第25話 アリアさんたちを待とう!

「……見えたぞ、あれが私の故国の、私が普段過ごしていた街だ」

「あれが……」


 数時間ほど馬車に乗って移動していると、ようやくシュテリドネさんの故国のシュテリドネさんが普段過ごしていたという街が見えてきた。

 街並みを見てみると、建物は今まで俺とアリアさんが居た木造建築の多い場所とは違って、石材が多く使われている建物が多いようだ……全体的に神秘的な雰囲気を感じる。

 その街並みに目を奪われていると、あっという間に馬車はその街の前まで着いたので、俺とアリアさん、そしてシュテリドネさんの三人はその馬車から降りた。


「さて、ではこれから早速アリア=フェルステには魔力反応を────」

「ない」

「……ない?」


 シュテリドネさんが、本題である強大な魔力反応を探って欲しいとアリアさんに伝えようとした時、アリアさんは「ない」と即答した。

 何がないんだ……?


「うん、一回だけ強力な魔力反応があったみたいだけど、少なくとも今は強力な魔力反応なんて感じないよ」

「……そうか」


 おそらくもう少し時間がかかると思っていたシュテリドネさんは、アリアさんに対して少し驚いたような様子を見せているが、すぐに切り替えて言った。


「それなら、一応そのことを今回の強大な魔力を探すことに携わっている者たちにも直接伝えてもらう」

「え〜!シュテリドネが報告すれば良いだけなのに、なんで私がそんな面倒なことしないといけないの!?」

「礼儀のようなものだ、何か用事があるならいざ知らず、用事が無いのにも関わらず直接報告に行かないのは、少なくとも冒険者の見本であるべきSランク冒険者の行動ではない」

「私はアディンくんとこの国を見て回って、今までとは違う二人だけの雰囲気を楽しむっていう重要な用事があるんだけど〜!」

「すまないがそれは後にしてもらおう……だが、報告が済んだら、約束通りセーフティーオーシャンを利用しても良いから、その後は好きにしてくれ」

「……そういうことなら」


 アリアさんは不服そうだったが、アリアさんは一応納得した形を見せた……アリアさんは、セーフティーオーシャンをかなり楽しみにしているようだ。

 ということで、俺とアリアさんは、シュテリドネさんに先導される形でその報告すべき人たちが居る場所に向かうべく足を進めた……が。


「ちょっと待って」


 アリアさんが足を止めて、真面目な表情で言った。


「シュテリドネ、今から報告に行く人たちの中に女って居るの?」

「居るも何も、ほとんどが女性だ」

「はぁ!?じゃあそんなところにアディンくん連れて行けないんだけど!」

「勘違いしているようだが、今から行く場所にそのような邪な考えを持っているものはいない」

「アディンくん相手なんだから絶対一人は持つ人居るに決まってる……あ〜!アディンくん!この馬車の前で待ってて!本当にすぐ戻ってくるから!」

「わ、わかりました」

「シュテリドネ!アディンくんを長い間一人にしないためにも最速で行くよ!」

「わかった」


 すると、シュテリドネさんはすごい速さで走り出して、アリアさんは空中に浮いてそのシュテリドネさんの後ろを追った……俺があの二人についていけないから馬車を選んでくれたんだろうけど、あの二人だけだったら数十分ぐらいでこの国に着いたのかもしれないな。

 俺はとりあえず、アリアさんに言われた通り大人しくここで待っていることとしよう。

 ……そう思っていたのだが、近くの路地裏から、ハッキリとは聞こえないが、男の人の話し声だけは大きかったためよく聞こえてきた。


「おい姉ちゃん、良い体してんじゃねぇか」

「人族のオスの分際で、私に何か用?」

「おうおう、言ってくれんじゃねえか、泣かせがいがあるってもんだ」

「身の程を────……今魔力使えないんだった……えっと、誰か助けて〜!」


 男の人が物騒なことを言っていると思ったら、助けてという女性の声が聞こえたため、俺はすぐにその路地裏に入った。

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