第24話 シュテリドネさんの故国に行こう!

「アリア=フェルステとアディン=アルマークス君、今少し時間はいいか?」


 アリアさんと修行をするために冒険者ギルドの訓練場に来ていると、シュテリドネさんがそこにやって来てそう聞いてきた。


「……何?今アディンくんの修行中だから、手短にしてね」

「あぁ、わかっている……では単刀直入に言うが────二人とも、私の故国ここくに来ないか?」

「……え?」


 どんな要件があるのかと思えば、シュテリドネさんの故国に俺とアリアさんで……?

 シュテリドネさんが異国から来たという話は覚えているが、それでどうして俺とアリアさんがその国に行くことを誘われているんだろうか。


「なんで私とアディンくんが、わざわざシュテリドネの故国に行かないといけないの?」

「理由は二つある、一つは、私の国で強大な魔力反応を一瞬検知したことから、邪な考えを持ったものが私の国に潜入しているのではないかということで、今は国中が不安に包まれていると電報をもらったことで、私が一時帰国しないといけなくなったからだ」


 強大な魔力反応……確かに、そんな話を聞いたら、国の人たちは常に不安を抱きながら生活することになるだろう。

 だが、アリアさんはそれを聞いても特に態度を変えずに。


「だからって、私とアディンくんがシュテリドネの故国に行かないといけない理由にはならないと思うけど?」


 と、シュテリドネさんの誘いを一蹴した。

 シュテリドネさんは、それも予測済みだったのか、表情一つ変えずに続けて言う。


「それで二つ目の理由に繋がるが……アリア=フェルステには、その強大な魔力反応を探る手助けをしてほしい」

「はぁ……?なんで私が?」

「私はSランク冒険者として、他のSランク冒険者とクエストを共にすることも多かったが、アリア=フェルステよりも魔法に優れたものが居なかったからだ」

「それは私がそこらに居るSランク冒険者なんかより強いのは当たり前だけど、アディンくんとの普段の日常を引き換えにしてまでシュテリドネの国に行く理由にはならな────」

「もしそれを成功させ、国の不安を取り払ってくれたのであれば、世界単位で見ても片手で数えられるほどしかない、セーフティーオーシャンで息抜きしてくれてもいい」

「……え?」


 今までシュテリドネさんの誘いに反対の姿勢を見せていたアリアさんが、初めてその態度を少し和らげて目を見開いた。

 ……セーフティーオーシャン?


「あの、すみません、セーフティーオーシャンってなんですか?」


 聞き慣れない単語だったため、俺はその単語の意味を聞いてみる。

 すると、シュテリドネさんがすぐに答えてくれた。


「簡単に言うと、セーフティーオーシャンとは、だ、意外に思うかもしれないが、実はモンスターが出ない海というのは、さっきも言った通り世界単位で見ても片手で数えられるほどしかない……しかも、普通の海なら魔力の変動などによって荒波が発生したりするものだが、セーフティーオーシャンではそう言ったこともない……つまり、泳ぐなり遊ぶなり、好きにできるということだ……そんな貴重な海だから、本来なら他国から来た者を入れたりはできない────が、国の不安を取り払った勲功者になら、その限りではないだろう」

「なるほど……」


 この世界には、そういう特殊な場所もあるのか……でも、泳いだり遊べたりできるってだけで、アリアさんはきっと意見を変えたりはしないだろう。

 ……だが、アリアさんの方を見てみると、何故かその目はキラキラしていて「海……水着……アディンくんと、水の掛け合い……」と、小さな声で何かを呟いていた。

 ────そして。


「シュテリドネ!早く案内して!そんな魔力反応ぐらいすぐに見つけ出して、早くアディンくんと海で遊ぶから!」

「そう来なくてはな……では行こうか」

「え、本当に行くんですか!?でも、今の聞いた感じ俺にできることはなさそうですけど、俺も行くんですか……?」

「アディンくんは私の傍に居るのが一番安全だから、私と一緒に来ないといけないに決まってるよ!ていうかアディンくんと離れ離れとか無理だから私!」

「そう、ですね……俺も師匠とは離れたくないので、わかりました!」


 こうして、俺とアリアさんは、シュテリドネさんの誘いによって、シュテリドネさんの故国行くことになった。

 シュテリドネさんの故国……一体、どんなところなんだろうか。

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