入り口まで来た初老の男性が、ロキ(女性)に嬉しそうに挨拶を返した。


「……して、後ろの方達はどなたかな?」

少し、険しい目付きになり二人を見る。


「たまたま狼の群れに襲われていたのを助けた吟遊詩人の方達です。」

女性が説明する。



「助けてそのままにするのも、しのびなかったので、連れてきました」

続けて

「曲を唄ってくれるそうなので、明日のお祭りに唄ってもらってはいかがですか?」

二人との約束を重ねて、伝える。


「ほぅ……、これも何かの縁なんだろうな……」

何かを考えながら頷き、小さく呟く。


「いいだろう。

お二方、わしは村長の『ナムラ』じゃ。

明日は祭りがあるゆえ、今は録な歓迎が出来ぬが、ウチでゆっくりしていきなさい」

笑顔で、許可と簡単な挨拶を交わした。



「「ありがとうございます。よろしくお願いします」」

お辞儀をして、感謝と挨拶をする。


「あの……すみません、挨拶してそうそうですが、少し外します」

女性がそわそわしながら、離れることを告げる。



「……あぁ!……そうじゃな、早めに戻ってくるんじゃぞ」

ナムラ村長は女性が何処に行くか検討がついたように返答した。


立ち去るロキ(女性)を見ながら、疑問を口に出す。

「……あの、彼女はどちらに行かれたのですか?」

「な~に、気になさることはないよ。いつもの日課じゃ。

ところで、立ちぱっなしもなんじゃから、入んなさい」

答えをはぐらかし、話題を変える。


「あっ!……すみません。お邪魔させていただきます」

玄関の前で立ち尽くしていた事に少し恥ずかしさを感じ、入っていく。



「戻って来るまでの間、話をしましょう」

笑いながら、暇を紛らわすために話をしようと、促す。



                続く

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