第27話 エテネーラさんの話を聞こう!
「エテネーラさん!俺は今闇魔法で視界を奪われてて、今も居るのかわかりませんけど、もし居るなら逃げてください!」
「何、言ってるの……?もしかしてまだ気づいてないの?私は君のことを騙して、不意を突くために────」
「俺のことを押さえてる人も、今は俺のことを押さえるために両手を使ってて動けないはず……だから、逃げてください!」
何が起きたのかはわからない……だが、今俺が何をすべきかはわかる。
それは────エテネーラさんを、この場から無事に逃すことだ。
一応さっきご飯は一緒に食べたから体力はしばらく大丈夫だと思うし、俺がここでどうにか粘ることができれば、アリアさんたちが馬車に戻ってきて、そのすぐ近くにあるこの路地裏の魔力に気づいてくれるかもしれない!
「っ……」
俺がその考えに至っていると、何故か俺の腕を押さえていた人の力が少し弱まったため、俺はその隙を逃さずに今度は俺が俺の腕を押さえている人の腕を掴むと、その人の両腕を押さえて、さっきとは逆の形となった。
そしてそれと同時に、俺の闇魔法も解けた。
「闇魔法も解けました、大人しくしてくださ────え?」
闇魔法が解けたことで、俺は初めて俺の動きを拘束してきた人でありながら、俺が今両腕を押さえている人の姿を見た。
すぐに目立って見えたのは黒い羽で、頭には2本の角も生えているようだった……最近見た特徴だ、どこで────そうだ!あの魔王軍幹部の女性だ!
……でも、どうしてこんなところに居るんだ……!?
────と、後ろ姿だけを見て驚いてしまったが、よく考えたらあの魔王軍幹部の女性と同じ種族ってだけかもしれない。
俺はその女性の両腕は押さえたままにしながら、顔を確認した。
「……え?」
耳が長くて、本能的に魅入ってしまいそうな美しさを持っているその人の顔は……俺がさっきまで一緒に過ごしていた、エテネーラさんと同じ顔をしていた……だが、大きく違うのは、2本の角と黒い羽を生やしているということで、やっぱりこの人はあの魔王軍幹部の女性と同じ人だ。
「……どういう、ことですか?エテネーラさん、なんですよね?」
「……」
エテネーラさんは、両腕を押さえられているにも関わらず特に慌てた様子を見せる様子もなく、沈黙していた。
「エテネーラさん、どうしてこんなことを?」
俺がそう聞くと、エテネーラさんは少しの沈黙の後、空を見上げて言った。
「最初は君のことを騙して不意打ちで簡単に倒して飼おうと思ってたのに、純粋に私のこと心配してくれてる君のこと見てたら……なんだろうね、この気持ち……初めてのことで私もわからないけど、君の優しさを裏切るようなことはしたくないって思ったのかな」
エテネーラさんは顔を下げて続ける。
「抵抗しないから、私のこと倒していいよ、私の首持って行ったら、お金も人気も手に入ると思うよ?今までは人間が私のことを倒したことでそんな良い思いになるとかムカつくって思ってたけど……私を倒したことで君が幸せになれるなら、それはそれで良い気はするから……本当に、こんな気持ち初めて……最後に、君にはいっぱい初めてをもらったね」
ここまで色々と話してくれて、今こうして優しく微笑むエテネーラさんのことを、俺は────魔王軍幹部の女性とは見れなかった。
エテネーラさんの両腕を押さえていた俺は、その手を離す。
「……え?」
拘束を解かれて困惑しているエテネーラさんに、俺は伝える。
「魔王軍幹部討伐クエストの時の説明で、街を攻撃しようとしてるって聞きました……あれは、本当ですか?」
「……本当」
「じゃあ、もうそんなことしないでください……エテネーラさんにはきっと、そういうことは向いてな────」
「できないの」
……できない?
「どうして、ですか?」
「私はサキュバスだから、定期的に人間の男の魔力か人間の源を取らないと生きていけない……源を取ればかなりの間人間の男が居なくても生きていけるけど……源は、方法が方法だから、興味もない人間の男から取る気にはなれなくて、今まで取ったことないの」
人間の源と、それを取る方法……?
色々とわからないことがあったが、とりあえず……今の話を聞いて、一つだけ確信を持ってわかったことがある。
「エテネーラさんも、本当は街を攻撃したりはしたくないんじゃないですか?」
「うん……でも、そうしないと生きていけないから、もし君が私のこと見逃すって言ってくれたとしても、私はどうにかして人間の男の魔力を得ないといけないの」
「それなら話は簡単です……今後は、俺がエテネーラさんに魔力をあげます」
「え……!?」
さっきまでは落ち着いて話していたエテネーラさんだったが、今はその俺の提案にかなり驚いた様子だった。
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