第四章 とある詩人の答え 2

それから、歩くこと数時間。


「見えました。あちらが私の村です」

今までにない笑顔で女性が教えてくれる。

「……あれは、本当に村なのですか? 」

そこに、小さな門と門番らしき人物が見えたからだ。



「はい、クルス村は鍛冶師の村です。村の安全の為に門があります。」

女性が誇らしげに語る。

門番の青年が女性達に気付いた。


「やぁ、おかえり。2日で帰ると思っていたが、ずいぶん遅かったね。」

笑いながら、女性に話しかける。


「ただいま。実は、狼の群れに襲われていた人を助けていました。」

女性と門番の青年は目線を2人に向ける。


「そうだったのか。お二方、さぞ大変でしたね」

門番がしみじみと話す。


「彼女に助けていたたけなげれば、今ここに居られませんでした」

「彼女に感謝しています」

女性への感謝を門番に話す2人。



少しの会話の後に、

「それでは、身分証のご提示をお願いします。」

「はい。お願いします」


「……見ない村ですね? 」

訝しげに尋ねる門番

「私どもは、吟遊詩人物語を語り唄う者です。海の向こうから来ました」

唄を奏でながら旅をしていることを、説明した。


「なるほど、理解しました。彼女が連れてきたなら、警戒の心配はなさそうですね」

「ようこそ、クルス村へ」

門番は、笑顔で2人を通す。



「……そうそう、村長が心配してたよ。」

「フフ、わかりました。一番に会いに行きます」

笑いながら、話す2人。


門を入る3人を見て、子供達が走ってくる。

少年「ロキ姉ちゃん、お帰り」

少女「ロキちゃん、お帰りなさい」


「「……!!」」

子供達の言葉にビックリしてしまう。

「エ……あの……ロキって……あの話の少年の…名前ですよね?」

そして、驚きのあまり言葉が上手く出せないでいた。



「……あ!ご紹介が遅れました。私の名前は、『ロキ・クルス』です!」

そして、まだ名乗って無い事を、思い出し自己紹介した。


「すみません、私はロキ君が少年でもう亡くなられたと思ってました」

申し訳なさそうに謝る。


「えぇ、ロキ君は亡くなりました。私は彼の名前を継いで……名乗ってます」

「あの……それでしたら、本名は何と言いますか?」


微笑みながら。

「私の名前は、『ロキ・クルス』です。それ以外に名前は、あり得ません!」

と、 断言した。



その言葉に、2人は気付いた。

『目の前の女性の全てなのだと。』


「あの、よろしければ彼……ロキ君のお墓に手を合わせたいのですが、大丈夫ですか?」



                続く

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