第44話 アリアさんを助けることができた!

 ────十二分ほど前のこと。

 今度こそアリアさんのことを助けると決めた俺は、ミレーナさんに言われた通り草原側の街の入り口に走ってきた。

 その辺り一帯の草原はモンスターで埋め尽くされ、見えるはずの青空はモンスターによって覆い隠されていた……


「一万体とは聞いてたけど、いざ見てみると本当にモンスターの数の規模が違うな……」


 人生においてほとんどモンスターというものを見たことがない俺には見たことのないモンスターがたくさん居たが、今はそんなことを気にしている場合じゃない……アリアさん、アリアさんはどこに────


「居た!」


 アリアさんは空中に浮いていて、相変わらずとんでもない魔力の込められた雷魔法を広範囲に連続で放っていた……すごい、アリアさんが魔法を放つ度に、モンスターが次々とすごい勢いで減っていく。

 一人だけでいいと言っていただけあって、やはりすごい力だ。

 今出て行ってもアリアさんの足手纏いになるのはわかっていたため、俺は大人しくアリアさんのことを見守ることにした。

 この調子なら、本当にアリアさんだけで全滅もできてしまうかもしれない。

 そう思っていた矢先、街の中から数十人の冒険者らしき人たちが出てきて大声で言った。


「フェルステさんがもうモンスターと戦ってるぞ!俺たちも続け〜!」

「おお!」


 そう言って、冒険者の人たちはモンスターの大群に向かって行き、戦闘を始めた……モンスターと一緒に冒険者の人が居るんじゃ、アリアさんはさっきみたいに広範囲で魔法を放つことができない。

 だが、アリアさんはその対処能力で、すぐに目的を切り替えて、空中に居るモンスターだけの攻撃に専念した。

 そのおかげもあって、具体的な数はわからないけど、地上も空中もかなりモンスターが減って行った……すごい、この調子なら本当にこの一万体のモンスターを全滅させられる!

 結局アリアさんには俺の助けなんて要らなかったけど、とりあえずアリアさんが無事なら俺はそれで────


「……え?」


 と思ったら、アリアさんは何故か空中に浮いたままどこかに移動し始めた……ここからじゃよくアリアさんのことが見えない。

 でも、アリアさんのことを追いかけるためには、空中に浮かないと────


「……空中に、浮く」


 アリアさんが空中に浮いているところは今まで何度も見てきた、ちゃんと教えてもらったことはないけど、その魔力の扱い方は何度も見てきた。


「……もしかしたら、何かアリアさんの助けになれるかもしれないこの状況で、ずっとアリアさんのことを見てきた俺が、そのアリアさんのしていることをできないなんて言ったら、それはアリアさんの弟子失格だ」


 俺は風魔法で一気に上空に飛んで、身の回りの空気に風魔法で干渉することで、どうにか空中に浮くことを持続できた。

 だが、いきなりできたことをそこまで制御できるはずもなく、俺は進むことすらできなかった。


「どうすれば……」


 俺が悩んでいると、何を思ったのか、アリアさんは地上に突撃した。


「アリアさん!?」


 どう考えても危険な行為だ……制御ができないなんて言ってる場合じゃない!

 俺は風魔法で無理やり俺自身を押して、真っ直ぐアリアさんの方に向かった……無理やり自分の体を風で推してるせいで呼吸が苦しいけど、今はそれよりもアリアさんだ。

 地上に突撃したアリアさんは、一体のモンスターを倒してすぐに空中に離脱しようとしたようだが、それを地上のモンスターたちによって妨害されていた。

 ……だが、アリアさんはその無数のモンスターたちにも完璧に対応している。

 ────でも、空中に居る俺には、アリアさんがその一体を倒した瞬間に、空中に居るモンスターたちがアリアさんの方に突撃するのが見えていた。

 ……スライムも倒せないと言われている俺なんかじゃ倒せないかもしれないけど、使えるだけの魔力を使って、アリアさんのことを逃すことぐらいは!

 俺は、魔力を最大限込めて、アリアさんのことを襲おうとしているモンスターたちに炎魔法を放った……かなりの数のモンスターを倒せた!

 すると、アリアさんも俺と同じように炎魔法を放ち、俺よりも倍以上の数のモンスターを倒して、空中に離脱した。

 俺はそんなアリアさんの元に真っ直ぐ向かって行った。


「アリアさん!大丈夫ですか!?」


 アリアさんは、とても驚いた表情をしていた……でも、良かった、アリアさんは無事だ……俺はようやく、アリアさんのことを助けることができたんだ!

 俺は、そのことが素直に嬉しかった。

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