第46話 アリアさんは変わった!

「ねぇねぇアディンくん!もし私の方が先に強くなってたらどうする?」

「え〜?そんなことあるかな〜?」

「私の方が三歳もお姉さんだからね!それに────」


 白髪の少女は、炎魔法を放って言った。


「今だって、私の方が強いし!」

「そんなことない!」


 そして、俺もそれに負けないようにと意地になって、同じように炎魔法を放とうとするも、俺が放ったものはその白髪の少女が放ったものと比べてかなり弱いものだった。


「ほらね〜?」

「い、今はまだ四歳だから!────と同じ七歳になったらその時は────に追いついてるよ!」

「でも、その時私は十歳だよ?」

「じゃあ十歳になったら追いつく!」

「その時私は十三歳だね〜」

「ずるい!」

「仕方ないよ〜、私の方が三歳もお姉さんなんだから!」

「……十五歳ぐらいになったら追いついてるかな」

「その時私は十八歳だけど……もしその時もアディンくんが私より弱かったりしたら、私がアディンくんのこと鍛えてあげて、私と一緒に戦えるぐらい強くしてあげるね!それで、アディンくんが私と同じぐらい強くなったら、私アディンくんと────」


 白髪の少女が何かを言いかけた時、突然俺の視界から何もかもがなくなったかと思えば、俺はいつの間にかベッドで眠っていた……夢、という割にはかなり現実的だったから、あれはおそらく昔の記憶だ。

 白髪も少女……結局あの後ですぐに居なくなったけど、今頃どこで────


「ア、ア、アリアさん!?」


 アリアさんは、俺のことをかなりしっかりと抱きしめて眠っていた。


「アディン、くん……私、アディンくんと────ん?」


 アリアさんは何か寝言を呟いていたが、俺が少し動いたことで目を覚ましたらしい。

 ……今俺のことを呟いていたような気がするが、気のせいだろうか。

 そんなことを思いながらも、俺はアリアさんに朝の挨拶をする。


「おはようございます……起きて早々で申し訳ないんですけど、体が密着しすぎてるので離れてもらっても良いですか?」

「おはよう〜……離れる?私が、アディンくんから?」


 アリアさんは不思議そうにそう言うと、俺のことをさらに強く抱きしめて言った。


「そんな概念はこの世界には無いよ〜」

「アリアさん……!」


 アリアさんに抱きしめられるのが嫌というわけではないが、やはり少し恥ずかしいものがあるな。

 だが、そんな俺とは反対に、アリアさんはやはり今までとは少し違う雰囲気で言った。


「アディンくん……私ね、今までもしアディンくんに何かあったらって思ってアディンくんのことクエストに行かせたく無いなって考えてたんだけど……今はね、ちょっとだけ考え方が変わったの」

「変わった……?」

「昨日アディンくんに助けられた時に、アディンくんと一緒に戦って街を守ってるって感じがして、命のかかった状況だったけど、そんな大事な状況をアディンくんと一緒に戦えたことがとても嬉しかったの」

「アリアさん……」

「それに、私は誰よりもアディンくんのことを優先してあげようと思ってたはずなのに、アディンくんがしたいって言ってることをさせてあげないなんて……おかしい話だったよね」


 アリアさんは、真面目な表情でそう言った。

 ……昨日の一件から、アリアさんは大きく変わったみたいだ。

 俺のクエストに行くことに対する捉え方、そして、今こんなにも抱きしめられていることからもわかる通り、俺自身への接し方も……


「アリアさん、その……とても良い話だとは思うんですけど、そろそろ一度離れてくれないですか?」

「ダメ〜!もっとアディンくんに抱きつきた〜い!」


 アリアさんによって体勢を崩してしまった俺は、すぐに体を起こそうとしたが、アリアさんに抱きしめられているせいで上手く体を起こすことができず────そのタイミングで、ドアが二回ノックされて、ミレーナさんが部屋に入ってきた。


「お二人とも、昨日はお疲れ様────はい?」


 その後、アリアさんはミレーナさんに怒られていたが、全く気にした様子もなく俺のことを抱きしめ続けた。


「……」


 いつもの日常が帰ってきたと思いたいが、今までとはまた違った日常が始まりそうな予感がした。

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