第22話 アリアさんに謝罪しよう!
「────なるほどね」
ひとまず魔王軍幹部討伐クエストから帰宅した俺とアリアさんだったが、今の状況はアリアさんが宿舎のいつも俺が寝ているベッドに足を組みながら座っていて、俺がその前で正座をしているという状況で、俺はことの経緯……正確に言うと、魔王軍幹部と戦うというアリアさんのことが心配で、万が一にもアリアさんがその魔王軍幹部に負けてしまったらという不安が募り、アリアさんの助けになれればと思ってアリアさんの後を追ってしまったということを全て事細かにアリアさんに話した。
俺がその話をしている間、アリアさんはいつもの優しいアリアさんではなく、師匠としてのアリアさんの対応を取っていた。
そして、アリアさんは師匠としてのアリアさんのまま口を開いた。
「アディンくんの気持ち自体は嬉しいものだけど、もし相手が慎重な性格だったら、そのアディンくんの気持ちのせいで取り返しのつかないことになってたかもしれない……厳しい言い方だけど、アディンくんは今回、それだけ危ないことをしたんだよ」
「……ごめんなさい」
「今回みたいなことが起こらないように、今回のアディンくんの悪かったところを整理しよっか」
「……はい」
するとアリアさんは、二本指を立てて言った。
「今回、アディンくんの行動で悪かったのは二つ」
「二つ……?」
アリアさんは、今度は一本だけ指を立てて言った。
「まず本当の大前提で、私を信じることができてなかったこと……私が言ったことを全て妄信的に信じてって言ってるわけじゃないよ?でも、今回は師匠の私の力量を、私自身が平気って言ってるのにアディンくんが信じれなかったっていうのが問題だと思うの、だから今後は、私が平気じゃないって言わない限り……ううん、どんな状況でも私は絶対平気だから、アディンくんは少なくとも私の力はずっと信じて……わかった?」
「……わかりました」
そして、次にアリアさんは二本指を立てると続けて言った。
「次は、ミレーナとかシュテリドネとかの意見を参考にしたこと……アディンくんの師匠は私なんだから、あんな二人の意見を参考にしたりしたらダメだよ……しかも、高確率とか、絶対はないとか、私の力を持ってすれば絶対はあるから!あ〜!話してたらあの二人にムカついてきた!」
アリアさんは怒ったように立ち上がると、その勢いで俺にも言った。
「とりあえず!アディンくんは、私のことだけ見てくれてたらいいの!わかった?」
「はい!……今回は本当にすみませんでした」
俺がそう言って頭を下げると、アリアさんは優しく俺のことを抱きしめて言った。
「アディンくんのことが大事だからずっと怒ってきたけど、本当はアディンくんがこうして私の目の前に居てくれるだけで、私はとっても嬉しいんだよ……でも、だからこそ、私のこと不安にさせないで……一応作戦はあったけど、それでも、もしアディンくんともう会えないって考えたら……本当に、怖かったんだから」
「……」
しばらくの間、安堵感を持って俺のことを抱きしめ続けるアリアさんと静かに過ごしていると、次第にアリアさんがいつもの元気を取り戻してきて言った。
「じゃあ今回のアディンくんのことは一旦これで解決ってことにして、あとはミレーナとシュテリドネにも文句言いに行かないとだね!」
「え……!?」
ミレーナさんとシュテリドネさん……!?
俺が疑問に思っていると、アリアさんは頬を膨らませて言った。
「私の力を軽んじるようなこと言ってアディンくんのこと不安にさせたんだから当たり前だよ!私が魔王軍幹部なんかに負けるわけないのに!」
「あの二人は直接的には何も────そういえば、一度帰ったはずのアリアさんが、どうしてあの幹部の人に気づかれずにあんなに俺と幹部の人に近づくことができたんですか?あの幹部の人もだと思いますけど、俺も全然アリアさんの魔力を感じませんでした」
俺がそう言うと、アリアさんは真面目な表情で返してきた。
「さっき一応作戦はあったって言ったでしょ?それが今アディンくんが言ったことをするための作戦で、あの時は私、あの場を飛び去るまではずっと強い魔力を出してたでしょ?でも戻ってくる時は、魔力を最小限しか出さずに来たの……ずっと強い魔力を感じ取ってたから、あの魔王軍幹部もアディンくんも、一時的に微細な魔力を感じ取ることができなくなって、ってことだね」
あの会話時間でそこまで思いついていたなんて……魔王軍幹部の人が相手でも、どうやらアリアさんにとっては本当にいつもと変わらずに対応できる相手だったようだ。
「それでも、相手は一応魔王軍幹部だから、もし魔力を感じ取るのが得意な相手とかもっと慎重な性格の相手だったらこの作戦はできてなかった……それならそれで他のことを考えてたかもしれないけど、それだけ今回の作戦は咄嗟に思いついたものだったから……アディンくんを失うかもって、本当に不安────っていう話はもうさっきしたから、早くミレーナとシュテリドネに文句言いに行くよ!」
アリアさんは真面目な表情から、いつもの元気なアリアさんの表情に戻ってそう言った……元気なと言っても、内容は文句を言いに行くというものだが、それでも俺はそのアリアさんの元気な姿が見れて嬉しかった。
その後、本当にミレーナさんとシュテリドネさんに文句を言いに言ったアリアさんだったが、当然二人とも謝るようなことはしていないためアリアさんと言い合いになっていた……こうして、魔王軍幹部討伐クエストはひとまず落ち着き、いつもの日常が帰ってこようとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます