第39話 スモールオーシャンを楽しもう!

 ミレーナさんと一緒に色々と魚の水槽を見て回った後、次はモンスターが入っている水槽のゾーンへとやって来た……危険性はないということだったが、それでもモンスター、観察しておいて損はないだろう。

 早速一体目を見てみると、魚は一見普通の小さな魚のように見えたが、よく見ると定期的に体から電気を放っていた。


「電気の通りやすい海でこんなモンスターがいたら結構危なそうですね」

「このモンスターは基本的には群れを作るモンスターなので、特に危険で、セーフティーオーシャン以外の海ではかなりの数を観測されているので、普通の海に入る時は最低限雷関連の対策はしておかないといけません」

「なるほど……」


 セーフティーオーシャンの防具店にはモンスタの出現が想定されているから特に何もなかったが、きっと他の海の水着を売っている場所にはそういったモンスター対策の水着なんかもあったりするんだろうか。

 そんなことを思いながら他のモンスターたちの水槽も見て、それぞれミレーナさんに色々と対策などを教えてもらった。


「ミレーナさんは本当に色々と詳しいんですね」

「本などで知識を蓄えていますから」


 改めてミレーナさんのすごいところに尊敬の念を抱いていると『ウォーターランド』と書かれた気になる門があった。


「……この門は?」

「各国から集められた凄腕の魔法の使い手たちが、水魔法のみを使って何かしらのパフォーマンスを行う場所です、この時間帯はちょうどその時間だと思いますが、見に行ってみますか?」

「はい!」


 俺とミレーナさんは、一緒にその門を開いて、その奥に歩いた……各国から集められた凄腕の魔法の使い手たち、か。

 アリアさんほどの人はそうそう居ないだろうけど、きっとあっと驚かせられるような────


「アリア=フェルステです、アディンくんとの時間を放棄してまでこの場所に来たけど、正直早く帰りたいので────適当に!」


 俺たちがそのウォーターランドと呼ばれる、闘技場を彷彿とさせるような場所に入った途端、観客席ギリギリまでが膨大な水によって覆い尽くされた。

 その瞬間に、観客席から大きな拍手が起きる。


「────ていうか、師匠!?」


 予想もしていなかったことに感情がついてきていなかったが、どうしてアリアさんがここに居るんだ……!?

 しかも真ん中に……!


「凄腕の魔法の使い手……アリアさんが呼ばれたとしても、特に不思議はありませんね」

「それは、そうですけど……」


 まさかここに来てもアリアさんのことを見ることになるなんて……ミレーナさんはパフォーマンスをする場所って言ってたけど、アリアさんの場合は魔力量がすごいから適当に大量の水魔法を放つだけでもそれがすごい迫力のあるパフォーマンスとして完成されていた。


「……ん?」


 アリアさんは何かに気づいたように俺の方を見ると、大きな声で驚きの声を上げた。


「え!?ア、アディンくん!?もしかして、私のパフォーマンス見に来てくれたの!?ど、どうしよ!もっとちゃんと真面目にやっとけば良かった……!でも、まだ私に割り当てられた時間あるから、その時間を使ってアディンくんに────ミレーナ……?」


 アリアさんは途中まで身振り手振りで慌てている様子だったが、俺の隣に居るミレーナさんのことを見てその動きを完全に止めた────かと思えば、手をミレーナさんの方に向けた。


「……離れた方が良さそうですね」

「……そう、ですね」


 俺とミレーナさんは、走ってその場を後にして、スモールオーシャンから出た……最後は色々とハプニングが起きてしまったものの────


「ミレーナさん、今日は楽しかったです……貴重な経験をさせてくれて、ありがとうございました」

「いえ、私の方こそ、アディンさんと二人でお出かけすることができてとても幸せでした……よければまた今度、二人で一緒にどこかへお出かけしませんか?」

「はい!」


 そして、俺はミレーナさんとギルド前で別れると、すぐに宿舎に帰った……そして、そこには明らかに怒った様子のアリアさんが待ち構えていた。

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