第34話 みんなで恋愛経験の話をしよう!

「────なるほどね」


 ご飯を食べにお店の中に入った俺たち四人は、早速エテネーラさんの事情について話していた。


「はい、つまり要約すると、エテネーラさんは本当は街を攻撃したりはしたくないけど、サキュバスの性質上仕方なくだったってことなので、本当は悪い人じゃないんです」

「でも、それを理由にアディンくんから人間の源を取ろうとしたっていうのは、かなり悪い人だと思うんだよね」


 アリアさんがそう言うと、背筋を正して礼儀良くご飯を食べていたシュテリドネさんが咳き込んでから言った。


「アリア=フェルステ……!食事中にそういった話をするな!」

「はぁ?シュテリドネこういう話弱すぎない?その見た目ならちょっとは寄ってくる男も居そうなのに、恋愛とかしたことないの?」

「するはずがない、そんな暇があるなら一つでも多くのクエストを達成する……そういう君はどうなんだ?今まで恋愛をしてきたのか?」

「今まで……は、興味なかったけど……」


 一瞬アリアさんは俺に視線を送ったが、すぐにシュテリドネさんの方に視線を戻して言った。


「そ、それより!問題はこのサキュバスをどうするかってこと!ミレーナもミレーナだけど、このサキュバスはミレーナとは話の質が違うぐらいアディンくんの教育上に悪いんだから!」

「一応エテネーラさんと話したのは、エテネーラさんに魔力をあげたらまた必要になった時に俺のところに来てもらうっていう話をしてたので、その形でいいと思いま────」

「待ってアディン」


 今までずっと黙って食事をしていたエテネーラさんが、ようやく口を開いて俺の言葉を止めた。


「どうしたんですか?」

「考え直したんだけど……私、アディンの近くに居ることにする」

「え……?」

「近くって言っても、同じ街に居るってだけだから、四六時中アディンの周りに居るわけじゃないよ……本当はそうしたいけど、そうしたらそこのアリア=フェルステが怒りそうだから」

「当たり前でしょ、今回は私の勘違いだったけど、実際もしアディンくんが洗脳されてそのサキュバスの好きなようにされたりしたらって考えるだけで、今でも不快感すごいし」


 俺の隣に座っているアリアさんは、俺の手を優しく握ってそう言った……俺が洗脳されていると勘違いしていたから話は噛み合わなかったけど、それも含めてきっとアリアさんが俺のことを大事に思ってくれているからなんだろう。


「……アリアさん、今回もご心配おかけしました」

「いいの、今回は本当にただの私の勘違いだったから……でも、あんまり私に心配かけないでね」


 そう言って微笑むアリアさんの笑顔もまた、とても優しいものだった。


「さっきアリア=フェルステとシュテリドネ?が話してたのと同じ内容だけど、アディンは今まで恋愛とかしたことあるの?」

「はい、ありますよ」

「え!?」

「え……?」

「……」


 俺が恋愛をしたことがあると答えると、エテネーラさんは驚き、アリアさんは驚愕と動揺が混じったような反応を見せ、シュテリドネさんは食事する手を止めて俺のことを見ていた……え?

 そんなにおかしなことを言ってしまっただろうか……俺が三人の反応に疑問を抱いていると、アリアさんとエテネーラさんがさらに強く反応を見せた。


「ち、違う、違う……アディンくんが、そんなわけ……」

「嘘……じゃあ、もしかしたらアディンもうしてるのかな……私が一番最初に忘れられない体験作ってあげたかったのに……」

「恋愛って言っても、相手がどう思ってたのかはわからないですし、俺も小さかったので恋愛って言えるのかはわかりませんけど……小さい時に、一度だけそんな感じのことがあったんです、とても魔法が上手な女の子と」

「……それって────」

「なんだ、それならアディンは実質まだ恋愛とかそういう経験はないってことね、良かった」


 アリアさんが何かを言おうとした時、エテネーラさんはそう言った……良かったかと聞かれればそれはわからないが、それよりも気になるのはアリアさんの方だ……何か、少し考え込んだような表情をしていたような気がする。

 とはいえ、その後すぐにアリアさんはさっきまでの状態に戻ったため、俺は特に気にすることもなくそのまま四人で一緒に会話を交えながらご飯を食べ終えた。

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