第20話 魔王軍幹部討伐を手助けしよう!
「アリアさん、いよいよ……なんですね」
「そんなに心配しないで!すぐ戻ってくるから!」
今日はいよいよ、アリアさんが魔王軍幹部討伐に行く日だ。
ここ最近、俺はこの日のことでアリアさんのことを心配していたが、アリアさんはずっと「幹部なんて言っても弱いから平気だよ!」とか「私にかかれば十秒もかからず終わると思うよ」とか、とにかく仮にも魔王軍幹部という相手を格下に見た発言をしていて、俺は逆にそれが不安だった。
「本当に大丈夫ですか……?」
「アディンくんは心配性だね〜!すぐ終わるから、アディンくんはいつも通り修行して待ってて!」
そう言うと、アリアさんは風魔法で空中に浮くと、すぐに飛び去って行ってしまった。
「……」
俺はここ最近、アリアさんのことが心配で、ミレーナさんとシュテリドネさんが二人で一緒に居る時に、あることを聞いていた。
そのあることというのは、今日の魔王軍幹部討伐クエストで、師匠は本当に無事で済むのかということだ。
すると二人の返答は……
「アリアさんなら高確率で無事に達成してくださると思いますよ」
「そうなんですね……!」
「確かにアリア=フェルステなら、高確率で無事に戻ってくるだろう……だが、物事に絶対はないということは留意しておかないといけない」
「え……?」
「シュテリドネさん……!アディンさんのことを不安にさせてどうするんですか……!」
「それが現実なのだから仕方ない、それにミレーナ=ミリアスさんが高確率と表現しているのも、絶対はないからだろう?」
「それは……」
それでミレーナさんは一度気まずそうにしていたが、すぐに俺の不安を消そうと色々な言葉をかけてくれた……それでも、俺の不安は消えなかった。
そして、俺はずっと考えていた……可能性は低いと思うが、アリアさんが何かしらの要因で魔王軍幹部にやられてしまったら、きっと俺は「あの時アリアさんと一緒に俺が居たら、助けられたかもしれないのに」という後悔をずっと抱え続けることになるだろうということ……でも、俺はそんな後悔はしたくないし、俺がアリアさんの助けになれるなら助けになりたい!
────何より、アリアさんにはずっと笑顔で居てほしい。
「……アリアさん、ごめんなさい」
待っているように言われたアリアさんからの約束を破ってしまうことに対して、もうこの場には居ないアリアさんに謝罪を述べてから、風魔法でできる限り移動速度を速めてアリアさんの向かった方角に足を進めた。
「俺も、アリアさんの助けに……!」
その思いで数十分ほど走っていると、倒れている魔王軍の兵士や、壊れた大量の魔術機が一体に広がっている場所に到着した。
「ここは……もしかして、全部アリアさんが?」
────俺が辺りを見渡していると、俺の後ろから二本の角と黒い羽を生やした、露出度の高い服を着た女性が現れた。
妖艶な雰囲気を放っていて、少なくともただの一般人、という気配ではない。
おそらく魔王軍の人だろう。
俺はすぐに剣を構える。
「えぇ、あのアリア=フェルステが来たと思ったら、また他の冒険者?本当勘弁してよね……」
「あなたは、魔王軍の人ですか?」
推測で攻撃するわけにもいかなかったため、一応確認しておくことにした。
「私のこと知らずに来たの?うん、私は魔王軍────」
俺は相手が魔王軍の人であることが判明した時点で、一切の加減をしないことを決めてこの女性との距離を近づけると、剣を振るった。
「……速いね」
だが、その剣は避けられてしまう。
すると、妖艶な雰囲気の女性はその黒い羽を動かしながら言った。
「ねぇねぇ、人が話してる時に攻撃してくるってどうなの?」
「すみません、師匠から魔王軍の……特に女性とは話さない方がいいって、念を押されてるので」
俺はさらに剣による攻撃を続ける……この魔王軍の女性はそれを全て躱した────が、俺の狙いは剣を避けることで生じるこの一瞬の隙!
そこに雷魔法を放ち、ようやく一撃を喰らわせることができた。
「痛っ……本当に強いね」
その後も何度か攻防、主に俺が攻撃を続けていると、横から聞き馴染みのある声が聞こえてきた。
「え……アディンくん?……アディンくん!?え!?どうしてアディンくんがここに居るの!?」
「師匠!」
俺はほんの一瞬だけ、アリアさんの方に顔を逸らして、アリアさんが無事であることを確認した。
「良かった、無事だったんです────」
「アディンくん!ダメ────」
「戦ってる時に余所見しちゃうとこうなっちゃうから余所見はダメって、君が師匠って呼んだ、そこに居るアリア=フェルステに教わらなかったの〜?」
「え……?」
目を離したほんの一瞬で、いつの間にか魔王軍の女性は俺の後ろに立っていて、俺は魔法で生成された鎖のようなもので両手と両足を、それぞれ拘束されてしまった……最悪だ。
アリアさんの方を見てみると、アリアさんはとても暗い顔をしていた。
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