放課後デート。でもなんちゃってイオンしか無い

 俺が住む町にはイオンがある。

 だがそれは一階に食料品コーナー。二階三階に衣類店や雑貨。そして三階に本屋やペットショップなどがある。四階は映画館だ。

 そして俺は知っている。首都・トーキョーにはもっと大きいショッピングモールがあると。確か大丸? だっけな。知らんけど。いつかゆうと一緒に行ってみたいものだ。

 今、ゆうと一緒にウィンドウショッピングをしているのだが三歩くらい後ろで着いてくる結城が気になってしょうがない。


「ゆっちゃん……そんな離れてないでこっち来たら?」

「りょっちよ。その甘い空間に俺が耐えられると思っているのか?」

「うん。ごめん」


 手を恋人繋ぎにして肩を寄せ合う俺たちは完全にカップルのなのでシスコンで彼女が出来ない結城には目に毒かもしれない。


「りょっち。腹減ってねぇか?」

「確かにそうだな……ゆうは?」

「そうですねちょっと小腹が空きました」

「じゃあ下行ってなんか食べよう」


 エスカレーターに乗って下に降りる。

 一階には食料品以外にもマックや銀だこなどのファストフード店があるのだ。


「じゃあ俺適当にポテトでも買ってくるぞ」

「分かった。後で半分金渡すから」

「私も出します」

「良いってマイシスターが幸せなら俺はどんなことも惜しまないのさっ!」

「……」

「ゆう。そんな目で見るんじゃない」


 ゆうは感情のない蔑んだ目で「ありがとう」と言っていた。

 まあとりあえず結城が奢ってくれるのならありがたく受け取ろう。


「じゃあ行ってくる……」


 蔑んだ目で見られた結城はとぼとぼと向かっていった。

 暫くフードコートを見渡していると見覚えのある顔が数人の男に絡まれていた。


「ん? あれ竜胆さんか?」

「誰ですか? それ」

「クラスメイトだよ。委員長やってる」

「女性ですか?」

「そうだな」


 竜胆は所謂クールビューティーというやつでで男子から絶大な人気を誇っていた。そして文武両道、博識でお淑やかで委員長。俺は興味なかったがクラスの男子がブヒブヒ言っているのは聞こえた。


「その人のこと気になるんですか?」


 ぎゅっと強く手を握られる。

 ゆうがジト目で俺の方を見ていた。

 あ、これ嫉妬というやつではないか。ちょっとだけ身を寄せて圧をかけてくるゆう。まあ俺にしては可愛いに全て変換されるのだけども。


「いいや俺はゆうだけしか見ないよ」

「そっそうですよ。りゅうさんは私の事だけ見てれば良いんです」


 肩に頭を乗っけてくるゆう。髪の隙間から見えた耳は真っ赤になっていた。

 丁度いいところにあるので頭をナデナデする。

 とっとと竜胆を助けろよ、と思うそこの読者。大丈夫俺の幼馴染が行ったから。

 実況を始めようか。

 まず結城がポテトを片手に男たちに突っ込む。

 なんか言い合いした後、男の一人が腕を振りかぶる。

 その腕を掴み、結城がなんか言った。すると男たちが逃げてった。

 結城が手を差し伸べたら竜胆が抱きついた。

 周りからの歓声が飛び交う。結城は焦ったように竜胆を引き剥がそうとしていたがよほど強く抱きつかれているのかできていなかった。

 そのままこっちに来る結城。その光景はなかなかにシュールだった。筋肉ダルマが美少女に抱きつかれてこちらに来る図。誰か絵にして欲しい。


「結城おつかれ」

「おつかれじゃねぇよ。見てたんなら助けてくれや」

「いいじゃん。春が来たみたいだし」

「そう私は運命の人に会ったの」


 竜胆が目の奥にハートが浮かんでいる錯覚を受けるくらい目がイッてた。

 結城が無理矢理竜胆を引き剥がして俺の方に来る。


「……絶対あいつやべぇやつだぞ? なんかすげぇ悪寒がするんだよ」

「……まあ良いんじゃない? シスコンでも一心の愛を送り続けてくれるんだから」

「……そうですよ。シスコンでも構わないですけどちょっと今はキモいですから」

「……そういう問題じゃねぇんだよっ!」

「ねぇ何話してるの? 私の運命の人を盗らないで」

「ひっ!」


 何がともあれリアルで『美少女を助けたらとんでもないヤンデレだった』が起こるとは思ってもみなかったよ、とゆうポテトを食べながらそう思った。











――第三章あとがき――

 まさかの結城に彼女が出来てしまいました(おい)なんか勝手に出てきましたね

 やべぇやつにはやべぇやつです。ハンムラビ法典的な。

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