第28話 アディンは嬉しい!

「俺がエテネーラさんに魔力をあげれば、エテネーラさんは男の人から魔力を得るために街を攻撃する理由も無くなるし、そうなればエテネーラさんに街を攻撃したりして欲しくないっていう俺のお願いも必然的に叶うことになって、良いことづくめだと思うんです」

「それは、そうだけど……良いの?魔族で、サキュバスで、魔王軍幹部の私に魔力なんてあげても」

「エテネーラさんが優しい人だってわかったので、それがわかったなら、他のことは全部些細なことです」

「っ……!些細な、こと……」


 エテネーラさんは少し沈黙すると、胸元に手を当てながら笑顔で言った。


「ありがとう、救われた気がしたよ……あの異常な力を持ったアリア=フェルステの弟子ってだけあって、やっぱり君も相当変わってるね」

「そうですか?」

「うん、私たちサキュバスはどうしても男と関わらないと生きていけないから、基本的に男が魅力的に感じる体で生まれてくるの……私は特にそれが顕著なはずなんだけど、君は最初以外は私の体に目を奪われたりしてなかったからね」

「最初は、その……すみません、少しでも助けになるために何か得られる情報があればと思って見てたら、思わず見惚れそうになっちゃってました」

「謝らないで、その時だけで済んだのが本当にすごいことだから……それに、君の目が私に奪われるなら、それも悪くないね」


 エテネーラさんはそう言って妖艶に笑う。

 今の話で色々と聞きたいこともあったが、今はそれよりも今後のことについて話すのが優先事項だと思い、俺は今後のことについて話をすることにした。


「エテネーラさん、今後俺がエテネーラさんに魔力をあげるっていう話に関してなんですけど、魔力はどのぐらいの頻度で必要なんですか?」

「毎日一日中必要だって言ったら、君は毎日私の横に居てくれるの?」

「え……!?」


 そうなったら、最悪修行中とかは付いてきてもらう、とか?

 でも、もし俺がクエストに行くことになったりしたら、きっと冒険者でもないエテネーラさんを同伴させたりすることはできない。


「それは、ちょっと難しいですけど……でも、もし本当にそうだったなら、何か対策を考えます」

「考えてくれるんだ……でも安心して、適切な量をもらえれば案外結構持つから、必要になったら私が君のところ行くよ」

「来てくれるんですか?ありがたいです」

「……でも、魔力を一気に失う感覚っていうのはしんどいから、本当は君にそんな思いして欲しくないんだけどね

「魔力を一気に失う……」


 魔法の修行をしてて魔力を使う、という感覚はあっても、失うという感覚は経験したことがないため、確かにどういった感じになるのかはわからない。

 俺がどうにかその感覚を想像してみようとしていると、エテネーラさんは羽を少し動かしながら言った。


「君さえ良かったら、君がしんどくならず、むしろ気持ちよくなった上で、魔力よりもずっと長い間私が魔力を得なくてもいい方法があるの」


 そんな方法があったのか……方法、方法?


「そういえば、人間の源がどうとか言ってましたよね、方法が方法だから興味もない人間の男から取る気にはなれなかった、みたいな」

「……そう、それのこと」

「それって、エテネーラさんは俺に興味持ってくれたってことなんですか?」

「今更?人間の中で……ううん、他の生物も含めて、私が今一番興味、っていうか、もっと────ううん、興味あるのは君だよ……ねぇ、アディンって呼んでもいい?」


 名前呼び……どうやら、本当に俺に興味を持ってくれているようだ。


「はい、良いですよ……やっぱり、嬉しいですね」

「嬉しい……?」

「エテネーラさんみたいに強くて優しい人に興味を持ってもらたことが嬉しいんです……俺も、もっと強くなりたいので」

「闇魔法なら、サキュバスの得意分野だから色々と得意だけど、それ以外は君の方が────」


 エテネーラさんが何かを言いかけた時、俺とエテネーラさんの頭上から俺たちの隣に雷魔法が通ったと思ったら、真上から大きな声が聞こえてきた。


「アディンくん!そいつから離れて!!」


 そこにはアリアさんが居て、今にも魔法を放てるように手を俺たち……正確には、エテネーラさんの方に向けていた。

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