第41話 アリアさんは約束を忘れてほしい!
「ねぇねぇ!約束だよ!絶対に二人で強くなって、次に会う時には一緒に悪いやつとか怖いモンスターとか倒してクエストいっぱい達成して、一緒に楽しく遊ぼうね!」
「うん!約束!次に会う時はお互いSランク冒険者になってるかな?」
「アディンくんがSランク冒険者だったとしたら、私はその時にはSSランク冒険者になってないとね!」
「そんなのあるの?」
「無かったら私が作るの!アディンくんは今四歳で、私は七歳で三歳も私の方年上なんだから、私は常にアディンくんより強くいないと!」
「俺だってすぐに強くなって、SSランク冒険者になるよ!」
「じゃあ私はその時にはSSSランク冒険者になってるよ!」
「ずるいよ!」
「ずるくないもん〜!」
そんな会話の途中、突然その光景がシャットアウトされて、俺はベッドの上で上体を起こしていた。
「なんだ、夢か……」
……あの時の、約束。
今となっては名前も忘れてしまった、あの少女との約束……そうだ、俺は今すぐにでもSランク冒険者になって、あの少女を探しに────
「アディンくん、苦しそうな顔してたけど大丈夫?何か悪い夢でも見た?」
そう言って俺の隣で寝ながら俺のことを見ているアリアさんの表情は、とても俺のことを心配してくれている表情だった。
「あぁ、アリアさ────アリアさん!?ど、どうして俺のベッドに居るんですか!?」
寝起きということもあって反応が遅れてしまったが、まず大事なのはそこからだ……と思ったが、アリアさんは落ち着いた様子で言った。
「アディンくんが辛そうな表情してたから、心配で一緒に寝てあげてたの……それより、大丈夫?」
……アリアさんは本当に俺が心配だから俺と同じベッドで寝てくれたようだし、一応同じベッドで寝ること自体は初めてのことではないため、俺は一度アリアさんと同じベッドで寝ていたことに対する動揺を忘れて言った。
「大丈夫です、夢の内容自体は苦しかったり辛かったりしたわけじゃないので……ただ、今日見た夢が七歳の少女と昔した約束の夢で、その夢が二人でSランク冒険者になって一緒に冒険者として活躍する、っていう夢だったんですけど……俺はその約束を全然達成できてないので、もし俺が苦しそうな表情をしてたんだとしたら、夢を見ながらそのことに申し訳なさを覚えてたのかもしれないです」
「……苦しいんだったら、そんな約束忘れちゃおうよ」
「……え?」
アリアさんは俺と同じように上体を起こして、俺と視線を合わせて言った。
「そんな七歳の少女が言った言葉に惑わされて、アディンくんが危ないクエストとかに出て、わざわざSランク冒険者を目指す必要なんてないと思うの」
「ま、惑わされる……?どうしてそんな言い方────」
「アリアさん!アディンさん!大変です!」
俺たちが立て込んだ話をしていると、突然この部屋のドアが開かれて、ミレーナさんが部屋に入ってきた。
「ミレーナ、今大事な話────」
「モンスターの大群が、この街に向かって進軍してきているという報告が入りました!」
「え……!?」
モンスターの、大群……!?
「このままではあと二十分もしない間にこの街に大量のモンスターが侵入してくるようです……どうしていきなりこのようなことになったのかはわかりませんが、今は────」
「迎撃するんでしょ?私一人だけでいいから」
「一人って……待ってください師匠!そんなの────」
「私だけで全部倒したらアディンくんが危機に晒されることはないんだからそれで良いの……アディンくんはちゃんとここで待っててね」
「待ってくださ────」
「あのサキュバス討伐の時のこと、覚えてるよね?」
「っ……!」
……あの時はアリアさんの言いつけを守らずに、俺が独断で行動してしまったせいで、あと少しで本当に危なかった。
今思えばその魔王軍幹部というのはエテネーラさんだったため、話せばなんとかなったかもしれないが、そんなものは結果論に過ぎない。
「じゃあ、行ってくるね」
「……」
そう言うアリアさんのことを俺は止めることができずに、部屋から出ていくアリアさんのことを見届けることしかできなかった……そして、この部屋には俺とミレーナさんだけが残された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます