第17話 防具店で念願の防具を買おう!

 今日の俺は、少し気分が上がっていた。

 アリアさんが魔術大会で優勝して、俺も初めて実戦形式のもので勝利できたということで────


「アディンくん、お祝いにずっと欲しがってた防具買ってあげる!」


 とアリアさんの方から言ってもらうことができた。

 そう、今までは「防具買ってあげたら、アディンくんが一人で勝手にクエスト行っちゃうかもしれないからダメ」と言われて防具を買ってもらえていなかったのだ。

 まだクエストに行くことが許されるようになったわけじゃないけど、それでもアリアさんの方から防具を買ってあげると言われたというのはかなりの進歩だ……きっとクエストに行かせてもらえる日も遠くないだろう。

 今は早速その防具店にアリアさんと一緒に向かっていた……が、俺は楽しみすぎて一人だけ走って先に防具店に到着してしまった。


「お邪魔します!」


 そう元気に挨拶をしながら防具店に入ると、そこにはタオルを額に巻いた職人感の強い男の人が居た……おそらくこの店の店主さんだろう。

 木造でありながら石で作られた暖炉があったり、防具を作るための道具が店主さんの後ろにたくさん掛けられていたりと、防具店に来たことが見ているだけでもわかる光景に、俺としてはさらに気分が上がっていた。


「らっしゃい、気に入ったのがあったら買って行ってくれ」

「はい!」


 俺は早速防具を見────ようとした時、俺は、防具を見ているある女性の方に目が行った……長髪で水色髪の、女性。


「……あの、もしかしてシュテリドネさんですか?」

「……」


 ……あれ?

 話しかけたのに、聞こえてなかったのか?

 俺は、さっきよりもやや声を大きくして聞くことにした。


「あの……!もしかしてシュテリドネさんですか?」

「……」


 俺がそう聞くも、シュテリドネさんは少し険しい顔つきで防具を見ていた。

 ……俺はもはややけになって、かなりの大声で聞くことにした。


「あの!もしかして!シュテリドネさんですか!?」

「あぁ、そうだ……すまない、誰かが居る気配はしていて、誰かに話しかけられているような気もしていたんだが、敵意も感じなかったから防具に熱中させてもらっていた」


 そう言って、ようやくシュテリドネさんはこっちを向いてくれた……どうやら、防具に夢中になっていたようだ。

 ……遠目でも薄々思っていたが、近くで見るととても綺麗な顔立ちをした女性で、身長はミレーナさんより少し低いぐらいだが、それでもかなり高い。


「……ん?君は……もしかして、アディン=アルマークス君か」

「え?は、はい、そうですけど……どうして俺のことを?」


 俺がそう聞き返すと、シュテリドネさんは俺に視線を合わせるように中腰になって、俺の右手を両手で握りながら言った。


「アリア=フェルステに負けた時点で、私は魔術大会の場を去ろうと思っていたが、水の噂でアリア=フェルステの弟子もこの大会に参加すると聞いて、その試合だけは見ておくことにしたんだ……結論から言うと正解だった、あの華麗な避けかたに水魔法を使うまでの無駄のない魔力の流れ、君は間違いなく冒険者としての素養を持っている」

「え……!?その、あ、ありがとうございます」


 真面目そうな雰囲気からもっと怖い人かと思っていたが、意外とかなり褒めてくれる、優しい人みたいだ。


「私は今、君のことが強く気になっている、私は異国から来て、魔術大会が終わったらすぐに帰るつもりで居たが、それでもまだこの国に残っているのはアリア=フェルステに勝利するためと、君を────」


 シュテリドネさんが何かを言いかけた時、ドアの方から強力な風魔法が飛んできた……が、すぐにその風魔法と俺たちとの間に氷魔法が形成されて、その風魔法は不発に終わった。

 そのドアの方を見ると、そこにはアリアさんが立っていた。


「シュテリドネ……誰の許可で私のアディンくんに触ってるの?」

「君の弟子のアディン=アルマークス君だろう?誰が彼に触れようと自由────」


 アリアさんとシュテリドネさんは言い合いを始めてしまったが、第三者としてその状況を見ていた俺は、店主の人が怖い目つきで二人のことを睨んでいるのを見つけてしまっていたため「と、とりあえず外に出ましょう!」と言って、アリアさんとシュテリドネさんのことを武具店の外に連れ出した。

 二人はそれぞれ俺の右手と左手を握って睨み合っていた……俺はとりあえず、街に被害が出ないようになんとかこの二人に落ち着いてもらうことにした。

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