第42話 今度こそアリアさんを助けよう!
「アリアさん……」
ついこの間、アリアさんと今まで以上に親密になれたと思ったのに、どうしてこんなことになってしまうんだろう。
その理由が俺にはわからなかったが、とりあえずわかっていることは……今まで一年以上も修行を頑張ってきたのに、結局俺は今アリアさんのことを見届けることしかできな────
「アリアさんのことを追いかけなくても良いんですか?」
「……え?」
俺の前に立っているミレーナさんが、俺にそう聞いてきた。
「……前も似たような状況があって、その時も俺が追いかけたせいでアリアさんに大きな迷惑をかけそうになったんです、だから────」
「それがアディンさんの本心ですか?」
……本心、かと聞かれればそうではない。
もし俺にアリアさんと同等以上の力があれば、迷わずアリアさんの後を追って、アリアさんと一緒に戦いたい。
「……」
でも、俺にそんな力はない。
俺がそれに返せないでいると、ミレーナさんは一度ため息をついてから言った。
「本当に……見ていて不安になるお二人ですね、互いが互いのことを思っているのに、それがこうも噛み合わないとは……お二人のことはお二人のことですので私には何も言えませんし、今は受付嬢全員でそれぞれ冒険者さんのところに今回の件を報告するよう言われているので、私はもう行かなくてはなりませんが……私から言えることは────もし今アリアさんの後を追わなければ、後悔することになるかも知れませんよ」
「……後悔?」
「もう今後、アリアさんと会うことはできないかもしれないということです」
……え?
アリアさんと会うことは、できない……?
……まさか────
「師匠が負けるって言うんですか?」
「はい、その可能性も十分考えられます」
「っ……!そんなわけないじゃないですか!」
俺は思わず大きな声でそう言ってしまったが、ミレーナさんは落ち着いた様子で言った。
「魔王軍幹部討伐……あの時、アディンさんにアリアさんが無事に済むかどうかと聞かれた時、私はこう答えました……『アリアさんなら高確率で無事に達成してくださると思いますよ』と……ですが、今回は高確率で無事に達成するではありません、負ける可能性も十分考えられると言っています」
「そんな……そのモンスターの大群の中に、アリアさんが負けるかもしれないほど強いモンスターでも居るんですか?」
「いえ……少しだけAランククエストやBランククエスト級のモンスターが居ると聞いていますが、アリアさんならその程度なんの問題もないでしょう」
「だったら────」
「今回は……数が多いんです」
……数?
モンスターの大群って言うぐらいだから数は多いんだろうけど、どれだけ数が居たって、アリアさんはそれで負けるような力量じゃない。
……でも、そんなことはミレーナさんもわかっているはず。
「……その数っていうのは、どのぐらいなんですか?」
「地上と空中合わせて一万体だと聞いています」
「い、一万体……!?」
「通常、一つのクエストで討伐対象以外のモンスターを討伐するモンスターは、平均して十体ほどだと言われています……つまり今回の大群を全滅させるには、千回分のクエストを行わないといけないということです」
……どれだけ数が居たって、アリアさんには勝てないと信じていた俺だったが、一万体と聞くと、それも絶対じゃないと思ってしまった。
「でも……他の冒険者の人も居るんですよね?だったら────」
「アリアさんは自分の力を過信する傾向の強い方です……それほどの実力を持っていますが────少なくとも、他の冒険者の方と連携したりはしないでしょう」
「……」
また俺のせいでアリアさんに迷惑をかけたらどうしようとか、俺なんかじゃアリアさんの助けにならないと思って、色々とアリアさんの元に行かなくても良い理由を探していた……でも────これでアリアさんと会えなくなるんだったら、俺は……!
「俺、行ってきます!」
「はい、場所は草原側の街の入り口です……アリアさんを助けてあげてくださいね────私も、数名の有力な冒険者の方に今回の件を伝えたら、すぐに向かいます」
「心強いです!」
そう言ってから、俺はすぐに宿舎を出て、ミレーナさんに言われた通り街の入り口に向かった……今度こそ、俺がアリアさんを助けて、アリアさんと一緒にモンスターと戦って、街を守ってみせる!
だからアリアさん、どうかまだ……無事で居てください!
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