第45話 アリアさんは抱きしめたい!
「アディンくん!?どうしてアディンくんが空中に浮けて────え?」
アリアさんが俺に話しかけ始めてくれた直後、俺は今炎魔法を俺の出せる最大限の魔力を込めて放ったため、風魔法の制御を失って、一気に落下した……しまった!
俺は地面に激突する前にどうにか受け身だけは取ろうと身構えたが────アリアさんが俺のことを抱きしめて、笑顔で言った。
「本当、アディンくんは危ないことばっかりして」
「す、すみません……」
「でも……今回は、アディンくんに助けられちゃったね、私がアディンくんのこと守ってあげないといけないのに……私、師匠失格かな」
アリアさんがどこか落ち込んだような表情で言っていたが、俺はそんなアリアさんに対して一番伝えたいことを伝えた。
「俺は、アリアさんに守られるだけじゃなくて、いつかアリアさんの横で戦えるようになりたいんです……だから、俺はもっとアリアさんのことを助けられるように強くなりたいですし、何より────アリアさんは、俺にとって最高の師匠です」
俺がそう言うと、アリアさんは一筋の涙を流した。
「え、アリアさん!?」
「ご、ごめんね……そんなこと言ってもらえると思ってなくて……ここに来る前、私のこと助けてくれようとしてるアディンくんに対して酷いこと言っちゃったから」
「そんなこと……」
「────じゃあ、その最高の師匠として、あとは私が地上に居るやつ全部倒すだけだね」
アリアさんは涙を拭って笑顔でそう言うと、俺のことを片腕で抱きしめながら、地上に向けてもう片方の手を向けた……地上に居る敵は、さっき俺とアリアさんで全滅させることができたが、地上にはまだかなりの数が居るし、冒険者の人が居るからそう簡単には────
「え?」
と思ったが、いつの間にか冒険者の人たちはモンスタの大群と戦っていなかった……だが、モンスターの大群は動きを止めていた。
そして────その理由は、シュテリドネさんが一人でモンスターの大群と戦ってくれていることと、ミレーナさんが木の壁によってモンスターの大群の進行を妨げてくれているおかげだと思った。
きっとアリアさんが戦いやすいように、あの二人が冒険者の人たちを街に戻してくれたんだろう。
「あの二人なら、私が本気で魔法使ったとしても一発だけならどうにか命ぐらいは持つよね」
アリアさんがそう言った瞬間、とても一人だけの魔力とは思えないほどの魔力が、アリアさんの手に込められた。
「見ててねアディンくん、これが……アディンくんの師匠であり、アディンくんのことを────」
アリアさんは何かを言っていたようだが、魔法が放たれた音でアリアさんが最後に何を言っていたのかは聞こえなかった────そして、次の瞬間、アリアさんが放った魔法が地面に衝突すると、大量に居た地上のモンスターたちは、その一発で全滅した。
「アリアさん!やっぱりすご────」
俺がアリアさんのことをすごいと感じたことを改めて口に出そうとした時、アリアさんは片腕からまたも両腕で俺のことを抱きしめた。
「アディンくん、アディンくん……!私もう、ずっとこうしてたい……」
「ず、ずっと……!?ずっとは……困りますね」
「じゃあ私が抱きしめるのやめちゃってもいいの?今浮いてるけど」
「え……!?」
俺はさっきどうにか空中に浮くことができただけで、ここまで来れたのも無理矢理だったし、今は空中に浮くほどの魔力は残っていないから、アリアさんに離されてしまうのはアリアさんに抱きしめられること以上にとても困る。
「それは……もっと困ります」
「じゃあ私が抱きしめてあげてないとね〜!」
「地上に降ろしてくれたら────」
「私もたくさん魔力使って疲れてるからしばらく動きたくないんだよね〜」
「疲れてるんだったら空中に浮いてるよりも地上に居る方が────」
「もう〜!私結構頑張ったんだから、ちょっとの間ぐらいアディンくんのこと抱きしめさせてよ〜!」
「……わかりました」
その後、しばらくの間アリアさんは俺のことを空中で抱きしめ続けた。
足場のない不安定な空中でアリアさんに抱きしめられるというのは不思議な感覚だったが、そんな不安定な場所だからなのか、そこには安心感があった────そして、その安心感によって、俺は懐かしい昔を思い出していた。
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