第23話 アディンくんを攻略しよう!②

「アディンくん!魔術大会とか魔王軍幹部討伐とか、色々落ち着いたから、久しぶりに一緒にお出かけしようよ!」

「……息抜きは大事だと思いますけど、修行────」

「魔王軍幹部討伐の時、アディンくんが危ない目に遭っちゃうかもって、私本当に心配したよ……私の作戦が上手く行ったから良かったけど、もしあの時一歩間違えてたら、こうしてアディンくんと過ごすことも────」

「わかりました、出かけます、出かけますから」

「やった〜!」


 できることなら修行に専念したかったが、あの時はアリアさんとの約束を破ってしまったという負い目もあるから、そのことを引き合いに出されると承諾せざるを得ない。

 ということで、俺とアリアさんは一緒に出かけるべく宿舎の外に出た。


「今日は────」

「アリアさんにアディンさん、こんにちは」


 アリアさんが何かを話し始めようとした時、宿舎の隣にあるギルドから、アリアさんを担当している受付嬢であるミレーナさんが出てきた。

 アリアさんは言葉を遮られたことが不快だったのか、ミレーナさんに怒りながら言う。


「ミレーナ!今から今日の予定言おうとしてたのに話しかけないでよ!」

「私は挨拶をしただけなのですが……今日はお二人でどこかに出かけられるんですか?」

「そう!今日は、アディンくんのことをドラゴンに乗せてあげようと思ってるの」

「え……ドラゴン!?」


 俺はその響きに、思わず感情と声を高ぶらせてしまった。

 ドラゴンって、あの大きくて翼のあるドラゴンのこと……だよな?

 俺は子供の頃から、なんとなくドラゴンに乗ってみたいと思っていたため、素直にアリアさんの言ったことが嬉しかった。


「そうだよアディンくん!嬉しい?」

「本当に嬉しいです……でも、どうやってドラゴンに乗るんですか?」

「私の知り合いにこの国直属の竜騎兵団の団長が居るから、そいつにお願いして特別にドラゴンに乗せてもらえることになったの!アディンくん前からドラゴン乗ってみたいって言ってたからね」


 竜騎兵団……確か、ドラゴンに乗って戦う人たちのことだ。


「師匠、本当にありがとうございます……!」

「このくらいなんてことないよ!どう?私のこと好き?」

「はい!」


 俺が元気よくそう返事をすると、アリアさんは頬を緩ませて嬉しそうな顔をした……そして、その一連のやり取りを聞いていたであろうミレーナさんが小さく呟いた。


「なるほど、アディンさんの望みを叶えることで、自分の好感度を上げようという魂胆ですね」

「は、はぁ!?ミレーナ!人聞き悪いこと言わないでくれる?私は純粋な気持ちでアディンくんのしたいことを実現させてあげてるだけだから!アディンくん!あんなアディンくんの教育に悪い体してる女からは離れて早く行くよ!」

「は、はい……ミレーナさん、また!」

「はい、お気を付けて」


 話の流れがよくわからなかったが、俺は一応ミレーナさんに一礼すると、ミレーナさんは微笑みながらそう言ってくれた。

 アリアさんに連れられてきたのは、街の近くにある広い草原……そこには一人の鎧を着た、アリアさんが言うには竜騎兵団の団長という男性と、赤色の大きなドラゴンが居た。


「ドラゴン……!実際に見るの初めてです!」

「やぁやぁアルマークス、喜んでくれているみたいで嬉しいねぇ、今日は見るだけじゃなくてドラゴンに実際に乗ってもらうけど、心意気はどうだい?」

「いけます!!」

「オーケーだ!なら乗ってくれ!とりあえず街の空を一周してみようか」


 陽気な団長さんとアリアさん、そして俺は三人でドラゴンの背中に乗ると、早速団長さんはドラゴンに飛ぶように合図を出して、いざ飛び出すとドラゴンの操縦を始めた……とても速い速度で空を飛んで、街から自然まで、色々なものが見える。

 ……すごい景色だ。


「アルマークス、実際にドラゴンに乗ってみた感想はどうだい?」

「す、すごいです!ドラゴンも、その背中から見える景色も」

「ははっ!そうだろうそうだろう!フェルステの弟子のアルマークスなら、いつでも竜騎兵団に来てくれて構わないから、その気になったらいつでも訪ねてくれ」

「あ、ありがとうございます!」


 今の俺には冒険者以外の道は見えないが、団長さんからそう誘われるのは素直に嬉しいと感じた。


「……アディンくん、すごい景色だね、私たち二人になったみたい────」

「団長さん!ドラゴンの操縦って、やっぱり難しいんですか?」

「慣れればそこまで難しいものじゃないけど、最初は小さいドラゴンから始めた方がいいと思うよ」

「そうなんですね」

「……アディンくん、高いところって平気?もし良かったら手を────」

「団長さん!ドラゴンって、他にはどんなドラゴンが居るんですか?」

「ん?そうだねぇ、黒色のドラゴンとか青色のドラゴンとか、大体どんなドラゴンでも居るけど、僕が一番驚いたのは虹色のドラゴンの話かな、実際に見たことはないんだけど、虹色の輝きを放つドラゴンが世界のどこかには居るらしい」

「その話聞いたことあります!」

「そうなのかい?なら、こんな話は────」


 その後、街の空を一周している間、俺と団長さんは、ずっと二人で楽しくドラゴンについて話していた。

 そして、あっという間に街の空を一周し終えると、俺は団長さんにお礼を言って、アリアさんと一緒に街に帰った。


「アリアさん!今日はありがとうございました!」


 俺はアリアさんに今日のお礼を言った……が。


「何?ドラゴンの何がそんなに良いの?私はアディンくんのことこんなに大事に思ってるのに……今日だってアディンくんのこと喜ばせてあげて、二人でドラゴンの背中でゆっくり話でもして、良い感じの雰囲気になったら距離縮められるって思ってたのに、なんであいつとドラゴンの話で盛り上がるの?ドラゴンなんてちょっと体が大きくて空飛べるだけで、私だって空ぐらい飛べるし……」


 アリアさんは俺には聞こえない声で、ずっと何かを呟いていた……きっとアリアさんも、ドラゴンについて色々と衝撃を受けたんだろう。


「今日もアディンくん攻略は、失敗……」


 俺は、ずっと小さな声で何かを呟いているアリアさんと一緒に宿舎に帰って、次の日からまたアリアさんに修行をつけてもらうことにした。

 次の日のアリアさんは、何故か少しだけ拗ねている様子だった。



 この作品が連載され始めてから三週間が経過しました!

 ここまでこの作品をお読みいただいた方々には本当に感謝しかありません。

 ここまでこの作品をお読みいただいた皆様の気持ちなどを、いいねやコメント、☆などで教えてくださるととても嬉しいです!

 作者は今後も楽しくこの物語を描かせていただこうと思いますので、読者の皆様もこの物語を楽しんでくださることを願っています!

  今後もよろしくお願いします!

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