彼女と学校で過ごしてみよう
朝起きたら彼女がいた
「あっおはようございます。りゅうさん」
朝起きたらゆうがいた。制服を身にまといキッチンに立っていた。
それはどこか新妻のようで俺は顔を背けてしまった。
「おはようゆう」
「瑠斗起きたのね! あーもういつの間に優香ちゃんとデキてたのよー!」
「母さん痛い痛い!」
後ろから背中をバシバシしてきたのは俺の母、伊藤
もうアラフォーだが未だに若々しく元気だ。最近はランニングを始めたとか言っている。
「高校卒業したら結婚かしらねー! ああもうお母さんワクワクしちゃうわ!」
「ぶふっ!」
結婚、という言葉に俺は飲んでいた水を吹き出しそうになった。
ゆうの方を見てみると顔を真っ赤にして固まっていた。
「優香ちゃん出来たかしら?」
「はっはい!」
「そしたらちょっと耳かして――」
「はい――えっ! そんなこと」
「良いから良いから! 女は度胸! 行ってきなさい!」
「はひっわかりました!」
覚悟を決めた顔をして俺の方に向かってくるゆう。その手にはおぼんがあった。
「ど、どうぞあ・な・た」
顔をあからめて上目遣いで発射されたその言葉は俺の腰を砕くには十分でぺたんとテーブルの椅子に座ってしまった。
「ほらほらーせっかく優香ちゃんが頑張ってくれたのにー。なんか言ってあげなよー」
外野の声がうるさい。俺だって分かってるよ。
「ありがとう。ゆう」
「はい」
テーブルに出されたのは和の食卓だった。
ご飯にお味噌汁。油ののった美味しそうな鮭の塩焼きにキャベツのおひたし。
全部美味しそうだった。
「全部ゆうが作ったのか?」
「そうです」
ゆうは自慢げにむふーと胸を張っていた。
横目で母を見るとニヤニヤニヤニヤしていた。正直言ってうざい。かなりうざい。
ゆうも正面に座った。
「じゃあいただきます」
「はい、いただきます」
やはりここはお味噌汁から食べるべきだろう。
ずずっと温かいお味噌汁を飲む。出汁の匂いがふわりと鼻を通り過ぎた。美味しい。
ずっと食べていたい美味しさだった。
「どうですか?」
こわごわと聞いてくるゆうに言う。
「美味しいよ。一生食べていたいくらいだ」
「一生ですか?」
「ああ」
「そうですか……嬉しいです」
にへらと目尻を下げて笑うゆう。それが可愛くて思わず頭を撫でる。
それが気持ち良いのかグリグリと頭を押し付けてくるゆう。
「ふふっ」
「あのーお二人さん? イチャイチャしてるけどもうお時間よ?」
時計を見るともう登校している時間だった。
「母さん気づいてるなら言ってくれよ!」
「いやー二人のイチャイチャが尊くって!」
「ゆうっ! 早く食べるぞ!」
「はいっ!」
ゆうに申し訳ないな、と思いながら勢いよくご飯をかきこむ。
それから全速力で制服に着替え、歯を磨き、顔を洗った。
カバンを持って玄関に向かうとゆうが待っていてくれた。
「母さん行ってきます!」
「紗友里さん行ってきます」
恋人になって初日の登校はとてもあわだたしい物となった。
でもしっかりゆうの手を繋いで。笑いあって登校した。
真冬のどうでもいい呟き
彼女……作りたい。ていうか幼馴染いない。悲しい。
ちょっと短かったし。
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