彼女の手作り弁当だよ 加筆した也

「朝からイチャイチャ登校しやがって」

「いいだろ。それにゆうに反対したら縁切るって言われたんだろ?」

「ちげぇよ彼女のいない男子共の心の声だよ」

「じゃあ頑張って作れよ」

「それが出来たら苦労しないんだって」


 俺たちは昼休みにゆっちゃんと駄弁っていた。

 確かに周りに意識を向けてみると男子の怨念や殺意が飛んでくるのを感じた。

 しょうがないじゃないか。彼女ができちゃったんだもの。それに可愛いんだもの。

 昼飯を食べるためにリュックを漁る。

 あれ?


「ゆっちゃん。弁当忘れた……」

「お前マジか。だが大丈夫だと思うぞ。じきに愛しのマイシスターが来るはずだ」

「えっ?」


 ゆうが来るのか。後でゆうのクラスに行こうと思っていたが、向こうから来てくれるとは。


「だーれだ」


 目を手で塞がれる。小さい手だった。顔に当たる感触が柔らかくて気持ちよかった。


「ゆう。流石に声でわかるよ」

「そうですよね」


 ゆうは俺の後ろからひょこっと顔を出し、近くの空いている椅子に座った。


「すいませんりゅうさん。朝にお弁当渡すのを忘れていました」

「お弁当も作ってくれたのか?」

「はい。唯華さんに作ってあげたらと言われたので。それに私も作りたかったですし」


 恥ずかしそうに頬を赤らめ小首をかしげるゆう。

 周りの男子が吐血するのが見えたが人の彼女になに勝手に発情してんだか。不躾な視線を送るのは止めて欲しい。もし不埒な真似をするようだったら結城を派遣しよう。筋肉ムキムキシスコンダルマだからな。


「はい。りゅうさん」

「ありがとう」


 ゆうが持っていた弁当袋の片割れをもらう。包んでいる柄付きの袋はゆうの袋の色違いだった。

 弁当箱を開けてみると左側に生姜焼きがのったご飯。右側におひたしやマリネがあった。


「これ全部作ったのかすごいな」

「えへへ。ありがとうございます」

「いいなあ。マイシスターよお兄ちゃんにも作ってくれぇ」

「嫌です。これはりゅうさんと私の特別なんですから」

「ナチュラルに惚気けるの止めてぇ」


 あっ結城が机に突っ伏した。周りをちらりと見るとやはり同じように死んでる人がいた。主に彼女が……そこまで言ったら無粋だろう。


「いただきます」

「はい。いただきます」

「俺だけアウェイな感じするのなぁぜなぁぜ。いただきます……」


 まずは生姜焼きを食べるとしよう。

 ご飯と一緒に口に入れる。タレがご飯と絡み合い、生姜のさっぱりした風味が優しく口内に広がる。


「ゆう。美味しいよ」

「良かったです。そういえばりゅうさんの好きな料理ってなんですか? 確か唐揚げと鮭のムニエルだったと思うんですけど……」

「ちょっと耳かして」

「はい」


 ゆうの耳元に手で輪っかを作って言う。


「ゆうの作ったものは全部好きだよ」

「はふぅ……」


 耳を林檎みたいに真っ赤にして固まるゆう。ちょっとからかいすぎたかもしれない。

 でも実際そうなのだから仕方がない。もちろん母さんの作った料理も好きだが何か系統が違うのだ。


「なあお二方よ。ティーピーオーって知ってるか? 甘すぎて吐きそう」


 ごめん結城。後でジュース奢るから許して。

 男子の怨念と殺意をありがたく享受しながら弁当を食べる。

 朝はゆっくり食べれなかったので味を噛み締めて食べる。


「りょうさん。放課後デートしませんか?」


 可愛い彼女からのお誘い。乗らないはずがない。断るやつは八つ裂きの刑に処してやる。


「しようか」

「兄の前でデートの約束すんなよぉ」


 そういうことで放課後デートをすることになった。







秘技あーんが無くても甘くできるのだ。(ずんだもん風)

一応学校なのでイチャイチャは自重させてます。

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