第31話 アリアさん対シュテリドネさん!
「……真剣勝負?私と?今は早くアディンくんの洗脳を解いてあげないといけないから、シュテリドネのわがままに付き合ってる暇ないんだけど」
「わがまま……?」
「魔術大会で私に負けたけど、あの時は本当の力を発揮できなかったなんて、そんなの子供が使いそうな言い訳だよね」
「魔法の扱いでアリア=フェルステに完敗していることはとっくに認めている、だが前にも言ったが私は剣士だ、剣の使えない魔術大会では負けてしまったが、剣を使える戦いであれば……負けない」
そう言ってシュテリドネさんはアリアさんに剣先を向けた。
だが、そのシュテリドネさんの態度とは裏腹に、アリアさんは大きなため息をついて言った。
「アディンくんは洗脳されてるから仕方ないとして、どうしてシュテリドネがサキュバスを庇うの?シュテリドネはわかってないのかもしれないけど、そいつが魔王軍幹部で、強力な魔力反応っていうのもそいつが原因だよ」
「そんなことはこの状況を見た時から理解している」
「だったら何?もしかして、シュテリドネもそのサキュバスに洗脳されちゃってるの?」
「私がこの場に来てから一瞬でもそんな気配を感じたか?感じていないはずだ、そもそも私は洗脳などされていないからな……私がこのサキュバスを助けたのは、彼女がアディン=アルマークス君を守ろうとする素振りを見せたからだ」
「そんなのアディンくんの洗脳を強めるための行動に決まってるじゃん」
「……私にはそうは見えなかった」
「……話にならないね」
「そうみたいだな」
アリアさんは右手をシュテリドネさんの方に向けると、強力な雷魔法を込めて────それをシュテリドネさんに放った。
「シュテリドネさん!」
魔術大会の時と同じ……違う、それ以上の魔力!
あの時シュテリドネさんは、水魔法以外では全くアリアさんに歯が立たなかった……仮に今水魔法でアリアさんの雷魔法に対抗したとしても、水は電気を通しやすいから逆効果になる。
俺が援護しようかとも思ったが、あんな強大な魔力を俺が止められるわけがないし、下手したら逆効果になるかもしれない。
俺は、シュテリドネさんの力に賭けることにした────だが、シュテリドネさんは、その雷が自分の目の前に来るまで、一向に魔法を放とうとしなかった。
「シュテリドネさん……!?早く魔法で対抗したり、避けたりしないと────」
「その必要はない……言っただろう、私は剣士だと!」
その次の瞬間、シュテリドネさんが剣を横に振るうと、アリアさんの雷魔法が突如軌道を変えて、空高く飛ばされた……雷魔法、それもアリアさんほどの強力な魔力を持った人の雷魔法の軌道を変えるなんて、ただの剣でできるわけがない……俺が一体どうやってあんなことをしたのかと疑問に思っていると、シュテリドネさんが口を開いて言った。
「私の魔法の使い方は、今ではほとんど使っている者のいない付与魔法というのが主な使い方だ……剣に魔法を付与することで、その剣は本来の力を凌駕する」
「付与魔法……今回は風魔法を剣に付与して雷の軌道を変えたってことね……でも、物に頼るのが非効率だからって生み出されたのが体内から直接魔法を放てるようにする今の魔法なのに、わざわざそんな古いものに頼るなんて────」
「すぐ相手を侮るのは君の悪い癖だ、今までは一度も無かったのかもしれないが……今後はその悪癖を治せるように、私が今君を倒してあげよう」
「一回防いだぐらいで……」
だが、その一回だけではなく、その後も何度か二人は剣と魔法を交わした……魔術大会の時とは違って、シュテリドネさんも剣士としての本領を発揮しているからか、あの魔術大会の時のハイレベルな戦いすらお遊びに見えるほど次元の高い戦いだ……俺がその二人の戦いに目を離せないでいると、隣に気配を感じた俺はその気配の方に目を配った……すると、そこに居たのはエテネーラさんだった。
「エ、エテネーラさん!?」
「よく考えたら私ずっと屋根の上居る理由なかったから、アディンと話したくて下りて来ちゃった……ねぇアディン、一つだけいい?」
「はい、なんですか?」
俺がそう聞いた次の瞬間、エテネーラさんは俺のことを抱きしめて言った。
「────大好き」
◇
この話が年内最後の話となります!
2023年、この物語をここまでお読みいただきありがとうございました!
次は、2024年にお会いしましょう。
良いお年をお迎えください!
◇
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